40.直球な質問
「何が目的ですか?」
「む……」
私は少し考えた後、そんな質問をしていた。結局、腹の探り合いを続けても意味はないと思ったのだ。
別に、私は聖女であることを絶対に隠さないとならない訳ではない。そのため、直球で聞いた方が色々と早いと思ったのである。
「お嬢ちゃん、そんな風な顔もできるんだなあ……」
「……どういう顔ですか?」
「いや、俺達のような顔をしていると思ったのさ。いい表情だ。そっちの方が、俺好みの顔だぜ……」
「別に、あなたに好んでもらいたいとは思いませんけど」
「つれないねえ……」
私の態度に、ドルギアさんは楽しそうにしていた。よくわからないが、私が聖女の一面を見せたことが、彼にとっては面白いことだったようだ。
だが、こちらとしては笑っている場合ではない。彼が何を考えているのか知らなければ、安心できないのである。
「それで、私の質問に答えてもらえるんですか?」
「ああ、まあ、そうだなあ……お嬢ちゃんは、何者なんだ?」
「あなたが考えている通りの人だと思いますよ」
「そうかい……」
ドルギアさんは、私の言葉に考えるような素振りを見せた。
しかし、それはすぐに変わる。彼は、また笑みを浮かべ始めたのだ。
「お嬢ちゃん、この話はまた今度にしよう。そっちにも仕事があるだろう?」
「……そうですね。確かに、そうしてもらえると助かります」
「よし、それならそれで手を打とう」
ドルギアさんの提案に、私は乗ることにした。
確かに、彼の言う通り私は今仕事中である。これ以上、話を長引かせるのは得策ではないだろう。
いくら夕方は人が少ないといっても、私の手が完全に空いているという訳ではないのである。
「それでは、失礼します」
「ああ、また今度な?」
私の挨拶に、ドルギアさんは再び笑みを見せてきた。彼は、本当に楽しそうである。こちらとしては、色々とはらはらだというのに。
「おい、大丈夫か?」
「え? あ、ナーゼスさん。すみません、こちらを開けてしまって……」
「おっさんに呼ばれたんだろ? 別にそれは構わないさ。それより、あんた少し顔色が悪いぜ?」
「大丈夫です。初めての仕事ですから、少し疲れただけですから」
「……まあ、そういうこともあるか」
カウンターの方に戻って来た私を、ナーゼスさんは心配してくれた。多分、少し疲れたような顔をしていたのだろう。
確かに、久し振りに聖女の時のように気合を入れたので、疲労感がある。
恐らく、それは言い訳の方も関係しているだろう。仕事初日の疲れも、私の体を襲っているのだ。
こうして、私は新生活の疲れを実感するのだった。




