018.藤原敏行朝臣 「住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ」
はーい、じゃあ次は藤原敏行朝臣くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
……って、キミも朝臣なのね。
さっき来た在原業平くんも朝臣だったわ。
ふーん、キミの名前は敏行っていうのね。
アタシ、敏行っていうと西田敏行を思い浮かべちゃうのよね。
ま、そんなことはどうでもいいわね。
一応、キミのお父さんの名前を聞いていいかしら?
え? 藤原富士麻呂?
あー聞いたことないわー。
ゴメンねー。
さっきからこのパターンもちょこちょこ出てくるわよねー。
こうなっちゃうと話の糸口が見つからなくなっちゃうのよ。
アタシ、もともと日本史なんてほとんど勉強してないから、何にも話すことが無くなっちゃうのよね。
困ったもんだわ。
どーしようかしらねー。
まぁでも、つまんない話をしても、するだけ時間のムダだわね。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
住の江の 岸による波 よるさへや
夢の通ひ路 人目よくらむ
なぁに、これ。
まったく内容が頭に入ってこないわ。
「住の江」って何?
え? 津摂国の住吉の海岸のことなのね?
摂津国って現在の大阪よね。
大阪に住吉大社ってあるけど、住吉って、もしかしてその住吉?
へぇー、そうなんだ。
じゃあ、あの辺の海岸ってことね。
「岸による波」は「岸に寄せる波」でいいわよね。
「夜さへや」って何?
何だかそれに似た言葉の野菜があった気がするけど。
え?
「さへ」は「でさえ」とか「までも」って意味なの?
じゃあ「夜でさえも」って感じなのね。
「夢の通ひ路」は、似たような形の歌があったわ。
そうそう、あの上級エロ坊主、じゃなかった、僧正遍昭くんの天津丼の歌で「雲の通ひ路」ってのが出てきてたわ。
たしか「雲の中にある通路」の意味だって、教えてもらったわね。
じゃあ「夢の通ひ路」は「夢の中にある通路」ってことでいいのかしらね。
意味としては、「夢に出てくる通路」っていうことになるのかな。
「人目よくらむ」って何?
「金に目がくらむ」ってのは聞いたことあるけど。
え? 人目は他人の目ってことなのね。
これは今でも「人目を気にする」とか言うから、同じ意味よね。
「よくらむ」って何?
え? 「よく」は「避ける」ってことなのね。
じゃあ「らむ」は?
なーに? 「推量の助動詞の連体形」なの?
「推量」は「推し量る」ってことだから、「だろう」ってことか。
ふーん。きっと「人目を避けるだろう」っていう意味なのね。
助動詞の連体形とか言われても、アタシにはよく分からないわね。
とりあえずニュアンスだけでも押さえておけばいいかしらね。
単純に繋げると、
「住吉の海岸に寄せる波 夜でさえも夢に出てくる通路 人目を避けるだろう」
ってことになるわね。
でもこれじゃ、相変わらず意味不明よね。
これ、結局どういう意味なの?
え?
「住之江の岸に寄せる波の『寄る』という言葉ではないけれど、夜でさえ、夢の中で私のもとへ通う道でさえ、どうしてあなたはこんなに人目を避けて出てきてくれないのでしょうか」
ってことなの?
何だか、どこかのウェブサイトに書いてある解説文をそのまま読みました、みたいな説明だわね。
キミの言い方も、まるで教科書を棒読みしているかのような口調に聞こえたわ。
自分で作った歌じゃないんじゃないの? これ。
もしかして、誰かが書いた歌を丸パクリしたんじゃないでしょうね?
ちなみに光孝天皇くんは、庶民派アピール天智天皇くんと見たまんま山部赤人くんの歌をパクってたっぽいわよ?
キミもそのクチなんじゃない?
だってこれ、どう見たって女性が作ったような歌でしょ。
これを男のキミが作ったとは思えないわね。
持統天皇さんや小野小町さんにお願いして、歌を作ってもらった
んじゃないの?
宿題は自分でやらないと意味が無いのよ?
つか、だいたい何で男のキミが、わざわざ女性の歌を詠んだりしてるのよ。
キミ、もしかしてホモなの?
お尻から血が出てるタイプ?
ほら、黙ってないで白状しちゃいなさいよ。
何ならカツ丼を出前で取って、別室でじっくり話を聞いてあげるわよ?
さっさとゲロって楽になっちまえよ。
え? ん? こっちの話よ。
何でもないわ。
じゃあキミの歌は、
「なんであなたは、夜中や夢の中でさえも、私に会いに来ないのだろうか」
って事を言ってるのね?
そんなの、相手に嫌われてるか、セフレ程度にしか思われてないからに決まってるじゃない。
クリスマスとか彼の誕生日とか、イベント日には絶対会ってもらえないタイプよね。
それなのに、何を期待しちゃってるのかしら?
そんな事にも気付けないなんて、アタシから見たらバカとしか思えないわ。
朝臣だからって、遊んでばかりいるからこういうことになるのよ。
もっとしっかり勉強してちょうだいね。
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
住の江の 岸による波 よるさへや
夢の通ひ路 人目よくらむ
よるさへやって モロヘイヤみたい




