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ギルド嬢をやめさせられたので、個人商店で頂点を目指します  作者: るるっくす
別れ、そして出会い
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新たな問題

 「…今、なんとおっしゃいました?」


その場が凍り付く。


 「…ダーケルスで少女の誘拐事件が発生、誘拐されたのは幼い奴隷の少女で名を




 


 ”イリス”


 

 というようです。」


アリエの頭には様々な考えが巡る。


なぜイリスが誘拐されたことになっているのか、だれがそのように欺罔したのか、ギルドマスターがそうしたのか、はたまたアンか、それともリッヂモンドか、それとも、イリスと同じ名前の奴隷なのか…


 「…犯人は元ギルド職員のアリエという人物で、誘拐した後はグリンドに向かっているため確保されたし、そのようにグリンドにある私の店に、ギルドから通達が来たそうです。」


確定した、件の誘拐犯とは私アリエのようだ。


平然を装うが、それも完璧なものとはならない。


冷汗が頬を伝う。


 「お母さん…。」


イリスがアリエの服の袖をつかむ。


普段なら可愛いと思ってしまうアリエだが…


今はその余裕はない。


間違いなく冤罪、しかし今のアリエにはどうすることもできない。


この分では、ギルド証も取り消されているだろう。


もうダーケルスに戻ることも、グリンドに入ることもできなくなってしまった。


何より、目の前にいるクリセルに捕らえられ、衛兵に突き出されてしまうだろう。


ようやく打ち解けてきたものの、犯罪者をかばってくれるほどの仲ではない。


何より犯罪者をかばったとなれば、その者も同罪とみなされ裁かれてしまう。


大商人の彼がそのようなリスクを受けるわけがない。


 『もう少しで新しい世界が見られると思ったのに、残念だわ…』


イリスには申し訳ないが、二人の旅はここで終了である。


 「どうしますか、私を衛兵に突き出しますか? 私は逃げませんよ。」


 「そうですねー、衛兵に突き出しますかね。」


淡い期待も粉々に砕け散る。


 『ギルドから逃げ出すことはできなかったのね…』




 「普通の人ならね。」


 「えっっ!?」


思いがけない言葉にアリエの思考は停止する。


 「それはどういう…?」


 「私の能力をお忘れですか? 私はジャッジメント・アイの持ち主、人の嘘なんか簡単に見抜けます。まあもっとも、お二人の様子を見ればアリエさんが誘拐犯かどうかぐらい簡単にわかりますけどね。」


それは分かる、アリエとて彼の能力についてはずっと頭の中にあった。


だが…


 「私をかばったらあなたまで捕まりますよ!? いいんですか!?」


 「それはご心配なく、グリンドの衛兵なんてほとんど私の傀儡ですから!」


今日一番の笑顔。


言葉の内容と顔が全くあっていない。


恐怖すら覚える。


 「それにかばうわけではありませんよ、私ができることはあくまで見逃すこと、さすがにグリンドの町に入ってしまったらかくまいきれませんので。」


それはそうだろう。


いくら衛兵が傀儡であっても、街にはギルドの施設がある。


その者たちに見つかれば、さすがに言い訳できない。


街の外、すなわち森で暮らすほかない。


アリエはギルド職員時代には多くのサバイバル術を学び、教えてきた。


だいぶ当初の考えとは違う形となってしまったが、ほとぼりが冷めるまで森の中で暮らすことが最善だろう。


 「ありがとうございます、それで十分です。」


これがほかの商人の護衛だったとしたら、確実に衛兵に出されていた。


本当にクリセルに選ばれてよかった。


若干、気になることはあるのだが…


 「護衛の任務がこなせないことは非常に申し訳ないです。ですが…」


 「あなたにはそんなものは必要ありませんよね?」


クリセルはやや驚いた顔をしつつも、再度笑顔を深めた。


 「それはどういう意味でしょう?」


 「まずは御者をやっているあの男、彼は相当な手練れだとお見受けします。ギルドの基準だとAランク程度ですか。」


その場が少しはりつめる。


 「いつからそれに?」


 「長くギルドで働いていると、対峙する相手の感情は何となく読めてきます。あのゴブリンの襲撃を受けたとき、言葉ではかなり慌てている風を装っていましたが、彼の心は波風一つ立っていないようでした。」


そもそもクリセルほどの大商人の御者をやっている者が、ゴブリン程度であそこまで慌てるはずがない。


 「アリエさん、あなたはまず、とおっしゃっていましたが、ほかにも何かあるのですか?」


 「ええ、ほかでもなくクリセルさん、あなたです。あなたの立ち振る舞いは相当の手練れだとお見受けします。御者の方と同じくらいか、それ以上に。」


クリセルは笑みをまた一段と深める。


悪意は含まれてはいない、純粋に楽しんでいる。


 「そこで今一度考えてみました。なぜ私たちが護衛を頼まれたのか。」


 「ほう、してそれはなぜでしょう?」


考えてみれば最初からおかしかった。


幼い子供を連れた冒険者など、誰も護衛になどしたがらない。


クリセルは、イリスの目が可能性に満ち溢れているから護衛として雇ったと言った。


しかし、クリセルにはイリスの目を見る機会などなかったはずである。


とすれば、考えられることは2つ。


アリエに近づくために雇った。


アリエがギルドを解雇されたのはあの時点では情報通の者には知れ渡っていた。


だとするならば、その後のアリエの行動を読んであの場で待ち伏せをして護衛として雇うということはそこまで不自然なことではない。


しかしそこまでして何を手に入れたかったのかは疑問が残る。


確かにアリエは優秀なギルド嬢だったのかもしれないが、そこまで労を費やしてまで近づく必要はない。


そのうえ、アリエを雇いたいと思ったのならそのまま雇う旨をアリエに伝えるだけでよかった。


 そして考えられる理由2つ目は…






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