13.ただただイチャイチャ。
休載してない冨樫は冨樫じゃない()
「よっす」
「わ、先輩だー」
四月下旬の、俺と沙雪に関する例の事件が終わり、現在は六月下旬。
あれから俺の正体がバレ、何も知らずわーきゃーする女子もいれば、赤鬼だという事を知り目を背ける者もいた。
男子どもは、俺の容姿と、沙雪と付き合っているのが気に食わず全く話しかけてこないが。
結果的に目立ち、何か面倒事が起きるかなとは思っていたのだが、幸いそのような事は起こらず。
しいて言えば、地味男を卒業したので、友達が欲しいなーとは思っていたのだが、男子はあんな様子だし、出来ないのではないかと不安に思っていた。
しかし、五月初旬にクラスのサッカー部のイケメン男子、朝宮という男が話し掛けて来た。
最初は少し俺も身構えたが、なんていう事もなく、そこから段々と話すようになり、今では軽い冗談を交わしながらも肩を叩き合い、暇な日は二人で遊びに行くようになった。
ともあれ、なんやかんやで俺の抱いていた思いは杞憂であり、蓋を開けてみれば以前よりも充実した日常を送っている。
沙雪とも、未だに偽カップルの関係ではあるが、それを抜きにしても、仲はめちゃくちゃいいし、普通に出掛けたり、俺の家で姉貴やら京香さんと共に女子会おっ始めたり、たまにはこうやって弁当を作って貰ったりもする。
「いつも弁当ありがとな」
「ううん、いつも先輩の家で夜ご飯ご馳走になってるし、何より先輩の餌付けがしたい!!!」
「餌付けって、俺はお前のペットじゃないんだけど」
「またまた〜、照れちゃって」
「照れてもいい事ないだろ……」
そして、こんな感じでからかってくるのも相変わらずなんだよな〜。
少し話した俺達は、近くにあるベンチへ向かい横並びに座る。
ここは校舎から少し離れた所で、木陰もあり涼しいので、六月下旬の馬鹿みたいな暑さでも快適に昼食を食べれるのだ。
「ところで今日のメニューはなんなんだ?」
「えーと、今日は先輩の大好物です!」
「いや、毎回俺の好物作ってくるから分かんねえよ……」
「ふふふ、唐揚げと、だし巻き卵焼き、お浸しとかですね!」
「確かに好物だな。けど、沙雪ってかなり家庭的だよなー」
今まで数回弁当を作って貰ったが、どれも俺の好物ってだけでなく、ちゃんと美味しいし、栄養バランスも考えられていて、正直俺の主夫の立場が危ない……。
「嫁にする?」
「しないしない。我が家の主夫役は譲らんよ」
「あ、なら私、養うね!」
「やめろ! なんかプライドが許さんわ!」
「もー、わがままばっかり。それじゃあモテないよ?」
「それとこれとは別だと思うんだが。モテなくても、一人に好かれれば別にいいよ」
「先輩は私一筋だもんねっ」
「はあ……、話聞いてくれ……」
沙雪はしょっちゅうこういう風に俺をからかってくる。
多分、沙雪は俺の事をからかい甲斐のある、友人でありおもちゃ、ぐらいにしか思っていないんだろう。
たまに思わせぶりの度が過ぎている所もあるが、それだけ気を許しているからなのだろうし。
正直俺はドキマギしすぎて、付き合いたいかって言われると……、分からないけど好意的に思っているのは確かだ。
だから沙雪と一緒にいるし、無視出来無いんだよなー。
「ほら、早く食べるぞ」
「はーい」
「頂きます」
「はーい、召し上がれっ」
まずは唐揚げを箸にとり口に運ぶ。
「うん、美味いな」
「ほんとっ!?」
「タレがしっかり染み込んでいて、めちゃくちゃご飯が進む」
唐揚げ一個でかなり白飯が消費されるレベルだ。
卵焼きなど他も食べるがやはり美味しい。流石沙雪だな。
「そんなに美味しく食べてくれると嬉しいな……。って、もう食べ終わってるじゃん!」
「ああ、ご馳走様でした」
沙雪が嬉しがっている内に、食が進みすぎてしまったな。
「ご馳走様でした、じゃない! ダメじゃん! あーんしてないよっ」
「いいだろ別に。あと、あーんは嫌です」
「むーっ」
「文句言ってももう弁当はありません」
ふっ、勝ったな。
毎回毎回負けるような男じゃないんだよ。
全戦全勝。常勝無敗の赤鬼とは俺の事だ!!!
