046.曽禰好忠 「由良のとを わたる舟人 かぢをたえ 行く方も知らぬ 恋の道かな」
はーい、じゃあ次は曽禰好忠くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
やっぱりいいわねぇ、このヒラ社員的な感じ。
いままで太政大臣とか中納言とかさー、偉そうなヤツばっかりで、ちょっと食傷気味だったのよ。
そこへきて、「曽禰好忠」でしょー。
なんだか裸一貫、ふんどし一丁って感じで、よっぽど男らしいわよ。
やっぱ、男は肩書きじゃないのよ。
立派な肩書をぶら下げてふんぞり返ってるような男より、丸腰で権力相手に立ち向かっていく姿こそ男だわ。
なーんて、リアルじゃ底辺社員のアタシが言っても説得力が無いわね。
ふん、どうせ負け犬の遠吠えよ。
キミは「そねのよしただ」って言うのね。
アタシは世代で言うと、子供の頃に中曽根康弘が内閣総理大臣をやってたような世代だから、人の名前で「そね」って聞くと中曽根康弘を思い浮かべちゃうわね。
ちょうどラジオで三宅裕司がヤングパラダイス、通称ヤンパラで「中ちゃんの一日」なんてコーナーをやってた時代ね。
「ドカンクイズ」とか「これは知らね〜だろ」とか「恐怖のヤッちゃん」とか懐かしいわね。
どうせこれを読んでる人は誰も知らないでしょうけど。
でもま、いつも通りアタシは読者を置きざりにするタイプだから、別に気にしないわ。
ところで、キミのお父さんの名前は何ていうの?
え? よく分からない?
これよー、これこれ。
まさに裸一貫じゃないのー。
アタシは嫌いじゃないわよ、キミみたいなタイプ。
もうアタシ、「ふじわらの」とか聞いただけでゲップが出そうよ。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
由良のとを わたる舟人 かぢをたえ
行く方も知らぬ 恋の道かな
なぁに、これ。
また恋に迷った子羊ちゃんの歌かしら。
さっさと失恋して、アタシと同じ苦しみを味わうといいわ。
え? アタシは何も言ってないわよ。
「由良のとを わたる舟人」って何?
「由良のと」って「由良の戸」にしか聞こえないだけど。
え? 「由良の門」なの?
まぁ「わたる舟人」って言ってるくらいだから、水路のことね。
「かぢをたえ」は何?
「かぢ」は舵のことだろうけど、「たえ」って何?
え? 「かぢ」は舵じゃなくて櫂のこと?
なるほどねー、ボートで言えばオールってことね。
そう言えば前にネットで見たけど、オール阪神巨人って本当に仲が悪かったらしいわね。
品川庄司やTake2なんかも、そう言われてたわ。
え? 「たえ」は「絶え」で、「なくなって」って意味なんだ。
ふーん。
「行く方も知らぬ 恋の道かな」はまた詠嘆ね。
「かな」は詠嘆で「だなぁ」なのよ。
さすがにもう覚えちゃったわね。
だいたいさ、みんな「かな」「かな」って言い過ぎなのよ。
ヒグラシかっつーの。
つまりこれは、「行く方の分からない恋の道だなぁ」ってことね。
アタシなんて、恋の道どころか人生の行く方が分かんないわよ。
じゃあ、キミが言いたかったことは、
「由良の門を渡る舟人が櫂をなくしてこの先どこへ向かうのか分からないように、行く方の分からない恋の道だなぁ」
ってことなのね?
なぁに、これ。
行く方が分からないのは恋の道に限った話じゃないでしょ。
未来のことなんて、誰にも分からないわよ。
分からないっていうか、決まってないのよ。
どんな道でもそうだけど、行ってみなけりゃ分からないってことね。
かつてアントニオ猪木も引退式で言ってたわ。
「この道を行けば、どうなるものか。
危ぶむなかれ。危ぶめば道はなし。
踏み出せば、その一足が道となり
その一足が道となる」
……ってね。
こうやって、同じことを2回言うところが、何とも言えないわけよ。
このクラスにも、同じことを2回言ってる歌を詠んでる子がいたら嬉しいわね。
でも、そんな歌だったらきっと百人一首には選ばれてないわね。
アタシならその勇気と度胸を買って、選んじゃうけど。
まぁでも、恋の道が続いているだけ、まだマシってものよ。
アタシなんか、もうどっちを見たって恋の道なんて続いてないわ。
……って、このところ自虐ネタばっかりやってる気がするわね。
現実逃避がぜんぜん足りて無い証拠だわ。
新型コロナの発生以降、家に籠ってばかりいるせいかしら。
あ、でもアタシはいつも家に引きこもってるから、これはあんまり関係無いわね。
誰にも言われなくたって、年中ステイホームだわ。
たぶん最近、TOMOVSKYを聴いていないせいね。
アタシ、「我に返るスキマを埋めろ」「ひとりに戻るんだ」「SKIP」「うしろむきでOK!」なんかは何度聴いたか分からないわよ。
アタシの性格がヒネくれて……じゃなかった、サティリカルになったのは、間違いなくTOMOVSKYの影響だわ。
あとは岸田秀の本ばっかり読んでいたせいね。
「ものぐさ精神分析」はアタシの原点よ。
アタシの人格の骨組みは、この二人によって作られたと言っても過言じゃないわ。
……って、また余計な事を書いちゃったわね。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
由良のとを わたる舟人 かぢをたえ
行く方も知らぬ 恋の道かな
迷わず行けよ 行けば分かるさ




