78.弄ばれる命
「さて……屑には屑の使い方があります。という訳で、見せてあげましょう」
「い、一体何を……」
「こうするのです」
ルミーネは、邪悪な笑みを浮かべながら、その手を掲げた。すると、グーゼス様の内の一人がこちらに駆け出してくる。
「ルルメア! お前の命を頂くぞ!」
「……まさか!」
私は、向かってくるグーゼス様から只ならぬ何かを感じた。
直後に、先程のことを思い出した。彼の体は、もしかしたら爆発するのではないだろうか。
「マルギアスさん! 逃げてください!」
「……はい!」
私とマルギアスさんは、ほぼ同時に後退した。そんな私達を、グーゼス様は追いかけて来る。
そこで、私は彼に対して光の球体を放つ。すると、彼は少しだけ怯んだ。
「おごっ!」
「これは……」
私が次の手を考えようとしていると、グーゼス様の体から大きな光が放たれた。
次の瞬間、彼は轟音とともに破裂する。またも、爆発が起こったのだ。
「うぐっ……」
「うっ……」
爆風の煽りを受けながら、私は前方の様子を確認する。グーゼス様は、複数人いた。これだけで攻撃が終わるはずがない。そう考えていたからである。
「ルルメア!」
「やっぱり……」
爆風の中から、グーゼス様が現れた。それは、先程の彼ではないだろう。ルミーネの後ろにいた他の彼であるはずだ。
そんな彼も、同じように爆発するだろう。ということは、距離を取るしかない。
「……ここは、私が!」
「ぬうっ!」
私が魔法を放つ間もなく、マルギアスさんが風の魔法でグーゼス様を押し返してくれた。
それは、ありがたいことである。これで、彼から距離が取れる。
「小賢しい奴らめ……ぬぐっ?」
後退したグーゼス様の体は、突如光り輝いた。次の瞬間、またも爆発が起こる。
「くぅ……!」
「ううっ……」
私達は、またも爆風の煽りを受ける。しかし、それでもしっかりと前を見据えていなければならない。また追撃が来る可能性があるのだから。
そう思っていた私だったが、先程のような追撃は来ない。爆風が晴れて見えてきたのは、ルミーネとその後方にいるグーゼス様達だけだ。
「ふふっ……聖女様は、相変わらずしぶといんですね。ささっと沈めばいいのによぉ!」
ルミーネは、私に対して怒っていた。だが、その表情はすぐに笑顔に戻る。あの張り付いたような笑みが、今はとても恐ろしい。
ただ、言葉とは裏腹に彼女は攻撃を仕掛けてこなかった。よくわからないが、私達をとことん追い詰めるつもりはないようだ。
だが、それでも警戒を解いてはならない。彼女が何をしてくるかなんて、わからないのだから、構えておく必要はあるだろう。