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廃人ゲーマーとラスボス後の世界  作者: tera
第二章 - 廃人と聖職者
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10 - 騎士達との共闘

■階層墓地/第五階層/助祭:ユウ=フォーワード


 バケモノ系の集合体って、なんとなくいびつな存在を想像するよね。

 でも、目の前に出現したクラスターは……割とすっきりとした見た目だった。


 体はゾンビだったことの特徴を持っていて、腐れ落ちていて骨がむき出しだったりするのだが……。

 ゾンビみたいに足を引きずることはなく、しっかり地に足つけて歩いていた。

 ゴーストが無理やり動かしているのだろうか、ゴリゴリと嫌な音が響くが、意に介した様子はない。


「コォォォォオオオオ──」


 だがそれ以上に特色すべきは、まとっている魔力というか。

 存在感というか。


 集合体によってはるかに強化されたモンスターである風格を持っている。

 この世界に初めて来た時に遭遇したレッドオーガ以上。

 今でもあのレッドオーガを倒せるかはわからない。

 だから、それ以上のモンスターであるクラスター。

 弱点特攻を持つ俺でも倒せるのか、怪しいところだ。


「マスター、もう大丈夫です」


「ああうん」


 抱きしめていたマリアナがそう言いながら立ち上がった。


「もっと抱きしめられていたかったのですが、さすがにこの状況では落ち着いて要られませんので」


「そうだな」


 マリアナも思い出しているのだろう。

 はるかに強大な敵を前にして無力だった時のことを。


 今も無力か?

 いや、違うな。


 俺たちはレベルも上がってるし、アビリティも手に入れた。

 そして、目の前には騎士達もいて、一応ワンパーティ規模になれる。


「君たちは下がってろ……と、言いたいところなのだが……」


 騎士はいう。


「猫の手も借りたい状況なのは……わかるだろう?」


「ええ、助太刀します」


「巻き込んでしまって本当に申し訳ない」


「いえ、困っているときはお互い様ですよ」


 感じが悪いわけでもなく、モラルのしっかりした騎士達だ。

 こっちとしても、手助けするのにストレスがないから良い。

 野良はやっぱりこうじゃなきゃね。


「ちなみに君たちは……」


 俺たちの装備を見ていたので、先に答える。

 おそらく職業と戦闘での立ち位置を探っているのだろう。


「俺はメイン助祭とサブ戦士の前衛です。こっちのマリアナは狩人オンリー」


「ええ、よく二人でこの第五階層までこれたもんだな」


「ああ、私たちは〈異人〉でして、マスターのアビリティがここのモンスターと相性がいいんですよ」


 凌ぎ切れるかギリギリの状況なので隠さず伝えておく。

 教会の騎士はエリックの部下でもあるしな。


「この光の壁は、障壁と違って耐久制限がなく、俺の近くでしたら意思に従って動きます」


「おお! 〈異人〉ってことは、戦力的に言えば最低でも同レベル帯の人の1.5倍。さらに自由度の高い防御系ってことは……クラスターの一人くらいだったら先に倒しきれるな!」


