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第三話 王城到着

翌朝、大層な行列の中心人物、第一王女殿下アリシア・ジェーン・オタゴリア、16歳が、カンタベル王国の国境沿いに到着した。


国境には、既にカンタベル王国の護衛や兵隊などが既に待機していた。

オタゴリアから乗ってきた馬車を降りて、カンタベル王国の馬車に乗り換えるために

オーネル将軍のエスコートで馬車から降りる。


流石に受け渡しの場であるここに配属された護衛や兵士はきちんとしているらしい。

噂では聞いているだろうに、カンタベルの人間は私を見ても、誰一人驚きの声を出さなかった。

…まぁ、一瞬だけ息を呑むような間はあったけどね。


兄様に言われた通り、王女として恥ずかしくない振舞いをしなくてはいけない。

第一印象は、大事だ。

彼らだって初めて「隣国の王女である王太子の婚約者」を見るのだから。

頭の先から爪先まで配慮して流れる様に体を動かす。

マナー教師もビックリの王女様振りを如何なく発揮する。

見よ!この王女としての威厳、優雅さ、華やかさを。

なんて自画自賛する。


恭しく手をとるオーネル将軍は、父様よりも背が高い。

私の筆頭護衛を決めた人選は、背の高さだったのかもしれない。

流石にエスコートする人間が私より小さいと、絵面的にも残念な感じになるし、

第一印象が威厳ある王女、というよりも、単なる大女に終わってしまいそうだしね。

きっとそのあたりも全て考え込まれてるのだろうなぁ。

雑務を担当する文官に感謝の念を王都に向けてとりあえず送っておこう。

王都の方角が良く分からないけど。


オタゴリアの馬車からカンタベルの馬車がある場所。

ほんのわずかの距離だけど、きっちりと境界線があるようだ。

国境といっても塀があるわけでも、門があるわけでもなし。

単なる道にしか見えない。

私には見えない境界線があるのだろう、エスコートをしていたオーネル将軍が足を止める。

反対側には、カンタベルの人間が私を待っている。


「カンタベル王国近衛隊の指揮を任されている、コナー・トリン・ダールと申します。

ここから先、カンタベルの王城までアリシア・ジェーン・オタゴリア王女殿下の護衛を引き受けます。

以後、お見知りおきを下さい」


流暢なオタゴリアの言葉で挨拶をするダール隊長。

近衛隊が私の迎えに来たのか。


「アリシア・ジェーン・オタゴリアよ。

お迎え、ご苦労様」


微笑みながら、カンタベルの言葉で挨拶を返した。

エスコートの為にさしだされた彼の手に手を置く。

一歩足を踏み出せば、ここは、もう自国ではないのだ。

王女モードの私は必要最低限の会話しかしない。

様子見だ。


一瞥した感じ、カンタベルの近衛隊長であるダール隊長は、要人相手の職務を全うする真面目そうな人だ。

軍服を着こなすのは、かなり難易度が高いはずだが、綺麗に着こなしている。

胸元には勲章が所狭しとついている。

首の太さだけ見ても、体格が良いのが一目瞭然だ。

オーネル将軍と引けをとらない。

彼も、私より背が高い。

うん、もしかしてカンタベルでも背の高さで選んだのか?と思うくらいだ。


カンタベルの馬車も、豪奢の一言に尽きる。

オタゴリアも花嫁道具として馬車を新調したのだ。

きっとカンタベルもご同様だろう。


カンタベル王都まで、また同じような旅が続く。

馬車に揺られ過ぎて、大分疲れてきた。

溜息しか出ないが、仕方ない。

馬車の外では、私付きの侍女がどうやらカンタベル側の侍女と話している。

ユックリと馬車が動き出す。


私は軽く目を瞑る。

線も何もない、普通の道だった。

なのに、ここから先は、習慣や言葉すら違う別の世界なのだ。

振り返ると、遠くにスティーブン辺境伯の砦が見えた。

旗が揺れているのが分かる。

きっとオタゴリアの国旗なのだろう。

唇を噛みしめた。

いざ、カンタベル。

ゴトゴト揺れる馬車の中、私は一人で気合を入れた。



カンタベルに入ってからは、粛々と進み、国境までの道中何だったんだ、いやあれは見栄はり道中だったか、というくらいにサクサクとカンタベル王都についた。

途中、カンタベルの貴族の屋敷で宿泊をする際に、お約束のように私を見た小さな子供が驚いて声を出すこともあったけど、ここは他国。

恩を売っておいて損はない。

焦る両親をしり目に微笑んで終わらせてあげた。


途中、オタゴリアとカンタベルの同盟を快く思わないどこかの国から、何かしらの妨害があるかも?花嫁強奪とか?なんて思ったりもしたが、そんなのは物語の中だけだったらしい。

ドラマらしいドラマはなかった。

そりゃそうか。

オタゴリアは鉱山、鉄鋼の国。

武器を作るのはお手の物、力で押し通せ!的な武力を自慢としている国だし、カンタベルは貿易メインの国で、お金に物を言わす経済大国だ。

うん、国力はあるほうだろう。

敵に回すには、ちょっと厄介な国同士の婚姻だ。


うわー、私達の政略結婚って結構えげつない組み合わせかもしれない。


そんな事をつらつら考えていたら、あっという間に馬車は王都の中心部についたらしい。

街道の至る所で花をまいて歓迎してくれている。

王女様、ようこそカンタベルへ、なんて歓迎してくれている声が聞こえる。

街道でも行く先々で歓迎の声は聴いたけど。

さすが、王都。人数が多い。


胸に暖かいものが広がる。


歓迎されている。


それが、心強く、嬉しい。


護衛の関係上、あまり外を見ることが出来ない。

手ぐらい振ったって罰は当たらなさそうだけど。

ここは自国ではないので、自重しないといけないのが辛いところだ。


王都の活気あふれる感じといい、歓迎の声の暖かさといい。

様子見、とはいえ、私の中のカンタベルの印象は好印象に一直線だ。

そしてついに馬車はカンタベルの王城正面玄関についたのだ。


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