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無能力?

2012年11月7日。

学園祭実行委員会から配られた資料はほとんど適当にしか目を通してない。

なんであんなに資料配られたんだろう?

保健所がどうとかは分かるが、あんなに個人情報集める必要あったのか?

いろんな不満があるが、今はそれはどうでもよい。

たくさんの資料の中で、適当に見ながらもそれでも何度も見て覚えている。

学園祭初日の日付がまさに2012年11月7日だ。


「あれ、いまクルミちゃんが最初に召喚能力を使った日の話だったよね?」

「そうよ。私が10歳の時の話」

「ちなみに、今日って西暦何年何月何日何曜日、地球が何回回った時でしたっけ?」

「今日は2018年5月1日火曜日、原始の地球からだと2.3兆回くらい、西暦が始まってからだと736,815回目の自転をしている途中よ」


ツッコミが間に合わない…。


「なんで俺、子供の無理難題の常套句使って、年下に論破されてんだ?そもそもそれ本当に計算式合ってんのか?」

「違うリキ。今突っ込むのはそこじゃない」

「私たちが召喚される前の時間から6年くらい経ってる。ただ召喚された訳じゃなくて、タイムスリップもしちゃったってこと?」


俺たちの疑問も、予想していたかのようにクルミは説明を続けてくれた。

どうやら、これもクルミの能力の制約の特徴らしい。

能力を初めて使った時間が、召喚元である俺たちの世界の時間として固定化されているらしい。

こちらの世界は刻一刻と進む変数だが、召喚元の世界は初回召喚時のタイムスタンプで固定して定数扱いにすることで、魔力消費が減らせてるんじゃないかと能力界隈の専門家は分析しているそうだ。よくわからんが。


「あなた達が2012年から来たってことは推測がついていたの。私が13歳の時に召喚した女子大生3人組から教えてもらったのもその日だったから」

「あ、そうか。私たちの前にもう1回召喚してたんだね」

「えぇ。そして今日が3回目よ」


クルミの2度目の能力使用は、初回からきっかり3年後、2015年11月7日に実行された。

その時には中学生になって身体も大きくなっており、能力使用後にも直接召喚した相手と話せるくらい、キャパシティが広がっていたそうだ。そう言えば今もピンピンしながら話している。


「最初はお姉さんたち3人とも、すごく驚いていたけど、彼女達の知ってる女子高生が井戸から落ちたら犬耳の主人公が妖怪と戦う世界につながってたのと一緒なようなものだって納得してたわ」


あぁ、非オタの大学1年生女子なら、うるせーっちゃとか、びしょ濡れTSっ子で有名なあの大先生のアニメのことだな。

当時はバーローへと続くあのゴールデンタイムの布陣が最強だった。懐かしい。


「で、ここからはあなた達にとっても大事な話よ。二度の召喚で共通していたこととして、あなた達の世界の人は、こちらの世界に来ても能力が使えなかったのよ」

「「「ええっ!?」」」


さすがにこればかりは3人で同じリアクションをしてしまった。

せっかく異世界に召喚されて、これからの冒険の日々やチート生活を思い描いてたのに、何もないなんて。

もっと言うと、先ほどまでの無能力は障害認定を受けるという話も相まって、何も変わってないのにむしろ相対的に損したような気持ちにすらなった。

なんだそれ、なんて世界に召喚してくれてんだ。お先真っ暗じゃねーか。りきはめのまえがまっくらになったorz


「おーい。聞いてる?早とちりしないでね。無策で何度も召喚してる訳じゃないわ」

「え?」


俺がOTZよりもorzの方が猫背が際立っていいよね、なんて現実逃避していた間、あごに手を当てて考えていたアツシが可能性に思い至った。


「…あ、そうか!さっきの、誰だっけ?占いババ!」

「そんな被り物と乗り物合わせても4頭身のキャラじゃないでしょ…。たしかそう…、マナばぁさんね」


シュナがすぐさまたしなめつつ、マナばぁさんを思い出した。

こいつ、お勉強の記憶力はものすごく悪いのに、人の名前覚えるのとか得意なんだよな。何なんだろうね。コミュ力おばけなのかな?

と、まぁそんなこともどうでもよく、能力付与の能力を持つ人、マナばぁさんだ。

その人がいたら、今は無能な俺たちも能力を使えるようにできるってことだな!

おかえり!俺の異世界青春ライフ!


「それなら早速マナばぁさんとやらのところへ連れて行ってくれ!」

期待の目をクルミに向けたが、クルミは目を伏せた。黒髪ロールがしな垂れる。


「ごめんね。そのお願いは聞いてあげられないわ。6年前の男達にも、そして3年前のお姉さん達にも、マナばぁさんを紹介したわ。でもあなた達には…」


言葉を濁したクルミ。

なんで?今までの奴らには紹介したのに何で俺たちだけ?不公平じゃないか。

沈黙に耐えかねて俺たちが先を促そうとする前に、横にいたメイドの佐藤さんが口を開いた。


「お嬢様に代わり、私から。マナばぁさんこと与志乃(よしの) 真名(まな)様は、すでにお亡くなりになっています。クルミお嬢様が6年前に召喚した男の手によって、3年前に殺害されました」

「「「えっ!!」」」

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