3 - 幼女と元アンドロイド
一人称わしをわれに変えました。
■聖王国領/北方都市スタジア/農士:ユウ=フォーワード
「で……なんでこんなところに一人でいるんだ? 親御さんは?」
とりあえずドタバタを収め、腹ごなしを終えたところで幼女に聞く。
「そもそも名前は?」
「これ、レディにする質問は一回ずつにせい。リーチェじゃ、リーチェ様と呼ぶが良い!」
「……ケッ、様付け強要とは随分と位の高い幼女ですね。そもそもレディですらないと思いますが?」
毒づくマリアナは置いといて。
いきなり隣に現れて、そして、パフェを強請り様付け強要。
この幼女もかなりキャラが濃いなと思った。
「そっか、リーチェね」
「リーチェ様じゃ!」
「はいはい様様」
「ふむむむー!!!」
適当にあしらうと頬を膨らませるリーチェだった。
膨れた頬を戻したリーチェは話す。
「父上様と母上様は来とらぬが、代わりに育ての親みたいな存在は来とるのう」
「育ての親?」
「うむ、カトレアじゃ」
「なら今頃慌てて探してるかもしれないし、送って行くよ」
スタジアはかなり人通りも多いし、いろんな国の人がいる。
そんな場所で幼女を一人迷子にさせてしまったとあれば、かなり慌てているのだろう。
「むむっ! それは必要ないのじゃ!」
「いや、さすがに一人じゃ危ないだろうし」
「マスター、そんな趣味があったとは……くっ、もう幼女アバターにカスタマイズできないこの体を初めて恨めしく思います!」
「いやいきなり何いってんだよ」
俺はロリコンでもペドコンでもなんでもない。
もう一度繰り返すが幼女趣味はない。
マリアナのアンドロイドアバターは俺の好みどストライクを選んでいる。
その状況だけでそれを察して欲しいものだ……。
「では、私はここでまっていますのでいってらっしゃいませマスター」
「いや、お前も来いよ」
「ええ……マスターと二人で歩かせて幼女誘拐犯に仕立て上げてマスターに幼女のトラウマを植えつけてずっぶり私色に染め上げる計画があるのに、いけませんよ」
「怖えよ! なおさら来いよ!」
バカかこいつは。
いや、変態だった。
「一人で連れ回してたら本当にそう言うこと起こりかねないから。マリアナもいい加減に不貞腐れないでくれよ……頼むから」
どこの世界でも、女連れってのは一定のステータスと信用度を誇るのだ。
「ではマスター、交換条件としてなんでも一つ、私の言うことを聞いてください」
「ぐ」
こいつにそんな白紙の券みたいな条件を渡すと、絶対にやばいことになると第六感が告げていた。
「言うことは聞いてやるが、後付けではダメだ。吟味する時間をくれ」
「……おぬしも、一応その条件をのむ気ではおるんじゃのう……? 騙されやすい性格ではないかの……? われは心配なのじゃよ?」
俺とマリアナの掛け合いを見てリーチェがため息をついて首を横に振っていた。
幼女に心配される俺。
つーか。
リーチェを保護者の元へ連れて行くだけなのに、なんでこうなった。
「まあ、いじわるはさておいて。そろそろこのクソガキを保護者の元に送還しましょう。私とマスターの二人っきりの時間は刻々と減っていますから」
「むかー! リーチェ様じゃ!」
「おいうるさすぎて人の視線集中してるからやめてくれ!」
とりあえず一旦店を出たほうがいいかな。
そう判断して席を立つ準備をする。
すると、
「ぬわー待って欲しいのじゃ! 戻れない理由があるのじゃよー!」
そう言いながらリーチェは駄々をこねだした。
「戻れない理由?」
「そうなのじゃ……じ、実はのう? 大切なものを落として無くしてしまって……それを帰るまでに見つけなければゲンコツどころか国際問題にまで発展してしまう可能性があるのじゃよ……」
国際問題って……スケールがでかいなおい。
まあ、それほど大事なものってことでいいのだろうか。
だとしたら。
誰かにプレゼントされた一点物のアクセサリーとかかな?
でも幼女がそんなもん持ってるはずがないし。
大方、保護者から持たされていた何かを無くしてしまったとかそんなもんだろう。
「なら、探すの手伝うぞ」
「ぬ? いいのか?」
「ええ、私はめんどk──「マリアナもだ」──はい」
とりあえずマリアナは黙らせる。
するとリーチェは少し顔をうつ向けながら言いった。
「でも……主らを巻き込んでしまうかもしれぬのじゃぞ?」
「いや、もう巻き込まれたようなもんだろ」
どっちかって言うと巻き込みに来たと言うか、なんというか。
それに、迷子の幼女をここで一人置き去りにするほど冷たい人間でもない。
そう言うと。
「別に迷子ではないのじゃが……」
とリーチェは言葉を濁してモジモジしながら顔を赤くさせていた。
なんだろう、トイレかな?
「トイレに行きたいんだったら……マリアナ、連れてってやれ」
「はいかしこまりました。パフェ食べてポンポン痛くなっちゃんでちゅかー?」
「ぬわー! 大丈夫じゃ! デリカシーのかけらもない奴じゃの!」
「まあ、マスターは大体そうですよ。童貞ですし」
「どうてい?」
「はい、童貞とは──」
「いわんでええ!!!」
いきなり幼女に何を言いだしとるんだこいつは。
そう言うのはもう少し大人になってからでいいんです!
俺は勉強だけして、実技練習したことないけど。
まったくこの話と関係ないですけど。
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