83.彼女の目的
私は、ケルディス様とともに客室に来ていた。
そこで私は、今までの経緯を改めて説明した。もちろん、彼も騎士団から報告はされているはずだが、それでも私から話すことに意味があると思ったのだ。
「なるほど、話には聞いていましたが、やはり事態はかなり深刻なようですね……」
「ええ、そうなんです」
私の話を聞いて、ケルディス様はその表情を歪めていた。
その表情は、悲しそうだ。王族として、この国で起こっている問題に心を痛めているのだろう。
その後に、彼は考えるような表情をする。これからのことを考えているのだろう。
「そもそもの話なのですが……」
「はい、なんですか?」
「彼女の目的は、一体なんなのでしょうか?」
「それは……」
ケルディス様に質問されて、私は言葉に詰まってしまった。
ルミーネの目的、それは私にもまったくわからないことだからだ。
本当に、彼女は何を考えているのだろう。それは、私もとても気になっていることである。
「あなたを狙っているという訳でもありませんよね? それは、ズウェール王国の第三王子のグーゼスの本能というべきものなのでしょう?」
「ええ、多分そうだと思います。私に思う所はあるようですが、彼女の目的が私かといわれると微妙な所だと思います」
ルミーネの狙いが私であるというのは、考えにくい。もしそうだったとしたら、今回見逃す理由もなかったと思うので、それは違うはずだ。
彼女は恐らく、グーゼス様を自由にさせた結果、私の前に現れているのだろう。私が今回の件に関わっているのは、グーゼス様のせいだといえるはずだ。
「……彼女は、グーゼス様のことを実験だと言っていました。その実験が目的ということなのかもしれませんが……」
「人体実験を行っている……といった所でしょうか?」
「そうですね……でも、それが何のためかは、結局わかりません。そもそも、今のグーゼス様が何者なのかもわかっていませんし……」
「わからないことだらけという訳ですか……」
ルミーナの目的に、グーゼス様のことが関係していることは確かだろう。あの実験と称した行動には、何かしらの意味があると考えるべきだ。
ただ、それを考えるには情報が足りていない。今のグーゼス様がどういう状態なのかもわかっていないので、それを考えるのは難しいのだ。
「彼女は、確かあなたの部下だったのですよね? その時はどんな人物だったのですか?」
「特に変わった所はなかったと思うのですが……」
ケルディス様の言葉に、私は考える。私が聖女だった時、彼女がどのような人物だったのかということを。