7.不満。あと、疑惑浮上してんだけど?
ハゲマント(意味不)
月曜日。
姉貴を起こした後。
まだ寝ぼけている姉貴に声をかけられる。
姿はいつも通り下着姿である。
「し~の~」
「ん、何?」
「パンツは~?」
「はあ……」
……こいつ、絶対自分が女っていう自覚ないよな。
仮にも一淑女がパンツ取ってってどうなんだ?
いや、俺は弟だし、当たり前に意識しないのは当然なのは分かる。
そして俺も当然姉貴に対して意識なんてしないし、こんな姉貴なら尚更だ。
ましてやこの家の家事はすべて俺が担当しているのだから、パンツやブラジャーなんかになんの思いを抱くこともない。ただの布切れだ。
だが、この現状を果たして放置していいのだろうか。
否! 断じて否だ!
奴はただでさえ干物っぷりに拍車がかかっている。将来貰い手があるかも正直分からない。というか今のままでは絶対現れない。
ならばまずは、パンツを自分で取らせる所から、結婚への第一歩を歩ませてやらなければ!
よし、行くぞ!
「姉貴、自分で」
「はよ」
「はい。黒のセットでよろしいですか」
「いいチョイスね。早くしなさい」
「……イエスマム」
……道は険しいな。学校行こ。
※
※
ああ、俺はどうしてこうも姉貴に弱いのだろうか。
小さいころから俺の好きな食べ物を奪われ、反抗するとヘッドロックを決められていたからだろうか。
それとも、実家にあった池の前に立つと、必ずと言ってもいいほど何の理由もなく蹴飛ばされて池に落とされたからだろうか。
なんて数々の姉貴からの仕打ちを思い出すと、瞳から雫が落ちてくるのが分かる。
数々の所業による擦り込みは俺の心をついに浸食し、涙を流してしまったのであろう。
しかし姉貴は何故、あんな酷いことをするのだろうか。
俺への叱咤?
いや、俺は何も悪いことをした覚えはない。むしろ、姉貴に対して尽くしているではないか。
まあ、強制だけど。
では、俺のことを愛している故の愛の鞭?
んー、違うな。
愛しているのは本当だろう。自分で言うのは恥ずかしいが。
何だかんだ困った時は助けてくれるし、頼りになるのは間違いない。
が、それとこれとは別だろう。
俺が思うに奴は……。
ただただ、生まれながらの理不尽!
気分でやってる!!
面白いだけ!!!
……はあ。
そんな分かり切ったことを考えつつ。
気のせいだろうか。
何やら懐疑的な視線を感じる。
それもクラスの人気的な存在ではなく、比較的地味で友達のいない俺に。
朝から感じて現在、昼休みまでそれは続いたので、流石に俺も疑問に思っていた。
んー、何かやった覚えはないんだが。
しかし周囲の視線は俺に固定されたまま。
「ほら、あれ」
「嘘だろ?」
「俺が聞いてくるわ」
そう言ってクラスの中心グループの一人、多分野球部の坊主君がやってくる。
ちなみに新学期になってそこまでたっていないし、話したこともないので名前は知らない。
というか、何か俺のところ来る流れじゃん。
は? マジで何のこと?
何ら心当たりがなさ過ぎて正直混乱している自分がいる。
だって、この姿では全く波風立てずに生きてきたんだぞ?
埃なんてどんだけ叩いても出ない男だ。
だから心当たりなんてない、はず。
一応、最近で何かやった、もしくは変わったことがあるか考えるが。
んー、ケンカはこの姿でやっていないから原因としてはなし。
なら、日常生活か?
日常生活で変わったこと……。
……あ。
「おい、八原。黒羽と付き合ってるって本当か?」
はいやっぱりーーー!!!
そうだと思いましたよ! 最近変わったことって言ったらそれしかないもんね!!!
あーーーー、だから迂闊に関わりたくなかったのに。
いや、沙雪自体が悪いわけじゃないんだよ。
ただ、こんな騒動になったのは確実に沙雪の容姿が抜群に優れているから。
そう! 可愛いのが悪い!!!
そうだよな~、こんなかわいいやつ初めて見たもん。
けれど今回はそんな容姿が恨めしいっ!!!
「いや、付き合ってないよ」
そう、付き合ってないのは本当だ。
「本当か? けど、モールで腕組みながら買い物しているところを見たっていう奴がいてな」
おいぃぃぃぃぃぃい!!!
おもいっきしバレてるよ!
そうだよな! 沙雪可愛いし、沢山人がいても目立つに決まってるよな!
けれど、まだいける!
「いやあ、勘違いじゃない?」
「じゃあこの写真は何だ? これ、お前だよな」
はい終わったーー!!!
何で写真撮ってんねん。
しかも正面からとか気が付かんかったわ。
え、何? 盗撮のプロ?
はあ、流石にこれは言い逃れできないな。
付き合ってはないんだが、この場面は確実に付き合ってるって思われるよな。
けど、ここで肯定はできない。
実際付き合ってないからな。
だが、どうする?
どうやって言い訳する?
くそっ、何も思いつかねえ!
万事休すなのか?
そう俺が絶望しかけた瞬間。
「せんぱ~い! って、あれ?」
きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあーーーーー!!!!!
ナイス! 君が俺の救いの女神だったんだね!
「おっ黒羽か。聞きたいことがあるんだが」
そう言って坊主君は沙雪に聞く。
「はあ、えっと、まず誰ですか?」
それは俺も思った。
俺に関してはクラスメイトなんだから知っとけよって話だが。
「くっ、まあ学年違うししょうがないよな。俺は野球部の期待のエース、芦屋だ」
坊主君改め芦屋は、名前を知られていなかったことに少しショックを受けていたようだ。
坊主だけど顔はいいし、野球部のエースだもんな。
「まあ名前はどうでもいいですけど。それで何の用ですか?」
「ぐっ、あ、ああ。実はな、お前とそこにいる八原が付き合っているんじゃないかっていう噂が流れててな」
「へ~? なるほどですね。ふふふっ」
うわ、やめてやれよ沙雪。どうでもいいなら聞いてやるなって。
ショックすぎて滅茶苦茶苦しそうだぞ?
というか用件を聞いた沙雪が、なぜかこっちを見て意味深な笑いを向けてきた気がする。
……なんか嫌な予感が。
「で、そのことに関して真実を皆にも伝えてほしいんだ。何かの間違いっていうのは分かってるけど、やっぱり本人の口から聞かないことにはな」
そうだ! 俺たちは付き合ってないと言ってくれ!
本気で頼むから。
「そうですね。じゃあ答えましょう。残念ながら」
「お、やっぱり?」
付き合ってないんだーー、と芦屋は受け取り、喜色を浮かべる。
「私たちはーー」
沙雪が何故か俺のところに歩いてくる。
その足音が何故か鮮明に感じられて。
俺にたどり着くまでの歩数がまるでタイムリミットのようだ。
時がゆっくりと流れている。走馬灯か?
このままではまずい。そう俺は思った。
俺はもうなりふり構わずその場から逃げようとする。
が、沙雪と目が合い、体は石のように動かなくなる。
そして沙雪は笑った。
俺の腕に抱き着き、皆に宣言した。
「付き合ってますっ!!!」
……あーあ。
どうしてだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!!!!!!!
クラスは驚愕の嵐に包まれた。
毎日更新は何気に面倒ですよね。
やろうと思えば出来るけど、やる気が起きない……。
※
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