2.ラッキースケベなのに嬉しくない。
世の中の姉貴大体理不尽:(;゛゜'ω゜'):
どうも破刄ネロです。
不幸にも姉貴からお叱りという名の理不尽を身に受けた翌日。
今日も今日とて、爆発した髪を直し、若干癖毛のようになりつつも目を隠すように髪の毛を下ろして、俺が俺だと分からない、ヤンキーではない、地味な八原紫乃へとスタイルチェンジしていた。
現在の時刻は午前七時。
八時出社の姉貴を起こさなければならない時間である。
尚、俺は姉貴を起こしたら学校へ向かう予定なので、当然朝飯を作り終え、食べ終わった所だ。
俺は、姉貴の部屋の前に立つと、必ず二回のノックを忘れない。
これを忘れたが最後、俺の命は散ってしまうからだ。
しかし、姉貴は反応しない。これは想定済み。
姉貴はかなり朝が弱く、自力で起きた事がないからな。
実家にいた頃から、姉貴を起こすのは俺の役目なのだ。
「入るぞ〜」
そう一言言って、部屋に足を踏み入れる。
そこは、女の子らしい、綺麗でいい匂いのする部屋、ではなく。
服が大量に床に落ち、足の踏み場もないような汚部屋だった。
……なんで三日前に掃除したのに汚くなってるんだ。どう考えてもおかしいだろ。
なんて溜息を吐きつつも、下着まで下にばら撒いている姉は淑女としての心構えがないのかと、また大きな溜息を吐きそうになった。
しかし、これはいつものことなので、また今日の夕方に掃除するとしよう。
さて、手早く姉貴を起こすとするか。
「姉貴〜、朝だぞ。起きろ〜」
とりあえず一声かける。が、当然起きない。
次に、布団をはぐ。
と、これまた下着姿で寝ている姉貴が目に入った。
何度目か分からない溜息を吐きつつ、姉貴が起きるかどうかと観察するが、身動ぎをするのみで起きない。
……手強いな。
最終手段だ。
これをすると確実に俺は無事では済まされないが、他に手段はなく、待っているのは二人の遅刻と俺の身が危ないということ。
だが、結局危ないなら、より被害が少ない方を選ぶのは自明の理。
よって、俺はこれから禁忌の手をつかう。
その名もーーこちょこちょ。
下着姿の姉貴にこれをするのは、若干セクハラ臭いがそこは家族でもあるし、気にしない事にしよう。
どうせこれでしか起きないのだ。構うものか。
そう思い、姉貴の脇腹をくすぐり始めてものの数秒。
「くっ、くくっ、あははっ、やっ、やめっ、は、やめてっ! はははははっ!」
「ほら、姉貴朝だぞ」
「わっ、分かったからっ! 起きるからぁっ!!!」
よし、そろそろ起きたか。
しかし、日頃の恨みもあるので、まだ続ける。
「ほーれ、ほーれ」
「あはははっ! ねっ! もっ、もうやめてぇっ!」
まだまだ。
「ふっふっふ」
これで俺の恨みが晴れると思うなよ!
