1.早く帰り着かないと姉貴に〇〇される。
※5月11日、始めに文を付け足しました。
後のヒロイン視点。
先輩と話しているだけで心が躍る。
顔を見るだけで幸せだ。
だから出来るだけ一緒に居たい。
「先輩っ! 今日ご飯食べて帰りますっ! メニューは何ですか~?」
「はっ!? ……まあいいけど。今日は姉貴のリクエストでシチューな。手伝えよ?」
そうやって、口では嫌そうだけど、笑ってオッケーしてくれて。そんな笑った顔も好き。
「はーいっ! と、その前に先輩!」
「ん?」
本当に好きだよ。
でも、先輩は鈍感だから、頑張る。
「お帰りのギュ~~~~~!!!!!」
「なっ~~~~~!!!!!」
大好き。
※
※
「姉貴〜、今日の晩飯何がいい?」
「んー、カレーでよろしく」
「はいよ」
今日の晩飯を聞いたのは俺こと八原紫乃
見た目は自分で言うのもなんだが、かなり整いつつもやや怖い印象を与える顔に、長い髪を六対四くらいに分け、片方は下ろし、片方は耳にかけ、その耳にはピアスをつけている。
まあ、いわゆる"ヤンキー"のような見た目だな。
そしてそんな俺に対し、ソファーでゴロゴロしながら返事を返すのが俺の姉、八原莉乃だ。
こちらも見た目は整っていて、髪色は茶髪、系統的にはアパレル系に勤めていそうな感じだな。俺の主観だが。
まあ、正直姉貴の見た目とか言われても分からんからな。フワッとしか表現できないな。
そんな姉貴だが、ソファーに転げ、よれよれのTシャツと短パンを履いている様は、まさに干物女そのもの。
だらしなさ過ぎて、女としての自覚はないようだ。
けど、これでも外に出たらキチンとしていて、普通にモテるらしいんだよなー。
普段から姉貴を見ている身としては、依然としてその言葉は信じきれないのだが。
まあそれは置いといて。
姉貴様はカレーを御所望ということで、冷蔵庫の中身を俺は確認する。
が、肝心のカレー粉とじゃが芋がない。オーマイガッデス。
ということで買い物に行かなければならない。
の、だが。問題点がある。
俺自身だ。
よくよく考えてみれば、この見た目はヤンキーそのもの。
そんな奴がスーパーでカゴ片手にに買い物をしている、なんて姿、どう考えてもおかしいし、なんなら知り合いに見られると笑われる。
要は俺のプライドが許さないのだ。
だが、買い物をせず、カレーを作らないという選択肢は絶対にない。それは何故か。
姉貴様からの鉄拳制裁が降るからである。
一度俺が、今日は買い物面倒臭い、と姉貴に言った事がある。
すると、姉貴はどう反応したか。
飛び蹴りからのマウント、首絞めである。
もう一度言う。
飛び蹴りからのマウント、首絞めである。
おかしい。どう考えても。
普通にあるくね?
買い物面倒臭くて、今日は手抜きね、なんての。
ましてや、高校入ってから現在までで一年間、ずっと飯作ってんだから一度くらいいいじゃん、って思考になってもおかしくないよな?
けれども返答は暴力。
いや、普通であれば、避けようと思ったら避けれる。
だが悲しき事に、幼少期から刷りに刷り込まれた姉貴の言葉と暴力の数々は、俺の防御、または反撃という意思を失くさせ、結果、暴君姉貴には逆らえなくなってしまったのである。
ということで、買い物には行かなければならない、絶対に。
でも容姿の問題がある。
となればどうすればいいか。答えは簡単。
容姿を変えればいいのである。
まずはピアスを外し、ワックスを落とす。
その後、髪をドライヤーで乾かし、長い髪をワザと目にかかるようにして下す。
するとさっきの俺とは印象が真逆となり、周りにはこれが俺だと絶対バレない。
はっはっは。これで完璧だ。
完璧な変装をした俺は、エコバックを片手にいざ、出陣!!!
「ついでにポテチもよろしくねー」
「了解」
いつの世も、弟は姉に扱き使われるものなのである。
※
※
買い物が終わり現在の時刻は午後七時半。
スーパーに寄った後、好きな漫画が今日発売なのを思い出し、書店に向かったので遅くなった。
ちなみに、姉には連絡済み。了承は取れた。
だがもし、俺が確認を取らない場合どうなるか。
答えは明快。抹殺である。何でだ。
姉貴いわく、腹を空かせたバツらしい。
俺は数十分くらいいいじゃないかと思わなくもないが、口にはしない。余計な傷を作りたくなどないからな。
まあ今回は大丈夫だが。
しかし、これ以上遅くなったら姉貴の機嫌は急降下する。急いで帰宅しなければ。
そう思い俺は、普段から使っている大通りでなく、人気のない裏道を使い帰る事にした。
こちらの方がかなり早いっちゃ早いからな。
という訳で何個かの裏道を使い帰っていた俺だが……。
「や、やめてくださいっ」
「いいじゃんちょっとくらい」
「そーそー」
「今から少しカラオケに付き合えってだけだぜ?」
必ず通らなければ家にたどり着けない道で、ヤンキー三人組が一人の少女を囲んでいた。
くっ……、めんどくせえ!
人が急いでるって時になにやってんだよ!
