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9.日常は激変した。

伸びよPV。

喜ぶ作者。

 「何でいる訳?」


 「彼氏と朝登校するの、憧れだったんです」


 衝撃的で人生で一番心労がかかった日。

 そう、あの世界一可愛いといっても過言じゃないほどの存在、黒羽沙雪と、地味すぎる高校生、そして知られてはいないが、ヤンキーという側面を持つ八原紫乃、つまり俺達が恋人関係であると周りに誤認された日。


 あの日はまさに、今後の俺の生涯で胃が痛かった日トップテンに入る日である。


 そして今日は、その次の日。


 早速やってやるぜ、といわんばかりに初日から飛ばしてきやがったぜ。

 流石の俺も滅茶苦茶ビビるくらいのガチ勢っぷりだな。


 しかし、先日気力を使い果たした俺には、沙雪に反抗する気概は残っていないので、もうなるようになればいいのではないのだろうか。と、投げやりに笑って見せた。


 「あー、俺も彼女と一緒に登校するの夢だったんだよ。なんかラブラブっぽくていいよなー」


 「そうなんですか? なら、私たち本当にお似合いのカップルですね!」


 「仮の、が付くけどな」


 「そこは無粋なんで言わないこと! ほらっ、行きますよ?」


 「へーい」


 そう言って俺たちは歩き出す。


 しかし、色々な面倒ごとを取っ払って考えれば、この状況はすごく新鮮だな。


 今まではずっと一人だった。


 なんの代わり映えも無い日常。

 毎日変わらない風景は幼き頃の冒険だった登下校とは打って変わり、もはや歩行訓練と化した。

 淡々と進む授業は俺の学力こそ上げてくれたものの、ただただロボットのように日々学ぶ自分に嫌気がさし。

 帰り道を歩めば今日を思い返し溜息を吐いた。


 だがたった一つの存在が俺の日々に色を付けてくれたような気がする。


 「そういえば、しー君。知ってますか?」


 「うっ、何をだ」


 やっぱりしー君は呼び慣れない。羞恥プレイもいいところだ。


 「うちの高校って、新学期になってすぐに親睦を深めるためにクラスマッチをするじゃないですかー」


 「あー、確かあったな」


 「確かって、先輩は去年参加したんじゃないんですか?」


 「いや、サボったな。腹痛で」


 勿論本気で腹痛だったわけではない。

 ただただ、活躍してもしなくても、力加減の調整とか下手くそだから、目立つなと思って参加しなかっただけの話だ。


 「今年もサボるんですか?」


 「もち」


 むしろ参加するという選択肢が現状では見当たらないね。

 誰が好き好んで問題を発生させようというのだろうか。


 俺は綺麗に回避してみせるぜ。


 「えー! 私先輩の活躍する姿みたいのに!」


 「俺はあんまり目立ちたくないの」


 「彼女にかっこいい姿を見せてくださいよー!」


 「却下」

 

 「うー、けち」


 「ケチで結構」


 むしろ主婦な俺にとっては、ケチというのは誉め言葉なのである。

 無駄な消費を避け、堅実にコツコツと無難を積み重ねて平穏に過ごしていきたいものだ。


 「わっ、猫だ~」


 「白猫だな。けどこれ……」


 「捨て猫、ですね」


 「これ見よがしに段ボールまで置いてるな。ったく、捨てるくらいなら飼うなって話だ」


 猫だって必死に生きている。生命に貴賤なんてないんだ。


 飼っている猫に対してどのような感情を抱こうが勝手だ。それが猫にとって悪いものでない限り。


 けれどこれは別だ。

 一度飼うと決めたのなら決めたのなら、育てると決めたのならばそれを突き通せよ。


 それが、命を預かる者の当たり前の責務だ。

 

 はあ、この猫には悪いが、朝から気分の悪いものを見てしまったな。


 「せんぱい……」


 「はあ。沙雪の家はダメなのか?」


 「うちはお母さんが猫アレルギーなんです……」


 沙雪はすっかり俯いてしまっている。


 仮に、だ。


 まだこの猫は全然元気そうだから、通りがかった誰かが拾ってくれるかもしれない。


 それに、うちだってお金が無限にあるわけじゃない。

 だから、見かけた捨て猫を手あたり次第安易に飼うと、この猫の元飼い主になるだろう。


 けど、幸い猫一匹くらいならなんてことないだろうし、なんならバイトをして餌代を稼いでもいい。


 全てを助けることはできないけれど、この目の前にある命くらいなら。


 助けられる。

 というか、もうこれだけの感情を抱いてしまっては無視できない。


 それに、沙雪の笑顔も守りたいしな。


 「……仕方ねーな。ほら、その子猫抱っこして。俺ん家、戻んぞ」


 「はいっ、せんぱいっ!」


 はあ、俺もすっかり沙雪に絆されたのかね?



