85.落ち着かない日々
私は、与えられた別荘で過ごしていた。
ここに来てから、一晩が明けたが、特に何も起こっていない。どうやら、ルミーネも動いておらず、グーゼス様も自由になっていないようだ。
という訳で、私は静かな日常を送っている。部屋で、本を読んでいるのだ。
「快適な生活ではあるけど……」
この屋敷には、なんでもあるといっても差し支えない。今読んでいる本のように暇つぶしの道具もあるし、食事なども出してくれる。何不自由なく、生活することができるのだ。
それは、贅沢な生活である。ただ、いつグーゼス様が攻めてくるかがわからないあというこの状況は、どうも落ち着かない。
「はあ……少し外の空気でも吸った方がいいかも」
私は、本を閉じて立ち上がる。
こういう時には、外の空気でも吸うべきだ。閉じこもってばかりでは、嫌な考えばかりが浮かんでくる。爽やかな風でも浴びて、そういう考えを吹き飛ばすべきだ。
「さてと……」
「ああ、ルルメアさん、どうかしましたか?」
「マルギアスさん、すみません。少し外の空気を吸いたいんですけど……」
「わかりました。それでは、私が同行しましょう」
「ええ、よろしくお願いします」
部屋の外に出るとマルギアスさんがいた。いつグーゼス様が来てもいいように、待機していたようだ。
私が外に出る時には、護衛の誰かを連れて行くことになっている。グーゼス様がいつ来るかわからない以上、そうするしかないのだ。
という訳で、私はマルギアスさんとともに外に向かった。今日は、晴れており、絶好の散歩日和だといえる。
穏やかな陽気は、私の心を癒してくれそうだ。そう思いながら、私は庭に出て行く。
「……それにしても、マルギアスさんもすごいですね。色々とあったのに、ずっと私の護衛を続けて……」
「そうですか?」
「はい、あれだけの戦いがあったのに、丈夫なんですね?」
「まあ、外傷などはありませんからね。というか、あなたの護衛は私の義務です。この体が満足に動く限りは、外れることはありませんよ」
庭を歩きながら、私達はそんな会話を交わしていた。
グーゼス様達の戦いで、私もマルギアスさんもかなり疲弊していた。体力も魔力も消費して、へとへとだったはずだ。
それなのに、彼は特に辛い顔もせず、私の護衛をずっと続けている。それは、非常に大変なことだろう。
やはり、騎士というものは鍛え上げられているため、普通の人とは違うのだろうか。彼の様子に、私はそんなことを思うのだった。