ナンパならよそでやれ! この道でするな!
なんて若干人でなしの考えをしつつ。
あー。もう。
俺にこの場面を見逃すという選択肢はない。
まず一つ目。別の道を選択した場合、帰宅時間が遅れるのは確実である。
そして何より、目の前で困ってる人がいること。
この二つの理由があるからな。
俺はポケットからゴムを取り、髪を結ぶ。
一応、喧嘩をするのはこっちの俺の領分だからな。
そして、髪を結べば買い物袋を地面に置く。
よし、五秒だ。こいつらに割く時間がもったいねえ。
駆け出す。
幸い、あいつらはこちらに気づいていない。
あいつらが気付いた頃には遅い。俺の射程圏内だ。
まずは少女を傷つけないよう、端にいるチリチリ頭に思いっきり飛び蹴りっ!!!
「げはっっっ!」
そして次はその横の眉細すぎマン。
「なんだこいっあっふぅぅぅ!!!」
即座に俺は眉マンに向かって金的を放つ。
よしラスト
「くそがっ!」
オールバックチャラ男が俺に殴りかかる。が、遅え。
「姉貴にぶち殺されたらお前ら殺すっ!!!」
「ぐはらべっっっっ!!!」
チャラ男が吹っ飛ぶ。
よし、三人とも気絶したな。
少女を見るが、怪我はなさそうだ。
良かった良かった。
怪我をしてたら、手当てでさらに時間がかかる。
流石にそれに関しては許してくれそうでもあるご、そこは暴君の姉貴だ。「怪我しないようにできなかったの」とかイチャモン付けてまたぶん殴られそうだ。
まあそれについて今回は心配はないようだし、さっさと帰らなければ。
俺はさっと買い物を取り、家へすぐ帰ろうとする。
が、
「待って下さい!」
今助けた少女に腕を掴まれ止められる。
何故だ。しっかりと俺は助けたぞ?
まさか。
「俺に送れと?」
くぅぅぅう、まさかのここでタイムロスか!?
いや、今さっきあんな事があったんだから、怖いのが当然だと思うけれども!
俺が姉貴と少女での切実な問題にうねっていると。
「違います。家はここから直ぐなので。ただ、私を助けてくれた貴方の名前を知りたいんです!」
なるほどな。それなら安心だ。
ではさっさと名乗って帰ろうか。
「紫乃だ」
「名字は?」
ええい、面倒臭い! と一瞬思ったが、ここでごねるよりかは、名字を直ぐ教えた方が断然早いと俺は判断したので、名乗った。
「八原紫乃だ。よし、名乗ったぞ。じゃ、俺は急いでるから、気を付けて帰れよ」
そう言い残して俺はまた走り出す。
冷たい対応だが、命には代えられないからな。
今ので結局一、二分使ってしまった。
これを全力で短縮するかどうかが、後の俺の命に関わるからな。
たった一、二分で何が変わるんだ、と思うかもしれないが、そこは俺の姉貴。
女心は秋の空。暴君の空も秋の空なんだ。いつ雷雨に見舞われるか分からないからな。
故に走る。走れ紫乃!
限界を超えろぉぉぉぉぉぉお!!!!!
「やはら、しのさん……。やっと、やっと聞けた……!」
はにかむ少女の姿は、当然俺には見えなかった。
※
※
「よしっ! 到着!!!」
家に着いた。多少時間をロスしたが、このくらいなら大丈夫なはず。
「よし、じゃねえ」
「ギクっ」
大丈夫じゃなかった。
目の前には鬼が立っていた。
逆立っているかのように見える寝癖と、殺人鬼のような眼。後ろには修羅の姿を想像させる。
くそっ、遅かったかっ!!!!!
「いやあ、姉上。これには深い、それは深ーーーい事情がありまして」
「ほう? 言ってみろ」
「少女がヤンキー三人に囲まれていたので、撃退をしていた所存であります」
まさか姉貴もこの理由で起こることなんてないはず。
「おお、それはよくやったぞ弟よ」
「あはは、だろ?」
お、これやっぱり大丈夫な感じ?
先程の形相は何処へ。そう思わせるほど素晴らしいと、笑顔を俺に向ける姉貴。
よ、良かったぜ。今回は助かった……。
俺、グッジョブ!!!
俺は心の中で自分に親指を立てた。自然と強張った自身の顔も和らぐ。
「だが、」
「ひっっっ」
一瞬で姉貴は先程の鬼の形相に。
「私を待たせたのはどういう了見だ? ああん?」
「だ、だからそれは、女の子を助けたからで」
「言い訳などいらん! 私の弟なら、女の子を助けた上で時間に間に合わせろ!!!」
「ひいぃぃぃぃぃい!!!」
それは絶対おかしい!!!
「これは私の腹を空かせた怒り! そして女の子を助けたご褒美! 最後に! 私の腹を空かせた怒りだぁぁぁぁぁあ!!!!!」
「全部横暴だぁぁぁぁぁあ!!!!!」
南無山。
※
※
ふ、ふう。
あれから姉貴にこってり絞られた俺は、最高に上手いカレーを作らされ、さらに家に常備されているパフェの素材で、最高に上手い特大パフェを作らされた。
当然、俺の分のパフェはない。
南無山。
俺は布団の中で疲れた今日を振り返り、死んだように目を閉じた。
……南無山。
※
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