049.大中臣能宣 「御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ 昼は消えつつ ものをこそ思へ」
はーい、じゃあ次は大中臣能宣くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
キミは「おおなかとみのよしのぶ」っていうのね。
アタシは「大中臣」なんて字を見ちゃうと、「大なのか中なのかどっちだよ」ってツッコミたくなるわね。
まぁ焼肉なんかじゃミディアムレアとかいう言い方もあるから、大と中の中間くらいをイメージしておけばいいってことかしらね。
ちなみに「大中臣」っていうのは苗字なの?
それとも大臣みたいに役職とか階級を表してるの?
へぇー、大中臣っていう苗字なのね。
じゃあキミの大中臣能宣っていうのは本名だったのね。
前に中納言朝忠くんとか権中納言敦忠くんとかもいたから、てっきりそのパターンで大中臣は役職とか階級みたいなものかと思っちゃったわ。
あれ? よく見たらキミも世を忍ぶ能宣じゃないの。
今のご時世、世を忍んでる場合じゃないわよ?
どんどん世に出ていかないとダメなんだから。
分かったら、さっさとキミも「大中臣よぉでる」に改名しなさいね。
これからはアタシ、「よしのぶ」って名前の子が居たら、もれなく「よぉでる」って改名するようにアドバイスしちゃおうかしら。
ちなみにキミのお父さんの名前はなんて言うの?
ふーん、「大中臣頼基」っていうのね。
まぁアタシが知ってる訳ないんだけどね。
お約束で一応聞いてみただけだわ。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ
昼は消えつつ ものをこそ思へ
あら、ながら系男子じゃないの。
何だか久しぶりな気がするわね。
アタシが憧れちゃうタイプだわ。
あ、アタシが憧れちゃう理由は、そのまんま山部赤人くんから聞いてちょうだいね。
あんな恥ずかしいこと、何度も言いたくないわよ。
ところで、「御垣守」ってのは何なの?
え? 宮中の警備をしている人のことなのね?
なるほどー、警備員ってことかー。
そういえばアタシにも、自宅警備員をしてた時期があったわ。
まぁ簡単に言えば、引きニートってやつね。
ある意味、今でも似たようなものだけど。
「衛士のたく火の」は「衛士が焚く火の」ってことよね。
てか、「衛士」って何?
衛生士のことじゃないわよね。
え? 「御垣守の兵士」ってことなの?
なるほど、つまり「御垣守の兵士が夜に焚くかがり火」の意味なのね。
ところで、「夜はもえ」って何?
まさか、夜は萌え、じゃないでしょうね。
昼は警備員で夜は萌えゲーマーとか、現実に居そうで怖いわ。
……っていうか、絶対いるでしょ。
アタシは萌えゲーなんてやらないけど、夜にゲームで遊ぶ事は多いわね。
比較的安い昔のゲームなんかをSteamで購入して遊んでることが多いわ。
ちなみに今アタシが遊んでるゲームは「banished」ね。
何年前のゲームだよって思われちゃうけど、アタシはブームが遅れてくる人なのよ。
前にも言ったと思うけど、これがアタシの一人時間差攻撃よ。
でも厳密に言うとね、アタシはただゲームで遊んでる訳じゃないのよ。
「いつも部屋にこもってゲームばっかりしてる」なんて言われたりもするんだけど、そんな事を言ってくる人は物事を表面的にしか見ていないのよ。
モノの見方が浅すぎて、話にならないわね。
そんな人とは話をする気にもならないわ。
じゃあアタシは何をしてるのかって?
それを一からきちんと説明するのは、ものすごく難しいわ。
それに、これはとっても深い話だから、たぶんアタシが説明したって誰も理解できないわね。
まぁでも、誰も理解できないことを知りつつ頑張って一言で説明するとね、アタシは江戸の敵を長崎で討ってるのよ。
ただゲームで遊んでるんじゃないわ。
アタシはかたき討ちをしているの!