 「ーーあ、先生。俺と沙雪、遅刻しますーー」







 「ーーで、この子猫を拾ってきたと」


 目の前には爆発した髪の毛で、腕を組んでいる姉貴がいる。


 恰好はともかく、口調に怒りはなく、ただただ事情を聴いている年長者の様子だ。


 「餌代は私が何とかしますし、しつけもしますから! 莉乃さん、お願いします」


 「姉貴、俺からも頼むよ。バイトでも何でもするからさ」


 俺達二人は、必死になって姉貴に懇願する。


 家に帰り着いた俺達は、今日休みだった姉貴に、さっき拾った子猫を飼いたいと交渉している最中だ。

 勿論、自分たちが連れ込んだ以上、責任はとるし、面倒は掛けないと先に言ってある。


 「はあ、沙雪ちゃん。学生の本分は勉強よ?」


 「でもっ!」


 「なあ、姉貴ーー」


 「紫乃も、あんたには将来苦労させたくないからバイトはやらせてないのよ?」


 「くっ」


 なら、ダメなのかーー?


 姉貴の俺への配慮は十分承知だ。

 大学に行きたい俺のために、毎日真面目に働いていることも知っているし、感謝もしている。


 けれど、今回ばかりはーー!


 「……はあ。ほら、二人とも。そんな暗い顔しないの。そうね。あたし、猫大好きだから飼いたかったのよね」


 「それって!」


 まさか!


 思わぬ言葉に声が上がる。



 「沙雪ちゃん、たまにはこの子と私に顔、出してよねーー?」


 「もちろんっ! 毎日出します! 莉乃さん、大好きっ!!!」


 感極まった沙雪は姉貴の胸に飛び込んだ


 こんなクソゴリラな姉貴でも、たまにはいい所あるじゃねえか。


 よかったな、沙雪。


 「で、それはそうと。この子を世話をするのに色々必要ね。紫乃の担任は京香だし、沙雪ちゃんは優等生だし、一回くらい遅刻しても大丈夫でしょ。よし、買い物いくわよ!」


 「はいっ!」


 「おうっ!」







 「うにゃ~、しらゆき~」


 目の前には先ほど拾った子猫、白雪とじゃれる沙雪がいる。


 しらゆきという名前は沙雪がつけた。

 真っ白でふわふわな毛と、沙雪の名前からとった名前だ。

 

 拾ったのは沙雪であるし、しらゆきがメスで非常に可愛らしいことから、その案は満場一致であった。


 「せんぱ~い、しらゆきが可愛すぎるよ~」


 「ははっ、そうだな」


 沙雪は本当にしらゆきに骨抜きにされている。

 まあ気持ちは分かる、しらゆきは本当に可愛くてーー。


 「おっと」


 「紫乃の膝が気に入ったようね」


 姉貴はリビングのテーブルでコーヒーを飲みながら微笑む。


 「わ、しらゆきずるい~。いくらしらゆきでも、せんぱいの膝は私のだから~」


 「おいっ!?」


 「こら、せんぱい。動いちゃダメだにゃ~」


 「沙雪、いくらなんでもこれは」


 色々とまずいだろ!?


 しらゆきが可愛すぎて沙雪まで猫化しているんだが!?


 「ふふっ、いいじゃない紫乃。甘えさせてあげれば。別に減るもんじゃないんだし~」


 「そうだそうだ~」


 「姉貴は茶化すな! 沙雪も、そろそろ学校行くぞ!?」


 まだ四限には間に合うから、しっかり登校しなければならない。


 「え~でも~」


 「わがままいうな」


 「いいじゃない今日くらい。昼休みから行けばいいじゃないの。一応京香にも話しておいたし」


 「せんぱい、おねがいっ」


 でもな……。


 「紫乃?」


 「せんぱい?」


 くっ!!!!!


 「あーーもうっ、分かったよ! 怒られるときは沙雪も一緒だからな!?」


 「やったー!!!」


 はあ、ったくこの美少女後輩は……。


 そう愚痴りながらも、昼休みまで時間があるので、俺もしらゆきと戯れることにした。




 尚、この出来事が俺達をまた新たな騒動に巻き込むことは、現時点では予想だにしていなかったーー。 


 

働きたくない_:(´ཀ`」 ∠):




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