97.謝るべきは
「謝るのは……私の方です」
「ルルメア、しかしだな……」
「どんな理由があろうとも、私が全てを投げ出したのは事実です……本当に、申し訳ありませんでした」
二人の謝罪を受けて、私はゆっくりと頭を下げた。
私は今まで、自らの行いから逃げ続けてきた。だが、そろそろそれに向き合う時なのだろう。
そう思ったため、私は頭を下げるべきだと思ったのだ。それが、けじめなのである。
「こんなことを言える立場ではないのはわかっています。ですが、お二人に頼みたいのです。どうか、私に協力してください」
「協力? それは……」
「私は今、かつての因縁と戦っています。その者達と戦うためには、二人の協力が必要なのです」
私は、二人に対してそう語りかけた。
私一人の力でルミーネやグーゼス様に対抗するのには無理がある。以前の戦いで、私はそう思うようになっていた。
だから、二人に協力してもらいたい。旧ズウェール王国において、私に次ぐ優れた魔術師である二人の力を借りたいのだ。
「……ルルメア、頭を上げてくれ」
「ええ、あなたがそんな風にする必要はないわ」
「俺達の力が必要であるというのなら、喜んで手を貸そう」
「私達は、いつでもあなたの味方よ」
「……二人とも、ありがとうございます」
私の頼みを二人は快く受け入れてくれた。
レイオスさんとエルーシャさんも、いい人である。私は、改めてそれを実感していた。
「……さて、お話はまとまったようですね」
「あっ……」
そこで、ケルディス様のそんな声が聞こえてきた。
そういえば、彼の存在をすっかりと忘れていた。私達は、アルヴェルド王国の第三王子を放って、話をしていたのである。よく考えてみれば、それはとても失礼なことだ。
「も、申し訳ありません、ケルディス様。私達、勝手に話をして……」
「いえ、気にしないでください。必要な話だったようですし、僕は何も気にしていませんよ」
「そ、そうですか?」
「ええ」
私の謝罪に対して、ケルディス様は笑みを浮かべていた。それは、どこか嬉しそうな笑みだ。
その笑みを見ていればわかる。彼は、本当に気にしていないのだと。前々からわかっていたが、彼は寛大な王子であるようだ。
そのことに、私と二人は顔を見合わせる。正反対の王子のことを思い出したからだ。
「同じ第三王子でも、ここまで違うものなのね……」
「エルーシャ、そういうことを言うものではない」
「わかっているわ。でも、どうしても思い出してしまって……」
「気持ちはわかります」
ケルディス様と比べて、グーゼス様は本当にどうしようもない人だった。
だが、そんな彼であっても、これ以上弄ばれていいはずはない。二人と話しながら、私はひそかにそんなことを思うのだった。