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25.邪なる者たち

「――アイリス様!」


 アイリスの後を追って飛び込もうとしたエリーゼの前にキャリーが立ち塞がる。


「どいてください!」

「大人しくしなさい」


 構わず駆け抜けようとしたエリーゼに、キャリーは足元から闇魔法シャドーロープを伸ばし、足元から拘束すると引き倒して踏みつけにする。


 同時に忽然と姿を現した何者かが彼女に声を掛けた。


「よくやったな、キャリー」


 彼は、中身が黒い水晶玉のようなものを窪みに投げ入れ、下からアイリスたちの悲鳴が届く。


 エリーゼはその男に見覚えがあった。別荘を始めに訪れた時に挨拶したキャリーの父……ジョール・ブラントス魔法省長官だ。


「い、一体どういうつもりなのです! 何が狙いでこんなことを……ジョールさん!」


 黒髪黒目の壮年の男性ジョールは蓄えた太い髭をしごくと、くぐもった笑みを漏らす。


「我が野望のためだよ。大いなる力を手にし、この国を足掛かりに、果ては世界を手にするというな……。そのためにやアイリス・トゥールの体に眠る魔力が不可欠なのだ」

「何を……言うんですか。彼女の魔力は彼女自身のものです! それを他の誰かが利用することなど、できはしません!」


 エリーゼの糾弾には、口元を歪めたキャリーが応じる。


「ふふふ、それは違うわ。今まで誰も成し遂げることができなかっただけ。父は、長い間の研究によってその方法を編み出したのよ。禁忌と呼ばれる悪魔召喚の秘術まで駆使してね」

「悪魔召喚……まさか」


 それを聞いたエリーゼの頭に、リックスから聞いていた話が思い出される。


「レヴィン会長がおかしくさせたあの悪魔は……あなたたちが!?」

「そう。彼の身体を代償として結んだ契約を実行しようとしたけど、失敗し、不完全な結果に終わってしまったわね。でもいい実験台にはなってくれた」

「儂はアイリス・トゥールを代償に大悪魔を降臨させ、契約してその力の半分を頂くのだ! そして今の王家を滅ぼし、我らが新たな支配者として、君臨する!」

「第二王子リックスだけは生かしておいてあげるわ、私の婚約者としてね。その方が世代交代もスムーズにいくでしょうし」

「馬鹿げたことを……」


 エリーゼは愕然としながらも、本当に彼らの言う通りであれば、もしかしたらそれが可能になってしまうかも知れないとも思った。アイリスの魔力の半分でも彼らが手に入れれば、少なくともこの国に彼らに太刀打ちできるものはいない。


 リックスは確実に拒否するだろう。だがそんなもの、悪魔とやらに彼を操らせ、外面だけ取り繕わせれば済むことだ。そうなってしまえば、王位を受け継ぐことも容易い。


 レイメール王国存亡の瀬戸際だと、エリーゼは判断した。


(誰か、気付いて……!)


 彼女は全ての魔力を振り絞り、自身を対象として火魔法メテオストライクを発動する。


 ――ゴゴゴゴゴゴ……!


 エリーゼの体から赤い光が立ち昇り、数秒後轟音と共に遺跡の天井が崩落。赤熱した隕石が姿を見せる。


「チィ、余計なことを」


 だがジョールは舌打ちすると、闇魔法の雷でそれを粉々に破壊し、キャリーに指示を下した。


「娘よ、誰か来るかもしれん。入り口で足止めしておけ」

「わかりましたわ、お父様」


 ジョールの命に従い意識を失くしたエリーゼを放置すると、キャリーは静かにその場から歩き出し、来た道を戻っていった。

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