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廃人ゲーマーとラスボス後の世界  作者: tera
第二章 - 廃人と聖職者
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9 - クラスター

■階層墓地/第五階層/助祭:ユウ=フォーワード


 階段をドタバタと走りながら駆け上がってくるのは、同じ鎧を身につけたパーティだった。

 見てくれ的に、冒険者っぽくはない。

 だとしたら結論は教会所属の騎士であると言える。


「む! 君たち、ここは危険だから今すぐ逃げなさい! 私たちと一緒に来るんだ!」


「え?」


 俺とマリアナは腕を握られてあれよあれよという間に一緒に退却させられる。


「わっ、ちょっ! いったいどうしたんですか!?」


「第六階層にてクラスターが複数体出現したんだ!」


「クラスター?」


「ああ、知らないのか……ゴーストがゾンビの体に複数体集結して、強化されたモンスターだよ!」


 聞くところによると。

 人に執着し、取り憑いてバッドステータスを振りまくゴーストだが、その憑依対象は人だけではないとのこと。

 生前騎士だったゴーストが適当なゾンビに憑依した。または逆に、死んでゾンビになった騎士が強烈な意思を持ったゴーストに操られる、ゴーストナイトと呼ばれるモンスター。

 なんの因果か、強烈に惹かれあった死者同士はお互いに相乗効果を生んで大幅に強化される。


 実際は、滅多に起きない状況だが、この〈階層墓地〉ではまかり通り。

 さらにクラスターと呼ばれる、ゴーストナイトよりももっと希少なケースのモンスターが出現する。


「ただでさえゴーストナイトでも死なない騎士っつー厄介さを持ってんのに、クラスターはさらにゴーストが集合して強化されるし、ありとあらゆる異常状態を振りまくから太刀打ちできない!」


「だが、複数体出現するなんて滅多にないぞ! 出現域は第十階層より下じゃないのか!?」


「でも実際に出現してるだろうが! とりあえず状況確認だ!」


「わかった! 出現数は確認できただけでも五体! 戦力分析は一体につき騎士ワンパーティ基準なので、ここの内勤だけでは数がたりませんので、応援が必要になります!」


「配置換えで騎士三人一組に、追加で【聖職者プリースト】をつければなんとか少ない数でも倒せるんじゃないか?」


「どっちにしろ、派遣してもらわないと!」


「オルソン殿に連絡をつけよう! 応援がくるまで、オルソン殿と私たちだけで対応するぞ!」


「了解! まず今日迷宮に入った冒険者の数を確認して何階層まで目指してるのかチェックもする!」


 慌ただしく走りながら、状況の整理と情報のやり取り、そして今後の動き方について検討を重ねて行く騎士たち。

 なんともプロフェッショナルな感じがした。

 野良パーティとかとは全く違う、固定パーティを組んでる人の中でもさらに上質な感じ。

 すごいと思った。


「マスター、どうします?」


 戦いますか、一緒に応戦しますか、と。

 そんな意味を含んだ視線とともに言葉を投げかけて来るマリアナに言い返す。


「どうするもこうするも一緒に逃げるぞ」


 相手の戦力がこの統率が取れた騎士のパーティ1個分なんだろう?

 効果抜群級のアビリティを持っていたとしても、さすがにパーティ規模の相手を複数体も無理だ。

 ここは騎士の行為に便乗して逃げるしかない。


「コォォオオオオオオオ──」


 後ろから、地獄の底から手招きするような低い音が聞こえた。

 その瞬間、体を内側から凍らせるような感覚と恐怖が走る。


「うっ」


「マリアナ!? ──《メンタルクリア》!!」


 転ぶマリアナにスキルをかける。

 おそらく、クラスターの状態異常攻撃だ。


 俺はMNDがそこそこあって耐え切れるが、マリアナはおそらく基礎値の10。

 異常状態が通りやすいのだ。


「マ、マス、マスタ……」


「大丈夫だ、しっかりしろ!」


 恐慌状態に陥ったマリアナをしっかり抱き寄せて、第六階層への階段がある方向を見据える。

 アビリティの起動準備は大丈夫だ。


「君たち!」


「くっ、一人クラスターの状態異常攻撃でやられた! 三人で上に向かって残りの三人はここで対応だ!」


「了解!」


 ゴースト系の存在がいる以上、二人よりも三人での行動が鉄則となる。

 一人が狂った際、それを復帰させるための人員と攻撃を食い止めるための人員。

 そう考えればなかなかシビアだよな。


「マスター……。も、もう大丈夫です……」


「いい、休んでろ」


 この《メンタルクリア》は即席で以上状態を消すが、一度荒れた人の心は落ち着きを取り戻すまでに時間を有する。

 そう考えると、形成を崩された時に、どれだけ耐えきれるか、心を強く持てるかが重要になるダンジョンだな。


「大丈夫かい!?」


「はい、とりあえず」


 騎士達が俺たちの前に立って、クラスターを待ち受ける。


「来たぞ、精神系のスキルは切らすなよ? そして、十字架も奪われないようにしろ」


「わかってるよ。こういう場合に備えて、〈象徴盾レプリカ〉持って来てあるからな」


「用意がいいな。高かっただろ」


「【聖騎士クルセイダー】志望だったら当たり前の投資だろ?」


 〈象徴盾レプリカ〉と呼ばれる盾は、大きな十字架を基盤とした縦長な六角形の大盾。

 神々しいな。

 その盾がそこに存在するだけで、先ほどからずっと襲って来ていた悪寒がすっと消えた。

 遠くから響いていたクラスターの声が鳴り止んでしまった。


「す、すごいなその盾……」


「ああ、これか? 教皇様が仲間と作った最新式の盾さ。女神の加護を大きく秘めているから、いざって時に頼りになるぜ!」


「教皇……」


 エリックか。

 とんでもないもの作ったもんだぜ。

 手伝ったのはウィンストンと鉄男かな?


「くるぞ! 構えろ!」


「ああ!」


「よし!」


 ガチャッと騎士達は装備を手に構えを取る。

 そしてクラスターが姿を現した。





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