001.天智天皇 「秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」
はーい、じゃあまずトップバッターの天智天皇くーん。
こっちに来て作った歌を見せてくださーい。
お、来た来た。
うわー、いきなり天皇が来ちゃったかぁ。
最初は肩慣らしに坊主とかでよかったのにー。
え? 何でもないわ。
キミが天皇ってことは父親も天皇ってことよね?
え? キミのお父さんは舒明天皇なのね。
……って、自分から聞いといてアレだけど、ごめん、知らないわー。
でもキミって有名人なんでしょ?
校長先生からそんなウワサを聞いたわ。
えー!? そうなのー?
キミがあの「なかのおおえのおうじ」なんだー。
たしか、漢字で書くと、「中大兄皇子」って書くのよね。
何だか字面だけ見ると、中央大学に通うお兄ちゃんがいる皇子って感じよねー。
で、キミが中臣鎌足と一緒にクーデターを起こして蘇我入鹿を殺害したんだよね。
「大化の改新 645年」って、今でも覚えてるわよー。
で、その「中大兄皇子」のキミが、後に天智天皇になったってわけね。
まぁ皇子なんだから、そのうち天皇になるのは当たり前なんだけど。
そっかぁー。
キミのことだったんだー……。
……って、感心してる場合じゃないわね。
じゃ、さっそく作った歌を見せてちょうだい。
秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ
わが衣手は 露にぬれつつ
出たー。ながら系男子。
え? ながら系男子って何ですかって?
まぁ気にしないで。
こっちの話よ。
それにしてもキミ、苫なんて難しい漢字をよく知ってるわね。
いったいどこで習ったの?
え? 小さい頃から専属の家庭教師が居たの?
さすがは天皇だわね。
「秋の田の」は簡単ね。
でも「仮庵の庵の」が分かんないわ。
「庵」って何?
え? 農作業のための粗末な小屋のことなのね。
でも「仮庵の庵の」って庵を2回書く必要なくない?
「仮面の面の」って言ってるようなものでしょ。
しつこい男は嫌われるから、気を付けた方がいいわよ。
じゃあ「仮庵の庵の」は「仮小屋の小屋の」って意味なのね。
やっぱりしつこいわね。
「苫をあらみ」が分からないんだけど。
「苫」って何?
え? 菅や茅で編んだ筵のことなのね。
筵ってゴザみたいなものよね?
針の筵、とか言うもんね。
菅とか茅は聞いたことあるわよ。
菅の傘とか、茅葺屋根とかに出てくる菅と茅のことでしょ?
ま、なんとなく植物の茎の部分って感じよね。
じゃあ「あらみ」って何?
え? 「あらみ」は粗さを表してるの?
なるほどねー。
「ヤバみ」がヤバさを表してるのと同じね。
え? うん、うん。
へー、「苫をあらみ」で「苫が粗いので」って意味になるんだー。
「○○を〜み」で、「○○が〜なので」って意味になるのね?
じゃあ「モザイクをあらみ」って言ったら、「モザイクが粗いので」ってことになるわね。
昔の大人向けのビデオは、だいたいモザイクをあらみで、見たい部分が見れなかったわ。
え? 何でもないわ、こっちの話よ。
「わが衣手は 露にぬれつつ」は簡単だわ。
「私の袖が露に濡れていく」って意味よね。
じゃあキミが言いたかったことは、
「秋の田の仮小屋の茅葺屋根が粗いので 私の袖が露に濡れていく」
って感じになるかしら?
なんなの、これ。
何だかすごく嫌味っぽいわー。
庶民のアタシから見ると、特に。
天皇なんだから、わざわざ秋の田の仮小屋になんか入らなくてもいいじゃないの。
だいいち、そんなところに入るのは米を作ってる農民くらいなもんでしょ。
天皇のキミが農民の小屋に入るなんておかしくない?
農民になりたいわけ?
そうじゃないなら、ただの嫌味でしかないわよ。
さっさとそんな趣味は止めた方がいいわね。
分かった? 約束よ?
じゃあ最後にアタシの感想を付け加えておくわね。
秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ
わが衣手は 露にぬれつつ
庶民派アピール 必死でワロス