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廃人ゲーマーとラスボス後の世界  作者: tera
第一章 - 旧友との再会
30/53

21 - 拒絶の左手と抱擁の右手

■聖王国領/アルヴェイ村/農士:ユウ=フォーワード


 黒い手がマリアナに振り落とされようとしていた剣をギリギリのとこで掴む。


「ああん? なんだこれ?」


 そのまま闇の手は蛇のように剣を這って男の腕から首に絡みついた。


「ッ!? な、なんだよこれ!! くそ、離れろよ!!」


 剣を手放して絡みつく闇の手を外そうとする盗賊。

 だが、何度も外しても握りつぶしても、闇の手はプラナリアみたいに千切れたところから再生してさらに増殖してどんどん絡まっていった。


「う、うわあああ! うわああああああ!!!」


 パニックに陥る一人の盗賊。

 それを唖然とした様子で眺めている盗賊達をまとめて飲み込むように、俺は右手から際限なく湧く闇の手を展開した。


「うおおおお!?」


「な、なんだ!? まとわりついてきやがる!!」


「き、きもちわりい! なんだこれ!」


 闇の手は、ズモモモと怪しく動きながら盗賊達に絡みついて行く。

 この間にステータスを確認した。




ユウ・フォーワード

メイン職業:農士 Lv4(合計値4)

その他職業:無職

アビリティ:ステージ1(拒絶の左手、抱擁の右手)

HP:44

MP:89


STR;50

VIT:50

DEX:10

AGI:10

MND:10




 これだけの量の闇の手を出現させてもMPの減りは光の壁の時と変わらない。


 【双極】の特性を受け継いていると仮定すれば、俺の残存HPに対してどんどん効果が大きくなっていき消費MPも少なくなるという仕様ではないかと思う。


 それより、ようやくなんかステージの横に名前がついていた。

 ステージ2に上がったのかと思ったが、どうやら違うらしい。




 ………………まあ。

 今はそんなことどうでもいいか。




「────殺す、殺す殺す殺す殺す」




 そう言うたびに、思うたびに、右手の闇が広がっていく気がした。


「マ、マスター……?」


 近くにいるはずのマリアナの声が随分と遠くに聞こえる。

 本当にこれが人を殺す力を持っているのかは知らない。

 ただ本能のままに、頭に流れ込んでくるままに動かした。


「な、なんだこれ!? ち、力が……!!」


「くそっ! 目が見えねえよッ! なんだよッ!!」


「体が……か、体が動かない!! バインド系か!?」


 そんな中、


「このタイミングでステージ2に駆け上がったのか? 運のいい野郎だな」


 闇の手を躱して、状況を冷静に分析する眼帯の男。


「お前らちっとは冷静になって判断……できねぇのか。めんどくせぇな、【恐慌】系もついてんのか?」


「殺す!!」


 腕や足を拘束していた縄は、いつの間にかボロボロになって千切れていた。

 これなら、いける!

 眼帯の男に無数の手を差し向けた。


「ちったぁ落ち着けよ」


 男は後ろに跳躍して躱し、腰につけていた剣を抜いて構える。


「コロス!!!」


 力に飲まれてしまいそうだった。

 でもそれでもいいと思った。


「……探るか」


「?」


 眼帯の男は剣の他にナイフも懐から取り出して下っ端の盗賊に投げつける。

 下っ端の腕に突き刺さった。


「──ぎゃあ!? リ、リーダー!?」


「黙ってろ」


「お、おお?」


 そのままアイテムボックスから小瓶を取り出して再び投擲。

 割れた小瓶の中身は、どうやら回復薬らしい。


「回復阻害はないが、出血自体は止まらねえみたいだな……。【出血】もあり、と」


「うおお、と、とりあえずナイフ! ナイフ抜いてくれよ!」


「抜いたら死ぬからそのままにしとけ。とりあえず、この元凶を叩き潰してくるからよ」


 眼帯の男は俺に向き直ると言う。


「実際の被ダメ自体はカスみたいなもんだ。何を求めたか知らねえが、今のテメェを見たらなんとなくわかるぜ? おら俺を殺したいんだろ? やってみろよ……そのカスみたいな雑魚アビリティでよ!!」


「殺す!」


 殺意を込めて闇の手を眼帯の男に飛ばす。

 男はなんの抵抗もなく闇の手に囚われた。


 そして落ちていた剣を拾って右手に持ち、斬りかかる。

 動きを拘束した状態なら、攻撃力が低くとも仕留めきれるはずだ。


「殺ス殺すコロスコロス!!」


 もはや俺が叫んでいるのかすら怪しい。

 心の中からどんどん湧き上がってくる殺意衝動をただ目の前の男に向けるだけで、体が勝手に動いた。

 体を動かす自分が、俯瞰で見えているようだった。


 アビリティに心を左右されるとかあるのだろうか?

 そもそもアビリティってなんなんだ、前タイトルでのメイン職業が変質するもんじゃないのか?


 でももうどうでもいいな。

 この状況をガラリと変えれるなら、心を飲み込まれたってなんだっていい。


「死ネ!!!!!」


 男の足元から全身を縛りつけるように絡まる闇の手。




「──ハハッ」




 その拘束の中、眼帯の男は笑っていた。

 口角をあげ歯をむき出しにして、とても嬉しそうだった。


「せっかく勝機が見えかけたところで、残念だな……異常状態は俺には通じねえよ?」


「ァ──?」


 剣を弾かれる。


「アゴッ!?」


 そのまま顔面を掴まれて思いっきり叩きつけられた。


「ハハハッ! テメェはたかがアビリティのステージ1程度を武器に、俺に挑んできたカスだ! 他の雑魚どもならまだしも、この俺に勝てるわけねえだろうがよ!」








書いてたら長くなったんで分割しました。

こいつとの戦いも次で終わりです。

長々ぐだぐだとすいません。



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