「あと、この光の壁は、俺が任意で透過、不透過を決めれますので、構わず盾ごと敵を殴っちゃってください」


「……至れり尽くせりだな……まだ助祭なのに……」


「──コォォォォオオオオオオ!!」


「くるぞ! 残りの奴らが来る前に最初の一体を倒せ! 倒すんだ! スピードが命だぞ!」


 俺たち五人は一気に前へと出た。

 クラスターの攻撃方法は、強力な力を持った近接攻撃。

 それに追加して、複数のゴーストを飛ばし異常状態を振りまく。


 大量のゴーストが一人の体に憑依し、自己の強化と相手の弱体化を果たしている。

 故に、相対的に倍以上の強力な相手に感じるんだ。


 俺とマリアナの二人だけで戦ったとすれば、死ぬ可能性は大きい。

 火力の要であるマリアナが精神以上にやられてしまえば終わりだからだ。

 だが、今回は五人。


 《メンタルクリア》をもう一度かけ直されたマリアナは、大きく距離をとって射撃。

 騎士達の合間を縫って命中させるのは用意っぽいな。

 騎士の一人が「すごい」と度肝を抜かれている。


「コォォォオオオオオオオオ!!!」


「ぐ、うぅ、っ……!!」


 地獄の底のから鳴り響くような声。

 まるで怨念の塊というか、チリも積もればってやつだな。

 接近して対応していたので、骨身に直接響く。

 飛ばされるゴーストは光の壁でなぎ払えるが、音は無理だ。


「耐えきれないやつは十字架を握れ!」


 騎士の一人が俺に予備の十字架をくれた。

 それを握りしめると、なんだか気分が楽になる。

 MNDに補正がかかっているようだった。


「ま、まだ……なんとか耐えれます!」


「いい根性だな君! よし、〈象徴盾レプリカ〉を持って前に出るから、この咆哮が終わった瞬間一気に片付けるぞ!」


「「了解!」」


 他の騎士がうなずき合い、連携を確認する。

 そして咆哮が止んだ。

 一気に、前に出る。


 重たそうなフルプレートの全身鎧を見にまとっていても、騎士達の動きは素早かった。

 確か騎士って上位職だよな、それのワンパーティ分の戦力を持っているのクラスター。

 しんどい相手だ。


「うおおおお!!」


 俺も光の壁を動かし、透過させる。


「ッッ!? ゴーストが、剥がれた!?」


「弱体化したってのか!?」


 行けるか確信はなかったが、なるほど。

 憑依は完全に融合したものではないらしい。

 ゾンビから、ゴーストの塊が剥がれ落ちる。


「マリアナ!!! 今だ!!!」


「はい!」


 一閃が、俺たちの間を通り抜けた。

 槍を構える騎士たちの腕の隙間、盾を構える騎士の頭部すれすれ、そして俺の必死に動かす左腕の指の間を、マリアナの《パワーショット》が駆け抜けていった。


 ゴーストの塊が取れてしまった、文字通り憑き物が落ちてしまったゾンビの頂部にクリティカルヒット。

 強化がなくなったゾンビの脆い首は、ブチンと千切れる音がしてダンジョンの壁に突き刺さる。


「お、おお……」


「いってる場合じゃないです! ゴーストが隙間から抜けて行く!」


 唖然としていた騎士達をすぐに正気に戻す。

 抑え込んでいたゴーストは、塊から徐々に分裂し、思い思いに逃げようとしている。

 強烈な意思を持って憑依していた分、動きも並みのゴーストとは違ってはっきりしていた。


 このまま丸く包み込んでやれればいいんだけど。

 どうにもまだ平面から形を変えることができない。

 娯楽に溢れる現代を生きていたから、イメージ力は申し分ないと思うんだけどなあ。


「どういうわけか散り散りになっているから、叩けば脆いぞ!」


「俺が一纏めに叩き潰す!」


 〈象徴盾レプリカ〉を持った騎士が飛んだ。


「────ウォォォオオオオオ──ッッ──!!」


 スローモーションで景色が流れて行く。

 ボブスレー選手とか、波の上で立ち上がる前のサーファーとか。

 そんな感じでグン、と驚異的な脚力で跳躍し、ボディプレス。


「……無茶するなよ、ゴーギャン」


「ふう……でも、ちまちまやっても逃げ出すだけだろうからな。単体でもゴーストナイトになる確率が高い相手だから、ここで一気に蹴りをつけないと後に響く」


「後といえば……まだまだクラスターは控えてるんだよな?」


 騎士三人はゴクリと息を飲むと、先にある階段を見据える。

 息つく暇は無さそうだ。


「だが、彼のアビリティはかなり有効だ。クラスターが一気にバラけて弱くできる」


「そして彼女の弓の腕も一級品以上。達人かと思うくらい正確に援護射撃してくれる」


「複数体を相手にしなければ、確実に倒しきれる……んだけどなあ……」


 そう言いながら、首を振ってため息をつく一人の騎士。

 ゴーギャンと呼ばれる〈象徴盾レプリカ〉持ちの人。

 ため息の原因は、やはり第六階層へと続く道の方だろう。



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