022.文屋康秀 「吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ」
はーい、じゃあ次は文屋康秀くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
キミ、文屋って書いて「ふんやの」って読むのね。
新聞屋のことをブンヤって言うから、てっきりキミも「ぶんや」って読むのかと思っちゃったわ。
もう「ふんやの」っていう苗字を聞いただけで、わずかな希望すら無いんだけど、一応、お父さんの名前を聞いていいかしら?
え? よく分からない?
まぁ、多分そんなことだろうと思ったわ。
ところで、キミが三河の国司の役人になったときに「三河まで一緒に行きませんか」って小野小町さんをデートに誘った話って本当なの?
あっさりと軽くあしらわれたらしい、っていう噂が学校中の評判になってるらしいわよ?
まぁ、どこの馬の骨かも分からないキミがいくら頑張っても、あのいやらしい雌ガキ、じゃなかった、小野小町さんが相手にするわけないんだけどね。
で、そのときキミを軽くあしらった歌が、いま学校中で回覧されてるみたい。
彼女って、顔は可愛いけど性格は最悪だから、そういうことを平気で言いふらしちゃうのよねー。
何だかキミが可哀そうに思えてきちゃうわね。
アタシのところにも、その歌が回ってきているわよ?
ほら、これがその歌でしょ?
ここに書いてあるわ。
わびぬれば 身を浮き草の 根をたえて
誘ふ水あらば いなむとぞ思ふ
この歌の意味を校長先生に聞いたら、「寂しい思いをしているので、この身は浮草のように根無しですから、誘う水があれば行こうと思います」という歌のように見せかけておいて、実は「いなむ」は「否む」に掛かっていて、「なーんてね、お断りよ」っていう、笑えない冗談で軽くあしらっている歌なんだ、って説明してくれたわ。
残念だったわね。
でもあの娘はいろいろと問題がありそうだから、かえってその方がキミのためだったんじゃないかと思うわ。
これにメゲずに頑張ってちょうだいね。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を 嵐といふらむ
なぁに、これ。
もしかして、「山」の下に「風」って書いて「嵐」だ、って言いたいだけなの?
ダサいわー。
漢字を覚えたてのガキんちょかよー。
こんな歌を見せられたら、馬の下に鹿って書いて、バカって言いたくなっちゃうわね。
だいたい、こんなんでいいなら「むべ山石を 岩といふらむ」でもいいじゃない。
こんなのアタシにだって作れちゃうわよ。
何だかなー。
「吹くからに」って何?
え? 「吹くとすぐに」って意味なの?
「〜からに」は、「〜とすぐに」ってことなのね。
たしかに「見るからにバカ」だったら、「見るとすぐに」バカって分かるもんね。
「秋の草木の」はそのままね。
「しをるれば」は、「しおれるので」って意味だわね。
さっき出てきた「わびぬれば」が「寂しい思いをしているので」っていう理由を表すのと同じ言い回しね。
「むべ山風を」の「むべ」って何?
ベムなら妖怪人間って分かるんだけど。
え? 「なるほど」ってことなんだ。
ふーん、むべ、むべ。
なんてね。
「嵐といふらむ」の「らむ」は前にも同じ形を見たことあるわ。
たしか、藤原敏行朝臣くんのモロヘイヤの歌に出てきた「夢の通ひ路 人目よくらむ」の形よね。
「らむ」は推量で、推量は推し量るってことだったから、「嵐と言うのだろう」ってことだわ。
つまりキミが言いたかったことは、
「吹くとすぐに秋の草木がしおれるので なるほど山風を嵐と言うのだろう」
ってことね。
だーかーらーっ!
漢字を覚えたての小学生かっつーの。
アタシから見たら、「むべ康秀をバカといふらむ」だわー。
ブンヤなら素直に新聞屋でもやってろよー。
小野小町さんが、軽くあしらう訳だわー。
え? 何? こっちの話よ。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を 嵐といふらむ
嵐の次は SnowManかな




