051.藤原実方朝臣 「かくとだに えやは伊吹の さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを」
はーい、じゃあ次は藤原実方朝臣くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
……って、また藤原かよ。ゲッ。
あ、ゴメンなさいね。
アタシったらゲップなんかして。
ここに来る前に炭酸飲料を飲んだせいかしらね。
ところで、キミのお父さんの名前は何ていうの?
え? 藤原定時っていうの?
何だか終業時間きっちりに速攻で帰宅するサラリーマンみたいな名前だわね。
定時が来たらすぐ帰る、みたいな。
いわゆる定時ダッシュってやつよ。
5時から男ってか。
なーんてこんなフレーズ、若い子は知らないわよね。
でもいいの。
アタシが書く文章って、いつもこんな感じだから。
分からないフレーズが出てきたら、その都度ググってちょうだいね。
まぁでも残念ながらキミのお父さんの名前は、アタシの記憶には引っかかってこないわね。
やっぱりいつの時代も、バリバリ残業するくらいじゃないと出世できないってことかしら。
まぁでも、出世することだけが人生じゃないからね。
家族のためと思ってバリバリ仕事を頑張ってるうちに、いつの間にか家族と過ごす時間が少なくなって、そのうちだんだん家にいないことが当たり前になっちゃって、『たまに家にいると煙たがられる哀れなお父さん』ってのもどうかと思うわよ。
仕事に追われて家庭崩壊したんじゃ、何のために働いてるんだか分からないものね。
ま、それぞれの家庭にはそれぞの事情ってものがあるでしょうから、アタシが余計な首を突っ込む話でも無いんだけどさ。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
かくとだに えやは伊吹の さしも草
さしも知らじな 燃ゆる思ひを
「かくとだ」ってなに?
角刈りの戸田くんのこと?
そう言えば角刈りって最近見ないわね。
アタシは角刈りなんてしたこと無いけど、小学生だった頃はスポーツ刈りをしていたわよ。
あ、これはリアルなアタシの話ね。
つか、フリーの家庭教師をしてる女っていう当初の設定が、もうアタシの頭の中からとっくに飛んじゃってるのよね。
もはやオカマがキモい文章を書いてるだけ、みたいになっちゃってるわ。
毎回断るのも面倒だから、書いてる内容から「あ、これはリアルな話だな」とか「あ、これは家庭教師をしてる女っていう設定上の話だな」って、読みながら判断してちょうだいね。
自分で「フリーの家庭教師をしてる女」って設定しておいて、最終的には読者に判断を丸投げしちゃうっていう、ね。
このいい加減な感じ。
まさにリアルなアタシだわ。
文章って性格をモロに反映しちゃうから怖いわよね。
で、何だっけ。
そうそう、「かくとだ」って何?って話よ。
え? 「かく」は「このように」で、「と」は引用を表すの?
で、「だに」は打消しの副助詞で「〜すら」とか「〜さえ」の意味なのね。
「えやは伊吹の」ってのは?
え? 「えやはいふ」で、「言うことができない」の意味なのね。
なるほど、「いふ」と伊吹の「いぶ」を掛けているのね。
じゃあこの「えやは伊吹のさしも草」っていうのは、「当たり前田のクラッカー」とか「恐れ入谷の鬼子母神」とか「その手は桑名の焼き蛤」なんかと同じ言い回しってことね。
要するに語呂合わせの遊びに近いんだわ、きっと。
で、「さしも草」はモグサのことなのね。
これも後にくる「さしも知らじな」の「さしも」に掛かってくるわけね。
なんだか、あちこちに言葉を掛けたがってて鼻につくわね。
技巧に走り過ぎなんじゃないの?
まるで詠んでるそばからキミのドヤ顔が目に浮かんでくるような歌だわ。
アタシは好きになれないわね、この歌。
ゲスい歌だわ。
こんな歌を紙に書いて持ってこられたら、それこそ速攻で燃やしたくなるわね。
ちなみに「さしも知らじな」ってどういう意味なの?
え?「そうとは知らないでしょうね」って意味なんだ。
「燃ゆる思ひを」はそのまま「燃える思いを」ってことね。
じゃあ、キミが言いたかったことは、
「言うことさえできない私の燃える思いを、あなたは知らないでしょうね」
ってことかしら。
平カクセーヌ兼盛くんとか、ただ見てるだけ壬生忠見くんなんかは、人を好きになると周りの人にすぐにそれがバレて困ってるのに、キミは上手に好きな気持ちを隠してるってことね。
人それぞれに個性があって面白いわ。
まぁでも所詮、モグサが燻っている程度で「燃える思い」なんて言われても、アタシ的にはピンと来ないわね。
しょーもない語呂合わせに酔ってるナルシストって感じだわ。
売れないラッパーとかって、だいたいこんな感じじゃないかしら。
つーかそもそも、ラップの良さ自体がアタシには分からないわね。
あんな、曲に合わせて念仏を唱えてる、みたいな歌のどこがいいのかしら?
ま、アタシが聴かなきゃいいだけの話なんだけど。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
かくとだに えやは伊吹の さしも草
さしも知らじな 燃ゆる思ひを
燃やしてスッキリ このゲスい歌




