027.中納言兼輔 「みかの原 わきて流るる 泉川 いつ見きとてか 恋しかるらむ」
はーい、じゃあ次は中納言兼輔くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
……って、キミも中納言なんだね。
これまでにも何人か、中納言の子と話したわ。
そうそう、大伴家持くんと在原行平くんだったわね。
さっそくだけど、キミの本名って何なの?
え? 藤原兼輔っていうのね。
じゃあキミのお父さんの名前は何ていうの?
へー、藤原利基なのね。
……って、ゴメン。
アタシ聞いたこと無いわ。
まぁ、アタシが知ってる名前なんて一部の限られた人物だけだから、知らないケースの方が多いんだけどね。
でもほら、アタシって競馬もやるからさ、血統って気になっちゃうわけよ。
昔はよくダビスタで遊んでたものよ。
なーんて、昔話をしてる場合じゃないわね。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
みかの原 わきて流るる 泉川
いつ見きとてか 恋しかるらむ
なぁに、これ。
「みか」と「みき」で何かと掛けてたりするの?
キミ、音感を大事にするタイプ?
え? そうでもないの?
でも、やっぱりこれも恋の歌なのね。
……ったく、どいつもこいつも色気づきやがって。
兼輔のスケは、スケベのスケかよ。
え? アタシは何も言ってないわよ。
「みかの原」はみかん畑じゃないわよね?
うんうん、そういう地名があるわけね。
「わきて流るる 泉川」もそのままよね。
湧き水が泉川を流れてるってことね。
「いつ見きとてか」が分からないわね。
どういう意味なの?
え? 「いつ逢ったというのか」って意味なの?
そこが分からないのよね、アタシ。
「見」は「逢う」の意味とか言われてもさー、逢うって意味なら「逢ふ」っていうそのまんまの言葉があるじゃねーかって思っちゃうのよ。
「うち出でてみれば」は「出て見れば」で「出て逢えば」じゃないし、「ふりさけ見れば」は「ふりさけ逢えば」じゃないでしょ。
「見」が「逢う」って意味なら、本当に「見る」って言いたいときは、何て言うんだって話よ。
キミに文句を言っても仕方ないけどさ。
まぁ、じゃあきっと「いつ逢ったんだろう。覚えてねーけど」って感じね。
「恋しかるらむ」の「恋しかる」って何?
あー、「恋しい」ってことでいいのね。
「らむ」が推量なのは、もう覚えちゃったわ。
藤原敏行朝臣くんのモロヘイヤの歌にも「人目よくらむ」って出てきたし、文屋康秀くんの嵐の歌にも「嵐といふらむ」ってのがあったわね。
つまり、「恋しいのだろう」ってことよね。
でも「いつ逢ったというのか 恋しいのだろう」じゃ、文にならないわね。
じゃあ無理矢理まとめると、キミが言いたかったことは
「みかの原に湧き出て流れる泉川 いつだったか覚えてないけどキミに逢っているから恋しいのだろう」
って感じ?
やっぱり分からないわ。
初対面の女の子に向かって「君とは遠い昔に出会っていたんだと思う。だからこんなにも恋しいんだ」とか言っちゃう感じなわけ?
無いわー。
引くわー。
一万年と二千年前から愛してるってか?
八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった、とか言い出しそうじゃないの。
なにそれ、きもーい。
兼輔きもーい。
それを言うなら、この歌を知ったその日からアタシの地獄に音楽は絶えないわ。
え? 何でも無いわよ。
こっちの話だから。
あと、ネタが古すぎるとか言わないでちょーだい。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
みかの原 わきて流るる 泉川
いつ見きとてか 恋しかるらむ
みかみきときたら 次はミクかな




