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廃人ゲーマーとラスボス後の世界  作者: tera
第一章 - 旧友との再会
27/53

18 - 盗賊との戦い

セリフの一部を修正しました。


おい──ッ!!

《おい──ッ!!》




■聖王国領/アルヴェイ村/農士:ユウ=フォーワード


 え、マリアナのアビリティって名前付きなの?

 どこかのネット広告みたいなセリフになってしまったが、まさにそうだ。

 俺のアビリティは、まだ(-)状態だっていうのに、どういうことだろうか。


「チッ、目障りな奴がいるぜ」


「おら、お前ら兵馬強化使えや! なんのために騎馬スキル取ってんだ!」


「まさか、あの距離で矢を連続して当ててくるとは思わなかったぜ!」


「まっ、こういうことはたまにあるだろ? リーダー来るまでに終わらせとかねぇと、後が怖えぞ!」


 そう言いながら駆けて来る残りの五人。

 彼らが《タフネスホース》と叫んだ瞬間、乗っている馬の鼻息が荒くなり、筋肉が一回り太くなった。

 もちろん、スピードも早くなるし、マリアナの矢にも剣で斬り落としたりと対応を始めている。


「マスター、敵が硬くなりました。馬一頭に使用した矢から概算で割り出しても、矢が足りません」


「だろうな! わかってるよ!」


「そしてこのままでは接近されますが、私も近接に切り替えますか? そっちの方が戦えると思います」


 とりあえず、アビリティについて考えている場合ではない。

 マリアナの精密な弓に対応策を取られて、どんどん距離を詰められてきている。


「おら! 弓持ち狙うぜ!」


 馬上で弓を構えた一人が、マリアナを狙て斧を投げる。


「マスター、被弾まで残り1秒」


 寸前のところでアビリティを使用し、光の壁で斧を防ぐ。

 MPが勿体無いので、すぐ展開を止めて、次に備える。

 つーか、なんだか昔のマリアナに戻ったみたいだな……。


 マリアナの《特別支援》が使えたらいいとは思うけど。

 結局のところ一度デスペナを回避できたところで、人数も火力も圧倒的に足りない状況では意味ないか。

 ちょこちょこ情報があったし、初見に対応できるように準備していたラスボスよりきついなこの状況!


