75.燃やせないなら
「まだまだ!」
「これは……」
私が抱いた疑問は、思っていたよりも早く解決した。なぜなら、マルギアスさんから、魔法が放たれたからだ。
彼が放ったのは、風の魔法である。その魔法によって、グーゼス様の体を吹き飛ばしたのだ。
「ぬぐっ……僕は、どうなった?」
「……本当に厄介な性質ですね」
元に戻ったグーゼス様は、少し混乱していた。
そんな彼とマルギアスさんとの距離は、かなり離れている。
どうやら、彼は魔法も使える剣士だったらしい。だからこそ、この任務に選ばれたのだろう。彼は、グーゼス様に対抗できるような人材だったのだ。
これなら、私の出番はないかもしれない。そう思ったが、私はすぐにその考えを改める。
「……」
マルギアスさんは、グーゼス様の攻撃が来てもいいように再び剣を構えていた。
それは、そこから追撃することができないということだろう。
前のことから考えて、彼は火の魔法を放てるのかもしれない。しかし、それはグーゼス様に効かなくなっている。もしかしたら、結局マルギアスさんはグーゼス様に決定打持っていないのかもしれない。
「くうっ……だが、目の前にいるのは敵だな?」
「また来ますか……」
「殺してやる!」
一度意識が途切れたからか、グーゼス様は少し混乱しているようだ。
だが、それでも彼はマルギアスさんの元に向かっていく。それは恐らく、獣の本能のようなものなのだろう。
「マルギアスさん、少し下がってください!」
「……わかりました!」
そこで、私はマルギアスさんに呼びかけた。こちらの魔法の準備が、既にできていたからである。
本来なら、このように声を出すべきではないかもしれない。だが、今のグーゼス様には私の声は聞こえていないはずだ。あの状態の彼は、周りの状態がよくわからなくなることは、前回の戦いでわかっている。
その予想通り、グーゼス様はマルギアスさんの元に向かう足を止めない。これなら、私の魔法も当てやすいものである。
「燃やすのが駄目なら……これなら!」
「ぬうっ?」
私は、グーゼス様の足元に氷を発生させた。それにより、彼の動きは停止する。
だが、これだけでは終わらない。彼を倒すために、私はその氷結をどんどんと広げていく。
「な、なんだ? これは……!」
「そのまま凍ってください」
「うっ……!」
グーゼス様の体は、凍りついた。彼の体を完全に氷の中に閉じ込めることに成功したのである。
彼は燃やすことはできなくなった。そのため、私は逆に彼を冷やすことにしたのだ。