79.悔しい安心
「はあ、まあ、今回はここで終わりにしておきます。この屑どもには、まだ使い道がありますから、全部使いたくはありません。一体残っていれば、増やせますからねぇ」
ルミーネは、笑みを浮かべながら、そんなことを言ってきた。
どうやら、彼女は引くつもりのようだ。そのことに、私は少し安心する。流石に、これ以上グーゼス様を捌くのは無理があったからだ。
私は元聖女である。だが、それでも限界はあるのだ。後数体残っているグーゼス様、さらにはルミーネまで倒すことは不可能に近いだろう。
「くっ……せめて、騎士団の増援が来ていれば」
マルギアスさんは、悔しそうにそう呟いていた。
その呟きに、私は気付く。そういえば、騎士団の増援はまだ来ないのだろうかと。
「……まさか」
「あら? どうかしましたか?」
「あなた……騎士団の増援に何かしたの?」
「さて、どうでしょうか?」
私の質問に、ルミーネは邪悪な笑みを浮かべていた。
それによって、私は彼女が何をしたかを理解する。恐らく、彼女は騎士団の増援、または増援を呼びに行った騎士にグーゼス様を仕掛けたのだ。
あれだけグーゼス様がいるのだから、何体かをそちらに送り込んでいてもおかしくはない。むしろ、そうしない理由がないくらいである。
「あはは、いい顔をしていますね。ルルメア様、そういう顔が、私は大好きですよ?」
「……あなたは、一体何を考えているの?」
「それは秘密です。教えるなんて、つまらないではありませんか」
ルミーネは、楽しそうに笑っている。本当に、彼女は一体何を考えているのだろうか。その意図がまったくわからない。
確か、彼女は実験と言っていた。その実験とは、一体何の実験なのだろうか。
それが、私はとても気になっていた。彼女が何を考えているのか。それを知らなければ、最早どうしようもないと思うのだ。
「まあ、このグーゼス様は本能であなたを狙っているようですから、また会うこともあるでしょう。それでは、さようなら」
「あっ……」
「くっ……」
それだけ言って、ルミーネとグーゼス様達はその姿を消してしまった。
私は、ゆっくりとその場に膝をつく。悔しいことだが、精神的にも肉体的にもかなり疲労していたのだ。
「ルルメアさん、大丈夫ですか?」
「ええ……それより、騎士団の様子を見に行きましょう。何かが起こっているはずです」
「いえ、とりあえず安全な所に……」
「私なら、大丈夫です。それに、どの道安全な場所なんてありません」
「それは……わかりました。あなたが、そこまで言うなら仕方ありません」
私は、増援の騎士団のことが気になっていた。彼らがどうなっているか、それを確かめておきたいのだ。
こうして、私はマルギアスさんを説得して、騎士団の様子を見に行くのだった。