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1.早く帰り着かないと姉貴に〇〇される。

※5月11日、始めに文を付け足しました。

 後のヒロイン視点。



 先輩と話しているだけで心が躍る。

 顔を見るだけで幸せだ。


 だから出来るだけ一緒に居たい。


 「先輩っ! 今日ご飯食べて帰りますっ! メニューは何ですか~?」


 「はっ!? ……まあいいけど。今日は姉貴のリクエストでシチューな。手伝えよ?」


 そうやって、口では嫌そうだけど、笑ってオッケーしてくれて。そんな笑った顔も好き。


 「はーいっ! と、その前に先輩!」


 「ん?」


 本当に好きだよ。


 でも、先輩は鈍感だから、頑張る。


 「お帰りのギュ~~~~~!!!!!」


 「なっ~~~~~!!!!!」




 大好き。








 「姉貴〜、今日の晩飯何がいい?」


 「んー、カレーでよろしく」


 「はいよ」


 今日の晩飯を聞いたのは俺こと八原紫乃(やはらしの)


 見た目は自分で言うのもなんだが、かなり整いつつもやや怖い印象を与える顔に、長い髪を六対四くらいに分け、片方は下ろし、片方は耳にかけ、その耳にはピアスをつけている。


 まあ、いわゆる"ヤンキー"のような見た目だな。


 そしてそんな俺に対し、ソファーでゴロゴロしながら返事を返すのが俺の姉、八原莉乃(りの)だ。


 こちらも見た目は整っていて、髪色は茶髪、系統的にはアパレル系に勤めていそうな感じだな。俺の主観だが。

 まあ、正直姉貴の見た目とか言われても分からんからな。フワッとしか表現できないな。


 そんな姉貴だが、ソファーに転げ、よれよれのTシャツと短パンを履いている様は、まさに干物女そのもの。

 だらしなさ過ぎて、女としての自覚はないようだ。


 けど、これでも外に出たらキチンとしていて、普通にモテるらしいんだよなー。

 普段から姉貴を見ている身としては、依然としてその言葉は信じきれないのだが。


 まあそれは置いといて。


 姉貴様はカレーを御所望ということで、冷蔵庫の中身を俺は確認する。

 が、肝心のカレー粉とじゃが芋がない。オーマイガッデス。


 ということで買い物に行かなければならない。


 の、だが。問題点がある。


 俺自身だ。


 よくよく考えてみれば、この見た目はヤンキーそのもの。

 そんな奴がスーパーでカゴ片手にに買い物をしている、なんて姿、どう考えてもおかしいし、なんなら知り合いに見られると笑われる。


 要は俺のプライドが許さないのだ。


 だが、買い物をせず、カレーを作らないという選択肢は絶対にない。それは何故か。


 姉貴様からの鉄拳制裁が降るからである。


 一度俺が、今日は買い物面倒臭い、と姉貴に言った事がある。


 すると、姉貴はどう反応したか。


 飛び蹴りからのマウント、首絞めである。


 もう一度言う。


 飛び蹴りからのマウント、首絞めである。


 おかしい。どう考えても。


 普通にあるくね?

 買い物面倒臭くて、今日は手抜きね、なんての。


 ましてや、高校入ってから現在までで一年間、ずっと飯作ってんだから一度くらいいいじゃん、って思考になってもおかしくないよな?


 けれども返答は暴力。


 いや、普通であれば、避けようと思ったら避けれる。


 だが悲しき事に、幼少期から刷りに刷り込まれた姉貴の言葉と暴力の数々は、俺の防御、または反撃という意思を失くさせ、結果、暴君姉貴には逆らえなくなってしまったのである。


 ということで、買い物には行かなければならない、絶対に。


 でも容姿の問題がある。


 となればどうすればいいか。答えは簡単。


 容姿を変えればいいのである。


 まずはピアスを外し、ワックスを落とす。

 その後、髪をドライヤーで乾かし、長い髪をワザと目にかかるようにして下す。


 するとさっきの俺とは印象が真逆となり、周りにはこれが俺だと絶対バレない。


 はっはっは。これで完璧だ。


 完璧な変装をした俺は、エコバックを片手にいざ、出陣!!!


 「ついでにポテチもよろしくねー」


 「了解」


 いつの世も、弟は姉に扱き使われるものなのである。





 買い物が終わり現在の時刻は午後七時半。


 スーパーに寄った後、好きな漫画が今日発売なのを思い出し、書店に向かったので遅くなった。


 ちなみに、姉には連絡済み。了承は取れた。


 だがもし、俺が確認を取らない場合どうなるか。

 答えは明快。抹殺である。何でだ。


 姉貴いわく、腹を空かせたバツらしい。

 俺は数十分くらいいいじゃないかと思わなくもないが、口にはしない。余計な傷を作りたくなどないからな。


 まあ今回は大丈夫だが。

 しかし、これ以上遅くなったら姉貴の機嫌は急降下する。急いで帰宅しなければ。


 そう思い俺は、普段から使っている大通りでなく、人気のない裏道を使い帰る事にした。

 こちらの方がかなり早いっちゃ早いからな。


 という訳で何個かの裏道を使い帰っていた俺だが……。


 「や、やめてくださいっ」


 「いいじゃんちょっとくらい」

 「そーそー」

 「今から少しカラオケに付き合えってだけだぜ?」


 必ず通らなければ家にたどり着けない道で、ヤンキー三人組が一人の少女を囲んでいた。


 くっ……、めんどくせえ!


 人が急いでるって時になにやってんだよ!

