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廃人ゲーマーとラスボス後の世界  作者: tera
第二章 - 廃人と聖職者
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6 - 古代迷宮チャレンジ

■聖王首都ビクトリア/階層墓地/助祭:ユウ=フォーワード



 首都から少し離れた古い教会。

 もう使われていない教会なのだが、その下に階層墓地と呼ばれる迷宮が存在する。


「ここが古代迷宮ダンジョンですか」


「うん」


 冒険者ギルドで許可を取った俺とマリアナは、さっそく向かってみた。

 許可証を提示して、教会所属の騎士が厳重に守護する重厚な扉をくぐる。

 中は少し空気がひんやりしていた。


「普通は来れないのですよね?」


「そうだな」


 マリアナのいうとおり。

 今の俺たちみたいな駆け出しの冒険者はまず弾かれる。

 この階層墓地のモンスターは、少し対処が特殊だと言われるから。

 では、なぜ俺たちは入れているのだろう。

 どこの国でも〈異人〉だから特別、という扱いは基本的にありえない。


「だが、対アンデッド職を持っていれば、初期階層まではレベル上げで使っていいそうだ」


 そう、入れた理由は、俺のメイン職業が【助祭】だから。

 この職業をメインに置くと、職業効果で精神値補正とゴーストやアンデッド系のモンスターに対して大きなアドバンテージがつくので、基本的に入り口から近い範囲の初期階層ならば、ある程度のレベル上げを所属の【助祭】は認められているのだ。


「〈異人〉ですから心配は無用だと思いますが……下階層に行けば行くほど、物騒になりますので、お気をつけて」


「はい」


 守護の騎士にそう言われて、俺たちは階段を降りて階層墓地へと入った。

 〈異人〉ですから……か。


 騎士の口ぶりから少し悟る。

 基本的に区別はしないが、割と世界は〈異人〉に甘いのだろう。

 死亡リスクがほぼないから。


「ゴースト系に弓などが物理攻撃が通用するでしょうか?」


「光属性というか、聖属性というか、そういうものがついたものなら通用するらしいよ」


「なら、今の私はただのお荷物ですね」


「まあ、ゴースト系にはそうだけど、普通に物理が通用するモンスターもいるからお荷物じゃないよ」


 そもそも、マリアナの良さは索敵能力とその命中制度とかアビリティを利用した綿密な狩人の職業特性だ。

 火力ゴリ押し、それはそれでいいけど。

 こういう何があるかわからない迷宮内では索敵系の方が重要だと、俺は考えている。


「──ひっ!?」


 ぼんやりとした薄暗い中を先へ進んでいると、後ろでマリアナが素っ頓狂な声をあげた。


「どうした!?」


「い、今何かに胸を揉まれた感覚がありました」


「ゴースト系か!」


 くそ、よくも俺の乳を!

 じゃなかった。


 とりあえず変なものに取り憑かれないように除霊を行う。

 除霊は簡単だ。


「一応スキャンかけとくぞ」


「はい」


 マリアナ以外を全て不透過にして、光の壁を通す。

 これだけでいいのだ。

 常在菌は流石に落とせないが、猫のシラミみたいな体についた小虫なら余裕で落とせる。

 【助祭】になってから、なんだか光の壁の出力が少し増した気がするし。


「ウボオアアア!! オッッパアアア!!」


「うわっ!!」


 光の壁に押しのけられてなんか出た。

 それは目が血走った足のない半透明の浮遊体。

 幽霊、ゴースト系のモンスターかな……これ。


「オッパアア! オパアアアイ!」


「……とりあえずこのおっぱいはマスターのなので、あなたにはあげませんよ」


「胸は譲渡するものじゃねーよ」


 適当にツッコミを入れて。

 俺はあらかじめ買っておいたメイスで、その幽霊を殴りつけて消しとばした。


 あっさり消えたな。

 でもそれ以上に、いったい生前にどんな業を背負って死んだのだろう。

 それが非常に気になった。


 胸への執着。

 もしかして童貞幽霊とか?


 この世界に来なかったら、俺の末路もあんな感じなのかなって思った。

 絶対に機会は存在していなかったと思うし。


「のっけからとんでもないエロゴーストに当たりましたね」


「……大丈夫かよこの古代迷宮……」


「ゴーストはダメですけど、マスターはいつでもカモンですからね?」


「はいはい」


 おそらくこの階層のモンスターはこの程度なのだろう。

 狩ってみた感触は、とても柔らかい。


 さらに、光の壁がかなり通用するというか。

 こうして取り憑かれそうになった際、有効に利用できるのが素晴らしい。


「もうマスター、除霊師みたいなのをやった方がいいんじゃないですか?」


「……一瞬考えたけど、レベルを上げてなんぼだろ」


「レベルへの執着が凄まじいですね。親でも殺されたんですか?」


「いや、そんなことはない」


 つーか、現実にレベルなんて存在しないし。

 あったとしても俺は最底辺。

 でも、あったら良かったな、と思う。

 日本もゲームみたいなシステムがあれば、俺はレベルを上げまくっていたと思う。


 なぜだろう。

 なぜだろうか。

 改めて深く考えたことはないが、とりあえずレベルっていうテーブルがあるならば、上げちゃうよね。


 そこに山があるから的な感じで。


「そこにレベルがある限り俺はカンストを目指すぞ」


 頂点を、頂上を目指すのだ。


「…………うーん、乙女改造を施されている私にはそれはバカとしか言いようがありませんね?」


「どの口がほざいてんだ!」


 変態下ネタ乙女の方が、世間的にみたらよっぽどバカだと思います。

 そんなことを話していると、マリアナの表情が変わる。


「人がいます」


 その時、


「──キャアアアアアアアア!」


 女の子の悲鳴が階層墓地の中に響き渡っていた。





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