「あーっはっはっはっはっは!!!!!」
「あははっ! くっ! この! だから、やめろって、言ってるだろうがぁぁぁぁあ!!!!!」
「ぐはぁっ!!!」
俺は姉貴に腹を蹴飛ばされそのまま蹲る。
自業自得と言えば自業自得だが、何も蹴飛ばさなくても……。
「乙女の柔肌だぞ? ああん? 気安く触るんじゃねえ。おら、さっさと出て行け」
「は、はひぃ」
姉貴はそれはもう鬼の形相だ。
てか、そこまですぐ覚醒できるなら、もう少し自分で起きる努力をしてくれても……。
なんてことを思っているのが、顔に出てしまったのか、
「お? 何不満顔してんだこの豚野郎。さっさと出て行け!!!」
「ブヒィィィィィィイン!!!!!」
姉貴に蹴り飛ばされて、部屋を追い出された。
……誰か、この姉貴交代してくれ。
※
※
ああ、酷い目にあった。
チャイムが鳴り、昼休みになった。
俺は自分で作った弁当を取り出し、食べ始めようとする。
蓋を開けると、うん。今日も今日とて良い出来だと、自画自賛してしまう程、中々に俺の料理は上手いのではないだろうか。
これも中学の頃から、姉貴に弁当を作らされたおかげ……。いや、姉貴のせいなのか。
うん、考えたら悲しくなってきた。
何やら目に染みるものを感じつつも、箸を取り食べ出そうとすると。
ん? 教室の入り口付近が騒がしいぞ。
少し視線を向けると、そこには美少女と人だかりがあった。
それを確認した俺は、速攻で弁当を片付けて、教室を離れようとする。
が、
「八原紫乃先輩って、このクラスにいますか?」
と美少女が聞いたのち、近くにいた男子生徒が、
「ああ、あいつなら〜、おっ、ほらあそこにいるぞ」
と美少女に対し嬉しさからかニヤニヤしつつも、少し視線を彷徨わせ、俺を見つけた。
クソが。
俺はこの事態に知らぬ存ぜぬで通し、教室から離れようととしたが。
「八原紫乃先輩!」
ガッと、もう離さないぞと言わんばかりに強く腕を掴まれた。
はあ、終わった。
が、まだだ。俺は諦めない。
「な、なんですか?」
「少し話したい事があるので、一緒に来てもらえませんか?」
ニコッと微笑み、こちらを伺ってくる美少女。
一体何が、いや、まさかあの事がバレて……。
自問自答するが答えは出ない。
ここは、出来るだけ目立たないようにする為にも、この問いに了承するしかないだろう。
「は、はい。分かりました」
「じゃっ、行きましょっ!」
そしてすぐ、ガッと腕を組まれ俺はどこかへ引っ張られてゆく。
……やわらか。
※
※
美少女に連れてこられたのは、屋上だった。
確かここは立ち入り禁止だったはずでは。
まあ、俺はたまに使っているが。
進学校のここでは、俺以外使っているやつ見た事ないぞ。
「ここ、立ち入り禁止ですよ」
「そういう事は気にしないって事で!」
「入学して一か月でそれって、ふ、不良だな……」
俺はいかにも、不良にビビりまくる地味男子、というフリを、身震いで表現してみた。
「不良じゃないですよー? ふふふ」
くっ。
目の前の美少女は、ニヤニヤと小悪魔的な笑みを浮かべてこちらを見ている。
ま、まさか、本当にバレているのか?
「え、えっと、僕に何か用があるんですか?」
「はいっ。その前に、先輩って、やはらしの、先輩で合ってますか?」
「う、うん。確かに僕は八原紫乃ですけど」
「おおっ! じゃあ頼みがあるんです!」
頼みだと?
何故俺にーー、と思わなくもないが、これで俺の最大の懸念は拭われた。
俺を指名してきた理由は全くもって不明だが、そこはそれまで気にしていないからな。
「頼み? 僕に出来る事なら全然引き受けるよ!」
俺は思わず嬉しさからテンションが上がってしまう。
「じゃあ、まず中腰になって下さい」
「わ、分かりました」
だが何故中腰ーー?
そんな疑問が頭を過ぎる。
「次にーー、目を、瞑って下さい! きゃっ!」
「ええ、目を? ううん、分かりました」
ええい、この美少女は一体何をさせようとしているんだ!
疑問符が頭を飛び交うが、答えは考えても出てこない。
ならば、考えても仕方ない。俺はそう結論付けた。
しかし、良かった。
この美少女には、昨日ヤンキー三人から助けた男が俺だとバレてーー
「あはっ、やっぱり!」
「ーーーーっ!!!!!」
マズいマズいマズいマズいマズい!!!
今、髪を上げられた? 顔も見られたか?
クソ、油断した。勝手に結論付けて彼女が疑いを掛けている可能性を除外していた。
しかし後悔しても遅い。
俺はすかさず美少女から離れ、動揺を隠そうとするが、
「やっぱり、昨日の助けてくれた人、先輩だったんですね!」
ーー遅かった。
ーーーーああ、やっちまったよ。折角今まで隠してきたのに。台無しじゃねえか。
クソが。
そうだよ。
認めてやるよ。
俺は、長くウザったい髪をかき上げ、
「……そうだ。俺が昨日、クソども三人をのした奴だ」
そう告白した。
……あーあ、どうしてこうなった。
投稿はゲリラ。
作者はゴリラ。(嘘)
※
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