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廃人ゲーマーとラスボス後の世界  作者: tera
第二章 - 廃人と聖職者
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7 - 横狩りと辻ヒール

■階層墓地/第一階層/助祭:ユウ=フォーワード


「マリアナ!」


「はい!」


 古代迷宮である階層墓地。

 その第一階層程度ならば、俺のアビリティと素殴りでも勝てる。

 かなりの余裕を持って行動ができるので、今回はすぐに悲鳴の元へ助けに走る。

 もちろん、マリアナと一緒にだ。


「左です」


「わかった!」


 マリアナの索敵能力は彼女の持つアビリティによって高い水準を保つ。

 レベルも上がって行くことで、どんどん精度や諸々が上昇して行くのだ。

 その力を持って俺をナビゲートしてくれる。


「いた!」


「どうやら、ゾンビ系のモンスターと戦闘中にゴースト系に割って入られたようですね!」


「先に《障壁》を出して、それからアビリティを使う! マリアナは弓でゾンビの足を狙ってくれ!」


「わかりました」


 男女の三人組パーティーが、ゾンビによる噛みつきを受けようとしていた。

 ゴースト系には、やはり取り付いて混乱させる能力があるようだ。

 許可をもらえるパーティは、普通第一階層程度でこんなことにはならない。

 だが、隙を突かれたせいで態勢が大きく崩れたのだろう。


 急いでその間に《障壁》を展開させて阻む。

 そのままマリアナが弓を次々に射て、まずはゾンビの足元を崩した。

 矢が一発命中しただけでは、ゾンビは屁でもない様子。

 だが、それが何本も同じ箇所に当たればどうだ。

 腐食して脆くなった体を容易に引き裂くことになる。


「ゾンビは任せてください!」


「オーケー!」


 それはそのままメイスを右手に持つと、拒絶の左手を使用する。

 三人は透過、それ以外は不透過。

 冒険者三人に群がっていたゴースト達はそれで除霊完了。


「横狩りだけど、状況的には仕方ないからな!」


 そういいながら次はメイスを両手で握りしめ、光の壁が消えた瞬間、ゴースト達に叩きつける。

 すげえ効率いいな。

 まだレベルが低いから、まとめて薙ぎ払って蹴散らせばレベルが上がって行く。

 本当に相性がいい狩り場だ。


「《メンタルクリア》!」


 ゴーストを蹴散らした後は、軽いパニック状態に陥っていた三人に【助祭】となってようやく覚えたスキルを使う。

 《メンタルクリア》は、精神的な異常状態を解除、または緩和させるスキル。

 第一階層程度のゴーストがもたらす精神異常はもれなく解除だな。

 他にも小回復系のスキル《ライトヒール》も存在するが、MPの節約として今回は使わない。

 そこまでダメージも見当たらないし。


「こっちも終わりました」


「ゾンビそこそこいたはずだけど、全部倒したのか?」


「はい。まあ、頭を潰せば余裕でしたので」


 マリアナの足元を見ると、頭を打ち抜かれ倒れたゾンビ達がたくさんいた。

 ややグロい光景なので、すぐに解体を用いてばらし、光の粒子に変えて行く。


 これは王都へ向かう途中ジハードから聞いたのだが、世界に用意されたシステムはいろいろあるらしい。

 アイテムボックス、ステータスほのかに、倒した敵の任意解体。

 自分でバラバラにすることも可能なのだが、この世界は解体を用いることで素材に切り替えることができる。

 その際、いろいろなルールがあるのだが、その説明はまた後でいいだろう。

 ゾンビは食べれる部位がないわけだし。


「大丈夫か?」


 俺の問いかけにコクコクと頷いているところを見るに、《メンタルクリア》が効いてきているみたいだな。

 三人は徐々に落ち着きを取り戻していった。


「……あ、うん……た、助けてくれてありがとう」


 鎧を身につけた男が立ち上がってお礼を言った。

 構成は戦士と魔法使いと盗賊ってところかな。

 戦士は男で、あとは女の子。


「いいよ。困ったらお互い様だからな」


 そう言い返して立ち去ろうとすると、魔法使いの女が言った。


「素材は半々でしょ?」


 ……ん?


「え?」


「助けてくれたのはありがたいけど、こっちは助けたいとは言ってないわ。だからお礼として素材は半分あげるけど、もう半分は戦闘していた私たちのものじゃない?」


「おいエリーサ! あのままやられてたら死んでたかもしれないんだぞ!」


「さすがにエリーサ……助けてもらってそれはないって……」


 戦士の男と盗賊の女が唖然とした顔をしたのち、呆れた声で魔法使いをたしなめる。


「でも! あたしは起死回生の魔法スキルを詠唱してた途中だったから、やれたはずよ! せっかくレベル上げに来たのに、経験値は取られて素材もってなんか嫌じゃない!」


「…………マリアナ」


「はい」


 まあ、こういうプレイヤーはよくいたから慣れている。

 普通はシカトするもんなのだが……。

 残りの二人がまともだから、面倒ごとは回避することを選択した。


「これが先ほど倒したゾンビの素材です。まあ、基本的に骨ばかりですから……根がつくとは思いませんが……」


「俺も一応ゴーストを倒して出たもの……は、特にないな」


 ここに来る前に一応聞いていたのだが、アンデット系の素材はほとんど価値がないらしい。

 ゴーストを倒して何がドロップアイテムを得るわけでもなく、ゾンビを倒しても腐肉と骨くらいしか素材として得られないのだ。

 もっと下の階層に行けば、まだ取れる価値のあるものはあったりするのだが、この階層墓地の目玉は下の階層に稀に出現する宝箱から取れるレアアイテムだけ。


「嘘じゃないわよね?」


「嘘じゃねーよ。とりあえず全部あげるから、今回のことは忘れてくれ」


 バツが悪そうにする戦士の男と盗賊の女。

 そんな雰囲気を出しているのに、魔法使いの女は厚顔無恥な態度で物を言う。


「なによ! 当てつけ?」


「もうやめろって……そもそも今日はパーティ内でも決められた休日だってのに……お前が新しい魔法スキルを試したいって安全も考えずに無理やり来たんだろう?」


「そもそも許可が取れたものついこの間だから、もっと余裕を持って準備して来るべき場所だと思うよ」


「はあ!? それでも──もがもがもが!」


 何かを言い返そうとしたところ、俺とマリアナが面倒臭そうな表情をしているのを読み取ってくれたのか、戦士と盗賊の人が魔法使いの女を抑えて無理やり引っ張っていってくれた。


 申し訳なさそうにペコペコされたのだが……なんとも我の強いやつをパーティーに持つと苦労するなと思った。






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