「障壁? 司祭系か? こんな辺境の村にいるってどういうことだ?」


「おら、固定砲台になられちゃまずいからスキルを使用しているうちに全力で近づけ!」


「面倒くせえなおい!」


 この間にも、マリアナはもう一頭の馬を転倒させる。

 機動力を少しだけ削れたはいいのだが、肝心の盗賊自体の人数は減ってない。

 落馬した奴も、服についた泥をはたき落としながら後ろから走ってくる。


「マスター、そろそろ限界です。買い込んだ矢の残りも残り12本となります」


「了解!」


 接近し、すれ違いざまに攻撃を仕掛けてくる盗賊達。

 再び障壁を展開させ、大きくする。


「ハッ! んなぼん正面からぶっ壊してやんよ!」


「障壁に頼り切ってても意味ないぜお堅い司祭さんよ!」


 来る、すれ違う瞬間に障壁を大きく展開する。

 MP消費量がぐっと上がってしまうが、相手の速さを考えれば一瞬だ。


 そして指定する。

 馬は透過、盗賊は不透過だ。


「なっ!?」


「ぐえっ!」


「ごはっ」


 パントマイムみたいに盗賊だけは光の壁に遮られて全員落馬する。

 まさか馬から振り落とされるとは思っていなかったのか、かなり無理な体勢での落馬だ。

 少しはダメージが入っていればいいのだがな。


「マリアナ、今のうちに全力で退くぞ!」


「はい! でも、遠くから駆けて来る盗賊の速さと、マスターの速さを計算しても逃げきれませんよ?」


「そんなの見りゃわかる! でもとりあえず時間稼ぎはできただろ!」


 馬から落とすことはできた。

 かなりの速さで走っていた馬は急には止まれず先の方でスピードを落としてUターンし、主人の元に帰って行く。

 また乗られたら厄介だが、もとより倒しきれるとは思っていないし、こうやって村人が避難できる時間を稼げただけでもいいと思う。


 死ぬ気で戦う覚悟は一応あった。

 だが、それは犬死するためではない。


「北の森に出ていた村の人たちと合流する時間だけでも稼がないと!」


「そうですね。マスターのアビリティを使用して、私も弓で牽制しながら後退することが現状の最善手だと思います」


 アビリティに目覚めたマリアナではあるが、現状まだエイム補助的な役割でしか機能できない。

 もっとスキルを覚えることで、化けるとは思うが、今この現状を一変させるほどの力はない。


 だから、引きつけ、そして馬を落として機動力を削ぐ。

 そのあと、村まで引き返して南下してきているモンスター達とぶつけるほうがいいと思った。


 前方の盗賊、後門のモンスター。

 さらに後ろには、何やらとんでもない巨大な剣があった。

 ……が今は消えているしこの際考慮しないことにする。


 先に逃げた村の人たちはどうしているんだろうか。

 家の中に篭っててくれると、まだ俺としてもありがたいのだが、不確定要素が多すぎてわからん。

 そもそもこんなどうしようもない状況を俺とマリアナ二人でなんとかできるわけがない。


 それでも、それでもなんとか出来の悪い頭を捻らせて、一か八かとして考えたのが、敵を引きつけて南下するモンスターとかち合わせることである。


「マリアナ、乗り手が離れた馬を!」


「すでにやってます」


 牽制用の矢をいくつか残して、マリアナは馬の後ろ足に矢を打ち込んでいた。

 どうやら、乗り手もスキルもいない状況の馬はそこまで硬くないようだ。

 元の耐久力もあって仕留めることはできないと思うが、それでも足にダメージがあれば速さを失うはずだ。


「おいおいおいおい! 大事な馬に何してくれてんだよ!」


「ったく、こっちはヒール薬いねーってのに、散々な結果だなこりゃ」


「あとでリーダーに怒られんべ?」


 転倒した盗賊達がダラダラと起き上がってそんなことを愚痴っている。

 俺とマリアナは無視して走った。

 盗賊なんかと喋ってる場合じゃないしな、すきあらば逃げよ、だ。


「マスター、前を向いて走ってください」


「いや、後方確認しないとアビリティの展開が間に合わないだろ」


「いえ、狩人の職業効果とアビリティを組み合わせて、何か動きがあれば私が気づけますので」


「おお!」


「その際はアナウンスします」


 やはりマリアナのアビリティは化ける。

 確信した。

 ついていた職業ではなく、元〈サポートロイド〉の力がアビリティになっているとすれば単体戦力は皆無だが、こういうところでかなりの力を発揮してくれる。


「あー……聞いてんのか? 《おい──ッ!!》」


 耳をつんざくような大声が響く。

 その瞬間、


「──ぐふっ!?」


「──はぐっ!?」


 背中に鋭い衝撃に、頭を直接揺さぶられたような感覚が走った。

 俺とマリアナは前のめりになりそのまま激しく転んでしまう。


 いったい何が起きた?

 何か兆しがあれば、いつでもマリアナが気づけると言っていた。

 なのに、どういうことだ?


「やるだけやっといて逃げるのはないんじゃないの?」


 近づいてくる盗賊達。

 なんとか逃げようと立ち上がるが、すぐにふらついて転んでしまう。

 三半規管がやられているのか?

 だったら今のはなんだ、音?


「てか、あいつらの格好さ……よく見てみ?」


「ん? おいおい、幸先いいじゃねぇかよ。こいつプレイヤーじゃん」


「ってことはさっきの光はアビリティか? なかなか面白いアビリティ持ってんじゃん」


「つーか、アビリティ発現するの早くね? 俺らに話が来たの三日くらい前だろ?」


「いや、なんとなくアビリティ発現するのも納得できるぜ、こいつアレだ」


「アレ?」


「あの廃人ギルドの奴だよ、一回かち合ったことあるだろ? ……ってお前その時いなかったっけ?」


「記憶にねえからいねえな」


「まあ、とりあえず目標確保ってことで、村あさってリーダー待ちと行こうぜ」


「了解。んじゃ、寝とけや」


 次は後頭部にゴッと重たい衝撃がする。

 そして俺は意識を失った。









今回のサブタイトル、演算支援にしてたんですけど。

結局演算支援でチートとか状況的に無理なんでやめにしました。


頑張って時間稼いで戦ってましたけどユウの前提はこの世界の住人盗賊相手でしたね。

“普通”に勝てるわけがない。



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