「先輩のドアホっ! はあ……、私も食べよ。……あ、せんぱい?」
「ん? なんだ?」
「食べさせてー」
おねがーい、と上目遣いで可愛くおねだりをする沙雪。
「ノー。子供じゃねーんだから自分で食え」
だが、だだをこねても無駄だ。
ここらで沙雪には、世界は甘くない事を教えなければならない。
いつまでもいいようにはされないんだよ!
「いーやーだー。食べさせてくれないと先輩のベッドの下のエローー」
「ーーほら、沙雪。あーんだ。今日は全部あーんで食べさせてやる」
まさか沙雪がエロ本の存在を知っていたとは……。
現在はスマホが普及しているのだから、本など買う人は少なくなったし、誰もその存在に気付かないと思っていたのだが。
スマホの方がお手軽というのは分かるが、本はまた、何というかリアル感が出て素晴らしいのだ。
しかし、これが姉貴にバレしまっては、全て燃やされ、その後数回殺されるだろう。
それだけは阻止しなくてはならない!!!
俺は黙々と感情を消して沙雪の口に料理を運ぶ。
「ふう、ご馳走様でした!」
「沙雪、例のモノは」
「しょうがないなー。莉乃さんにはバラさないから」
「よし!」
これで俺の性活は守られたっっっ!!!
心の底から安堵し、目の前のメシアに感謝した。
「でも、その代わり再来週から夏休みだし、海に連れて行ってね?」
「え、その代わりって、俺あーんしたんだけど」
「それはそれ。別にそれが交換条件なんて言ってません」
あれが条件じゃなかったの?
てっきり、あれが条件だと思って無心で、照れるとまた揶揄われるから必死に無心でやったのに!
まさか、俺があれを聞けば即答で従うと思って!
「なんという小悪魔……!!!」
「ふふ、ならそんな小悪魔は、海で先輩を悩殺しちゃおうかなー?」
「はっ、俺がそんなんで」
「好きだもんねー、小悪魔風、黒の水着でツインテール」
「ぐっ、何故それを」
何故、数ある作品の中で俺が一番好きなヤツを知っているんだ。
「折り目、付いてたよ?」
「ぐはっっっ」
もう俺のライフはゼロよ……。
何が良くて俺の性癖を美少女後輩に知られて揶揄われなきゃならんのだ。
「はあ…、わーったよ。再来週な。姉貴か京香さんに車は頼んでみるから」
「やったー!!!」
沙雪は決定した海に思い切りはしゃぐ。
「海でははしゃいで溺れるなよー」
「大丈夫大丈夫!」
本当か……?
何か今から不安になってきたんだが。
フラグ立ってないよね?
しかし、今年は去年のような、家で延々とダラダラ過ごすようなものでなく、沙雪や他の人も含めた、充実した夏休みになりそうだ。
「私今の水着だとサイズ合わないんだった。先輩、今週の土曜日、モールで買い物しよ?」
「……そういう事を男の俺に言うんじゃない。まあ、モールには付き合うけど」
「選んで下さいねっ。あっ、それとも黒の水着がいい?」
「選ばない! あと、それも言うなっ!!!」
はあ! ベッドの下に隠したの失敗だったかな……。
俺は、自分が犯した愚行にため息を吐きつつ、今度は何処に隠そうかと考えを巡らせ始める。
机の引き出し? いや、沙雪に見られる。なら、いっそ二重底に……。
まあそれは帰ってから考えよう。
しかし、海か。
沙雪に釣られて変な輩が来ないといいけどな……。
俺は、そんな不安を胸に抱きつつ、沙雪とまた話を続けていった。
最近ジメジメしますね(コミュ障か)
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