誰が止めてもムダよ?
だってこれは、かたき討ちなんだから。
アタシは、忠臣蔵で言えば大石内蔵助なのよ。
え? ちょっと何言ってるか分からない?
ほらね、説明するだけムダなのよ。
モノの見方が浅い人には、何を話したって通じないわ。
……で、何の話をしてたんだっけ。
そうそう、「夜はもえ」って何なんだ、って話よ。
え? 「夜は燃えて」の意味なの?
そりゃ、そうよね。
知ってて言ってんのよ。
ふーん、「夜は燃えて」は、次の「昼は消えつつ」に繋がっていくのね。
かがり火って、夜は焚くけど昼は消すものね。
「ものをこそ思へ」の「こそ〜へ」は係り結びね。
意味的には「ものを思ふ」だわ。
なんか、さっきも「ものを思ふ」って出てきたわよ。
キミが来る直前に来た源重之くんが、「砕けてものを思ふころかな」って詠んでたわ。
「物事を思い悩んでいる」ってことね。
つまり警備員が、夜にかがり火を焚き、昼に消すっていう生活を続けながら思い悩んでいるのね。
これも、アタシには分かりみが深いわね。
「何でアタシはこんな仕事してるんだろう」とか「もっと他にいい仕事があるんじゃないか」とか「こんな仕事を続けてて、アタシ将来どうなっちゃうんだろう」とか、いろいろ考えたり悩んだりしちゃうのよ。
ちなみにアタシが小説を書いてみようと思ったきっかけは、夜勤ですることが無くて暇だったからよ。
することが無いくせに寝る訳にもいかなくて、退屈しのぎに書き始めたのが「武知高ミステリー俱楽部」っていう作品だったの。
あ、今はもう削除しちゃってるんだけど。
でも、後になってどんどん人が減らされちゃったもんだから、そのぶんアタシの作業も増えちゃって、結局は夜勤もあんまり暇じゃなくなっちゃったんだよね。
オマケに思いつきで書き始めたものだから、プロットも何も無くて、毎回どうやって話を繋げようか悩んじゃったりしてね。
で、気分転換に全然違うものを書こうと思って書き始めたのがこの作品だったんだけど、そのうちこっちの方が書くのが楽しくなってきちゃったわ。
本末転倒とはこのことね。
ま、せっかく書いたし、「武知高ミステリー俱楽部」もそのうちまた投稿できるといいんだけどね。
……って、何の話をしてたか忘れちゃったわよ。
そうそう、つまりキミの歌は「警備員が仕事に悩む歌」だったってことね。
え? 違うの?
「恋に悩む私の心も、夜は燃えて昼は消えてを繰り返し、思い悩んでいる」ってことなんだ。
つまり、かがり火を自分の中にある恋心に譬えてるってこと?
なぁに、それ。
だったらなんで恋心が昼に消えてんのよ。
恋をしたら、昼も夜もずっと恋心を燃やし続けるものだと思うけど。
つーか、キミらが思い悩むことって、いっつもそればっかね。
やっぱり精神年齢が中学2年生なのよ。
とにかくキミの恋心なんて、焚火よりしょぼいわよ。
せいぜい、ろうそく一本程度の炎でしかないわね。
そんなの思い悩んでるうちに入らないわよ。
思い上がるのもいい加減にしろよ、この中二大中臣が。
アタシなんて、昼に消えるどころかもう何十年も前に失恋したのに、未だに昼も夜も恋心が消えなくて困っちゃってるわよ。
キミがそういう事を言うのは、昼も夜もずっと恋心が消えないような熱烈な恋愛をしてからにしてちょうだい。
アタシに言わせれば、キミの恋愛感情なんてまだまだ軽微だわ。
警備員だけに。
なんてね。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
御垣守 衛士のたく火の 夜はもえ
昼は消えつつ ものをこそ思へ
夜は萌えゲーに 萌え萌えキューン!




