029.凡河内躬恒 「心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花」
はーい、じゃあ次は凡河内躬恒くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
……ってキミの名前、恐ろしく読みにくいわね。
初見殺しもいいとこじゃないの。
初見で読めた人って、この世にいったい何人いたのかしら。
こんなのノーヒントで読め、なんて言われたらイライラしちゃうわね。
キラキラネームじゃなくて、イライラネームだわ。
あら? 何だか急に寒くなってきたわね。あー寒い。
それにしたって「おおしこうちのみつね」って何なのよー。
みつねって何だよー。
読めねーよー。
いっそキツネとか、ケツネにしちまえよー。
「おおしこうち」ってのもおかしいだろー。
「大木凡人」の「凡」って書いて「おおし」なんて読めるかよー。
もうこれ、「おおきぼんどキツネ」でよくねー?
え? 大木凡人が誰だか分からない?
これだから最近の若い子とは話が合わないのよね。
ていうか、アタシは何歳なんだって話よね。
で、いつもならキミのお父さんの名前を聞くところなんだけど、「おおしこうち」なんて絶対知らねーわ。
……ってことで、サクサク進めちゃうわね。
だって、まだ29人目よ?
あと71人も控えてるのよ?
どうすんの、これ。
アタシもさすがにちょっと後悔してるわ。
こんなんで、100人目までたどり着けるのかしら。
見切り発車はいつものことだけど、もうちょっといろいろ考えてから書き始めなさいよって感じよね。
だって一人あたり千五百字としたって、十五万字なのよ?
十五万字って、150,000字よ?
何だか頭がクラクラして、眩暈がしてきたわ。
え? 目の焦点が合ってない?
アタシはもう大丈夫よ。
一瞬、気が遠くなっただけだわ。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
心あてに 折らばや折らむ 初霜の
おきまどはせる 白菊の花
なぁに、これ。
「心あてに」って何?
え? 「当てずっぽうに」ってことなの?
「折らばや折らむ」っていうのは?
「もし折るならば、折ってみようか」ってことなのね。
じゃあこの「折らばや」の「ば」は仮定の「ば」ってことかー。
「らむ」が推量なのはもう知ってるわ。
「人目よくらむ」「嵐といふらむ」「恋しかるらむ」……って、さんざん聞かされたわよ。
「初霜」はその年に初めて降りる霜のことよね。
「おきまどはせる」って何?
え? 「置いて惑わせる」ってことなのね。
じゃあ初霜を置くってことは、初霜が降るってことを擬人化した表現ね。
「白菊の花」はそのまんま、「白い菊の花」でいいわよね。
じゃあ、キミが言いたかったことは、
「もし折るならば当てずっぽうに折ろうか。初霜が降って区別できなくなっている白菊の花を」
ってことね。
状況としては、「白菊の花を折って取ろうにも、一面に霜が降りていてどの花が白菊の花か区別がつかないから、当てずっぽうに折るしかねーな」ってところね。
例えばテストが選択式のマークシートで、どれが正解か分からないから、あてずっぽうにマークするしかねーなっていう状況ね。
アタシも学生のとき、よくそういう状況になったわ。
人生って、重要な場面に限って、意外と運任せなところがあるのよね。
考えてみれば不思議よね。
だからキミも、努力だけじゃどうにもならない事があるっていうのは、覚えておくといいわ。
いくら自分の人生だって言っても、何もかもすべての責任を自分が負う必要は無いのよ。
自分ではそんなつもりは無くても、結局みんなサイコロを振りながら生きてるようなものなんだから。
……って、あらヤダ、こんなところで人生語っても誰も喜ばないわよね。
え? 何でも無いわ。
こっちの話よ。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
心あてに 折らばや折らむ 初霜の
おきまどはせる 白菊の花
マドモアゼルは 未婚の女




