004.山部赤人 「田子の浦に うち出でてみれば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ」
はーい、じゃあ次は山部赤人くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
キミの赤人って名前、何だか凄いわね。
レッドマンってことでしょ?
産まれてきた時、よっぽど体が赤かったのね。
え? 今も体が赤いの?
アトピーの人は大変ね。
それにしても赤人ってねぇ……。
何だか5人戦隊モノの真ん中で主役を張ってそうじゃない?
5人戦隊モノの主役は、真ん中で赤いコスチュームを着ているって相場が決まっているのよ。
え? 戦隊モノって何ですか?
そんな事も知らないの?
なんとかレンジャーとか、なんとかジャーってやつよ。
アバレンジャーとかゴーオンジャーとかさ。
まぁこのくらいなら分からなくもないけど、さすがにトッキュウジャーってのはどうかと思うわね。
ま、それはともかく、勉強ばっかりしてないで少しは息抜きにテレビでも見た方がいいわよ。
じゃあ一応、お父さんの名前を聞いておこうかしら。
え? 山部足島……かも知れない?
かも知れない、って、はっきりしないってこと?
ふーん、そうなのね。
でもあんまり気にしちゃダメよ。
のフェチの柿本人麿くんも、似たようなものだから。
え? キミも三十六歌仙の一人なの?
そう言えば、さっき来た柿本人麿くんもKSN36のメンバーだったわね。
え? KSN36って何ですかって?
三十六歌仙っていうグループ名だとダサいから、勝手にアタシがKSN36って呼んでるだけよ。
まぁKSN36ってのもダサいけど、文句があるなら、あきのもとの……じゃなくて、それっぽい名前の人に言ってちょうだいね。
アタシが考えたんじゃないわよ。
ちなみに、将棋のおじいちゃんで有名な『ひふみん』こと加藤一二三はKTU123だから。
そんなこと言ってるのはアタシだけだけど。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
田子の浦に うち出でてみれば 白妙の
富士の高嶺に 雪は降りつつ
出たー。
ながら系男子。
キミ、スマホいじりながらご飯食べるタイプでしょ。
え? スマホを知らないの?
マジかー。
昔の人がそのまま現代に来ちゃうパターンだわ、これ。
「ヒカルの碁」でいうところの、藤原佐為だわー。
……って、例に出してるアニメが古過ぎだわね。
アタシの年齢がバレちゃうわ。
あ、気にしないで。
こっちの話だから。
ながら系男子ってのはね、一つの事だけに集中するのが苦手で、同時にいろんな事をやろうとする男子を指すのよ。
お風呂に入りながら本を読むとか、テレビを見ながら勉強するタイプね。
とにかくマルチタスクで動いていないと気が済まないわけ。
分かる?
え? どうして僕が、ながら系男子なんですかって?
まぁそれはアタシが勝手にそう呼んでるだけなんだけどね。
ほら、歌の中に「つつ」って書いてるでしょ?
これがアタシには、風呂に入りつつ本を読む、とか、テレビを見つつ勉強する、みたいに「ながら」を表現する「つつ」に思えちゃうのよねー。
だから、ながら系。
大丈夫よ、心配しないで。
最初に来た天智天皇くんも、ながら系だから。
それ以外にも今後、何人も出てくると思うから安心してちょうだいね。
でも、ながら系男子って、なんだか憧れちゃうのよね、アタシ。
右手でおっぱいを触りながら左手でお尻を撫でてくれたりしそうじゃない?
あら、なに赤い顔してんのよ。
おマセさんね。
え? 元から赤い顔なの?
そういえばそうだったわね。
「田子の浦に」はそのまんまの意味よね。
でも「浦」って何?
浦島とか三浦半島とかって聞くけど、実は「浦」の意味を知らないのよね。
え? 海の入りこんだところなの?
じゃあ「浦」は「湾」のミニチュア版みたいな感じってことね。
「うち出でてみれば」は「出て見れば」ってことなの?
「うち」は動詞の前につく接頭語で、特に意味は無いのね。
「白妙の」は、白い炒飯じゃなくて、たしか「白い布」だったわね。
さっき持統天皇さんに教わったわ。
「富士の高嶺に」は「富士の高い峰に」ってことよね。
アタシ、なぜか「峰」っていう字を見ると過剰反応しちゃうのよね。
どうしてかしら。
「雪は降りつつ」は「雪が降り続いている」でいいかしら。
それにしても、キミの歌は分かり易くていいわね。
「田子の浦に出かけたら、白い布のような雪を被った富士山の高い嶺に、雪が降り続いている」
ってことでしょ?
でも何なの、これ。
見たまんまじゃないの。
ビートたけしが師匠なら、「見たまんま赤人」って芸名を付けられちゃうわよ?
単純なところは好感が持てるけど、もうちょっと工夫した方がいいわね。
え? キミと柿本人麿くんだけが「歌聖」って呼ばれてる?
だから、バカにするなって?
「歌聖」って何なの?
へー、「非常にすぐれた歌人」って意味なんだ。
じゃあ「歌姫」みたいなものかしら。
歌姫って言ったら、アタシは「昭和の歌姫」と呼ばれた、中森明菜を思い浮かべちゃうけどね。
美空ひばりも昭和の歌姫って呼ばれてたみたいだけど、さすがにアタシもそこまで歳は食ってないわ。
ま、今の若い人に中森明菜って言ってもピンと来ないと思うけど。
え? アタシは別にキミをバカになんてしてないわよ?
ただ「見たまんまを詠んでる」っていう感想を言っただけだわ。
キミが「歌聖」だってことを否定する気も無いわよ?
少なくとも、見たまんまを詠むことに非常にすぐれた歌人であることは確かね。
だからー、そんなに真っ赤な顔して怒らないでちょうだい。
……あ、ゴメンね。
そういえば、元から赤い顔だったわね。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
田子の浦に うち出でてみれば 白妙の
富士の高嶺に 雪は降りつつ
見たままの歌 詠んでてワロス