 ナンパならよそでやれ! この道でするな!


 なんて若干人でなしの考えをしつつ。


 あー。もう。


 俺にこの場面を見逃すという選択肢はない。


 まず一つ目。別の道を選択した場合、帰宅時間が遅れるのは確実である。


 そして何より、目の前で困ってる人がいること。


 この二つの理由があるからな。


 俺はポケットからゴムを取り、髪を結ぶ。

 一応、喧嘩をするのはこっちの俺の領分だからな。


 そして、髪を結べば買い物袋を地面に置く。


 よし、五秒だ。こいつらに割く時間がもったいねえ。


 駆け出す。


 幸い、あいつらはこちらに気づいていない。

 あいつらが気付いた頃には遅い。俺の射程圏内だ。


 まずは少女を傷つけないよう、端にいるチリチリ頭に思いっきり飛び蹴りっ!!!


 「げはっっっ!」


 そして次はその横の眉細すぎマン。


 「なんだこいっあっふぅぅぅ!!!」


 即座に俺は眉マンに向かって金的を放つ。

 よしラスト


 「くそがっ!」


 オールバックチャラ男が俺に殴りかかる。が、遅え。


 「姉貴にぶち殺されたらお前ら殺すっ!!!」


 「ぐはらべっっっっ!!!」


 チャラ男が吹っ飛ぶ。


 よし、三人とも気絶したな。


 少女を見るが、怪我はなさそうだ。


 良かった良かった。


 怪我をしてたら、手当てでさらに時間がかかる。


 流石にそれに関しては許してくれそうでもあるご、そこは暴君の姉貴だ。「怪我しないようにできなかったの」とかイチャモン付けてまたぶん殴られそうだ。


 まあそれについて今回は心配はないようだし、さっさと帰らなければ。


 俺はさっと買い物を取り、家へすぐ帰ろうとする。


 が、


 「待って下さい!」


 今助けた少女に腕を掴まれ止められる。


 何故だ。しっかりと俺は助けたぞ?

 まさか。


 「俺に送れと?」


 くぅぅぅう、まさかのここでタイムロスか!?


 いや、今さっきあんな事があったんだから、怖いのが当然だと思うけれども!


 俺が姉貴と少女での切実な問題にうねっていると。


 「違います。家はここから直ぐなので。ただ、私を助けてくれた貴方の名前を知りたいんです!」


 なるほどな。それなら安心だ。

 ではさっさと名乗って帰ろうか。


 「紫乃だ」


 「名字は?」


 ええい、面倒臭い! と一瞬思ったが、ここでごねるよりかは、名字を直ぐ教えた方が断然早いと俺は判断したので、名乗った。


 「八原紫乃だ。よし、名乗ったぞ。じゃ、俺は急いでるから、気を付けて帰れよ」


 そう言い残して俺はまた走り出す。


 冷たい対応だが、命には代えられないからな。


 今ので結局一、二分使ってしまった。


 これを全力で短縮するかどうかが、後の俺の命に関わるからな。


 たった一、二分で何が変わるんだ、と思うかもしれないが、そこは俺の姉貴。


 女心は秋の空。暴君の空も秋の空なんだ。いつ雷雨に見舞われるか分からないからな。


 故に走る。走れ紫乃! 

 限界を超えろぉぉぉぉぉぉお!!!!!





 「やはら、しのさん……。やっと、()()()()()()……!」



 はにかむ少女の姿は、当然俺には見えなかった。







 「よしっ! 到着!!!」


 家に着いた。多少時間をロスしたが、このくらいなら大丈夫なはず。


 「よし、じゃねえ」


 「ギクっ」


 大丈夫じゃなかった。


 目の前には鬼が立っていた。


 逆立っているかのように見える寝癖と、殺人鬼のような眼。後ろには修羅の姿を想像させる。


 くそっ、遅かったかっ!!!!!


 「いやあ、姉上。これには深い、それは深ーーーい事情がありまして」


 「ほう? 言ってみろ」


 「少女がヤンキー三人に囲まれていたので、撃退をしていた所存であります」


 まさか姉貴もこの理由で起こることなんてないはず。


 「おお、それはよくやったぞ弟よ」


 「あはは、だろ?」


 お、これやっぱり大丈夫な感じ? 


 先程の形相は何処へ。そう思わせるほど素晴らしいと、笑顔を俺に向ける姉貴。


 よ、良かったぜ。今回は助かった……。

 俺、グッジョブ!!!


 俺は心の中で自分に親指を立てた。自然と強張った自身の顔も和らぐ。


 「だが、」


 「ひっっっ」


 一瞬で姉貴は先程の鬼の形相に。


 「私を待たせたのはどういう了見だ? ああん?」


 「だ、だからそれは、女の子を助けたからで」


 「言い訳などいらん! 私の弟なら、女の子を助けた上で時間に間に合わせろ!!!」


 「ひいぃぃぃぃぃい!!!」


 それは絶対おかしい!!!


 「これは私の腹を空かせた怒り! そして女の子を助けたご褒美! 最後に! 私の腹を空かせた怒りだぁぁぁぁぁあ!!!!!」


 「全部横暴だぁぁぁぁぁあ!!!!!」



 南無山。







 ふ、ふう。


 あれから姉貴にこってり絞られた俺は、最高に上手いカレーを作らされ、さらに家に常備されているパフェの素材で、最高に上手い特大パフェを作らされた。


 当然、俺の分のパフェはない。



 南無山。



 俺は布団の中で疲れた今日を振り返り、死んだように目を閉じた。



 ……南無山。



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