047.恵慶法師 「八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋はきにけり」
はーい、じゃあ次は恵慶法師くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
……って、何だか坊主も久々な気がするわね。
アタシ、坊主で「えけい」って言われたら「安国寺恵瓊」しか思い浮かばないわよ。
「信長の野望」のやり過ぎかしらね。
でもキミは戦国時代の人じゃないものね。
つまり、まったくの別人ってことね。
え? キミは「えけい」じゃなくて、「えぎょう」って読むの?
へー、そうなんだ。
出席簿のキミの名前のところに、何故かフリガナが無くて読めなかったわ。
え? なんで出席簿の僕の名前にフリガナが付いてないのかって?
そりゃあこっちの都合ってもんよ。
じゃなきゃ、安国寺恵瓊のネタが書けないじゃないの。
え? 何でもないわ、こっちの話よ。
ところで、キミの本名を聞いてもいい?
え? 分からないの?
ふーん、そうなのね。
まぁ、昔は捨て子同然で寺に拾われるなんてこともあったらしいからね。
本名が分からない坊主がいても別に不思議じゃないけどさ。
あ、アタシは別にキミが捨て子だったって言ってるわけじゃないのよ。
そういうこともあったらしい、っていうだけだわ。
じゃあキミのお父さんの名前も分からないわね。
ま、知ったところで「ふーん」の一言で片づけちゃうけどね。
……ていうかさー、こんだけキミ達の歌を見てきて、まだ47人目ってどういうこと?
まだあと53人も残ってんのかよー。
何の罰ゲームだ、これ。
最初のうちは平気だったけど、さすがにアタシもだんだん飽きてきちゃったわよ。
まぁ、せいぜい頑張るけどさ。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
八重むぐら しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋はきにけり
なるほどー。
ローキック系の歌ね。
キック系の歌だとローキック系が主流だから、ある意味、王道だわね。
ありがちな歌、とも言えるけど。
え? ローキック系って何ですかって?
もうそれ、何度も聞かれてるわー。
ロックバンドがテレビ出演したとき、毎回バンド名の由来を聞かれるくらい何度も聞かれてるわー。
また説明するのダルいわー。
壬生忠見くんにでも聞いてちょうだい。
「八重むぐら」って何?
八重桜なら聞いたことあるけど。
え? 「八重」は「何重にも」ってことなのね。
ところで、三重県って、なんで三重なのかしら。
二重じゃダメなんですかって、国会で蓮舫が質問したらしいわよ。
で? 「むぐら」は「ツルの生えた雑草」のことなのね。
雑草っていえば、たしか「浅茅生の をののしの原 しのぶれど」って参議等くんが詠んだ「浅茅」も雑草だったわね。
そのときちょっと聞いたんだけど、「浅茅」はイネ科なんだって。
同じ雑草でも「浅茅」はイネ科の雑草で、「むぐら」は蔓性の雑草ってことなのね、きっと。
「しげれる宿の さびしきに」は「茂った宿が寂しいので」って意味でいい?
え? 「に」は、場所を示す格助詞なの?
じゃあ「茂った宿の寂しい場所に」ってことね。
「人こそ見えね」の「こそ〜ね」は係り結びね。
ふーん、これで「訪れる人は見えないが」って意味になるんだー。
「秋はきにけり」は「秋が来たんだなぁ」ってことかしら。
じゃあ、キミが言いたかったことは、
「何重にも雑草が茂った宿の寂しい場所に、訪れる人は見えないけど、秋が来たんだなぁ」
ってことなのね?
「こんな誰も来ない宿にも秋が来たんだなぁ」って感じかしら。
そうね、秋が来てよかったわね。
待っていれば、そのうち冬も春も夏も、順番に来てくれるはずよ。
でも、訪れる人が見えないのは、ちゃんとした理由があると思うわ。
アタシが思うに、訪れる人が見えないのは、宿に雑草が茂ってるからじゃないかしら。
それじゃ、人なんて来る訳ないじゃないの。
雑草が茂ってるなら、刈り取るとか引っこ抜くとかして、取り除けばいいじゃないの!
自分が居る場所の雑草をキレイに取り除くことだって、坊主の修行の一環なんじゃないかしら?
何なら、取り除いた雑草を煮込んで食べちゃいなさいよ。
それだって立派な精進料理だと思うわ。
え? アタシ?
アタシはそんなもの、無料で出されたって食べないわよ。
雑草なんか食うぐらいなら、死んだ方がマシだわ。
まぁでも岡本信人なら、喜んで食べてくれるんじゃないかしら。
っていうか、きっと自分から進んで雑草を引き抜いてきてくれるわよ。
とにかく、キミは坊主なんだから、これからも頑張って修行に励んでちょうだいね。
そのうち上級エロ坊主…じゃなかった、僧正遍昭くんみたいに、僧正になれるかも知れないわ。
多分なれないけど。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
八重むぐら しげれる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋はきにけり
アタシもだんだん 飽きが来にけり




