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47.真っ直ぐな人

「何の話をしているのかは知らないが……おっさん、家の店の従業員に何の用なんだよ?」

「ナーゼス、今俺達は大事な話をしているんだ。ちょっと、待っていてくれないか?」

「それは、できない。この人とは昨日会ったばかりだが、もうこの店の一員なんだ。そんな人に、大の男が二人で詰め寄っている。そんな場面を見逃すことができる程、俺は腐っちゃいない」


 ナーゼスさんは、私の前に立った。二人から、私を守ろうとしてくれているのだろう。

 それは、素直に嬉しい。彼の言っている通り、昨日会ったばかりなのに、ここまでしてくれるなんて、私としては感激である。


「はは、いいねぇ」

「おっさん?」

「いや、悪いな……だが、お前もいい表情をするようになったものだ」


 そんなナーゼスさんの様子に、ドルギアさんは喜んでいた。それは、昨日店で私に向けた表情と同じようなものだ。

 彼の性格が、だんだんとわかってきた気がする。彼は、こういう鋭い感じが好きでたまらないのだろう。


「そっちのあんたもだ。どこの誰だか知らないが、この人に何かあるなら、俺を通してくれ」

「……それは、困りましたね」


 喜んでいるのは、ドルギアさんだけではないのかもしれない。彼の同僚も、ナーゼスさんの様子に笑っていたからだ。

 恐らく、彼らは二人とも悪い人ではないのだろう。こういうナーゼスさんのことを好ましく思えるなら、それは間違いない。

 だが、それとこれとは話が別である。いい人であっても、私のことを見逃してくれるとは限らないのだ。


「……ナーゼスさん、私なら大丈夫です」

「何?」

「別に、この人達は私に危害を加えようとしていたとか、そういうことではないのです。単純に話を聞かれていただけです。私は、ズウェール王国の出身ですから」

「あんたがどこから来たかなんて、どうでもいいことだろう。別に、あんたが罪を犯した訳でもないなら」

「ええ、そうですね」


 ナーゼスさんは、真っ直ぐな人なのだろう。そんな彼を、これ以上私のごたごたに巻き込みたくはない。

 これは、私が解決するべきことだ。それができると、私は自負している。

 だからこそ、この町で平和に暮らしている姉弟には迷惑をかけたくない。私には既に心強い味方もいるのだし、ここは流させてもらおう。


「お二人とも、先程の話はお受けさせてもらいます。今度のお休みで、いいんですよね?」

「ええ、それで構いません」

「わかりました。それでは、今日はこれでお引き取りください。ああ、定食屋が開くのを待つというなら、話は別ですが……」

「そうですね……いえ、今日はこれで失礼させてもらいます」


 私の言葉を、ドルギアさんの同僚さんは受け入れてくれた。

 こうして、この場はとりあえず収まることになったのである。

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