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廃人ゲーマーとラスボス後の世界  作者: tera
第一章 - 旧友との再会
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14 - 農家のおっさんの話

■聖王国領/アルヴェイ村/農士:ユウ=フォーワード


「いやあ、なかなか骨が折れる害虫駆除が二日で終わってしまうなんて、本当にありがとうな!」


「いえいえ、報酬ももらってますし」


 この村へ来て、三日目のお昼。

 昨日から始めたアビリティを使用した害虫駆除が完了した。


 一応職業レベルは上がっているのだが、増えるのはHPばかりでマックスMPが100しかない。

 なのでもう少し時間がかかるかと思ったんだが……。

 農家のおっさんにMPを回復するものがあるば早く終わると伝えたところ、俺がリンゴを購入したお店からMPの回復薬をいくつか融通してもらったおかげで、一気に終わらせられることができた。


 ちなみにゾッとした表情をするマリアナにも虫を踏み殺させていたので、二人揃ってレベル4程度には上がっている。

 そこから先はなぜか上がらなくなったので、畑いっぱいの虫を使ったレベル上げは終わった。


「最近よお……」


 水を飲んで休憩していると、農家のおっさんが話し始めた。


「北の森からモンスターがちょこちょここの村の近くをうろつくようになってきてよう、俺たちはそっちの対応に追われて畑仕事に遅れが出てたからさ」


 食肉に関しては村に行商馬車が来てくれるらしいのだが、この村では農業以外にも狩人職につく人たちが狩りを行って毎日の糧もしくは保存食にしているそうだ。


 だが、そんな村の狩人達も対応しきれないくらい、最近村の周辺に出現するモンスターの数が多くなり、農士職につく農家の人たちも村の安全のために討伐に駆り出されているらしい。


「おかげでなかなか本職の畑仕事が進まねぇよ……」


 と農家のおっさんは愚痴っていた。

 今日は狩人達と行く、外回りではなく、農耕作業の日とのこと。

 なんとか日程を組んで交代で作業に当たっても、追いつかない日々が続いていたそうだ。


 そこで、あれ?

 と疑問を感じる。


「俺たちが来た方向は、来たからでしたけど、モンスターは見ませんでしたよ?」


 オルフェの作った道しるべを使ってではあるが、本当に出会わなかった。


「ああ、ここ三日ほどは狩りやってる連中からもあまり見ないって聞いてんだけどよ。モンスターがちょくちょく出てた時期は2ヶ月くらい続いてたから、またすぐに元の状況に戻るんじゃねえかなってみんな言ってるよ」


 フォーワードさんは運が良かったんだなって農家のおっさんは笑っていた。


 なるほどモンスターが見られなくなった時期は、俺たちがオルフェにあった時と被っている。

 あいつは諸事情で辺境地のモンスターたちを北に誘導していたらしいし、それで知らず知らずのうちに村を窮地から救っていたってことなのか。

 なんとなく、そこはかとない地雷性を感じたのだが、やはりマリアナの意気投合するくらい彼女は、オルフェはいい人だった。


「ここ2ヶ月の遅れをできるだけ取り返そうと躍起になってたんだが、今日でかなり楽になった! ありがとう!」


「いやあ、はは」


 満面の笑顔でお礼を言われて、なんだかむずがゆくなった。

 でも、悪くないよね、こういうのって。


「できれば平和な日が続いてくれるといいんだがなあ」


「モンスター駆除専門の人っていないんですか?」


「ああ、冒険者ギルドからハンターを派遣してもらうことは可能だけどよ」


 あるんだ、冒険者ギルド。

 ラノベでよくあるものと同じで、依頼を受けてこなす連中だろうな。


「いきなり村にモンスターが来ましたっつって依頼しても遅いからな」


 街までこの村から歩いて約三日。

 馬であれば休憩挟んで一日走らせれば着く距離らしい。

 遠いのか近いのかわからなかった。


 おっさんが言うには、往復でも最短二日のタイムラグが発生する。

 だからって常駐してもらうのは資金的にきついし、常駐する冒険者なんてそうそういないそうだ。


「結局自分らの自衛は自分らでやるっきゃないんだよ……食べるか?」


 そう言いながら、おっさんはとれた野菜を俺に手渡した。

 実ったばかりのトマトのような野菜である。


「ありがとうございます」


「かじってみ? うまいぞ」


 言われるがままにかぶりついてみると、確かに美味しかった。

 味も現実でのトマトとそっくりなのだが、畑仕事をした後だからか、格別に美味しかった。


「自分で作った野菜は格別だぜ!」


「そうっすね」


 前タイトルでは、生産職はまったくさわってなかった。

 だからこうしていざちょっとだけ体験してみると、いいもんだと思う。


 こういう田舎暮らしって、なんとなく昔から憧れるものがあった。

 と、いうよりも他の誰も前の俺を知らない世界を求めていたのだ。

 だからVRゲームにのめり込んで、のめり込んで、悲惨な生活を送っていた。


 ここはゲームみたいな世界だけど、れっきとしたい世界だといったオルフェの言葉を思いだす。

 戻る方法は未だ見つかっていないみたいだし、プレイヤーは死ぬこともなければ老化もない。

 マリアナも隣にいてくれているから、ずっと、ずっとこの夢のような世界で過ごすのもアリだと思った。


 風が体を撫でる。

 昨今のVRゲームは、まさにこういった風の演算も完全に再現し、可能な限りでリアルさを追求している。

 正直時代の最先端はすごいな、外に出なくていいじゃんなんて思っていたが、いざこの場所がゲームではなく異世界だとわかると、やっぱりゲームはゲームだなって感じてしまうな。


「モンスターの件、収まってくれるといいっすね」


 軽く山を作ってみせるレベルのプレイヤーがモンスターを北へ北へと追い立てていたんだ。

 きっと大丈夫だろう。


「心配しないでいい。俺は農師だが、他には戦士職も持ってるからな。これでも昔は俺も冒険者で、上位職の戦師でもあったんだぜ? サブにまだ下位職業の戦士も持ってるからな、ある程度のモンスターなら一人で返り討ちにできる」


 おっさんはぐっと力こぶを作っていた。


「なるほど、だから普通の農家にしてはガタイがいいと言うが、顔に傷があったんすね」


「いや、これは普通に農具の整理してたら上に置いてあった鎌が落ちてきてついた傷だ」


「ええ……」


 なんとなく歴戦を感じさせる頬の傷、そんなしょうもない不注意が理由でついたのか。

 せっかくかっこいいと思ったのに台無しだわ……。


「そうだ、ちなみに戦士職ってどこでつけるんですか?」


 農士を得た時は、村長宅にあるクリスタルのようなものに手をかざすと、取得画面が出現した。


「ん? 俺が上位の戦士職を持ってたら、いつでも教えてやったんだが、もうメインからは外して下位のしか持ってないからなあ……手っ取り早く就きたいなら、まさに冒険者ギルドで下位職業は自由に選択できるぞ」


「あ、そうなんすね。クリスタルみたいなもので選択する以外にもあるんですね」


「職業クリスタルはあくまでも基本的な下位職業くらいしかつけないから、あとは何かしらやって条件をクリアしたりすれば、上位派生の職業が解放されるぞ……そんなことも知らなかったのか?」


「ハハ……まあ、色々ありまして」


「そうか。なら戦師職の条件だけ教えといてやるよ」


「おおっ」


 それはありがたい。


「下位職の戦士を限界値の50まであげれば、自然につける」


「意外と簡単な条件なんすね」


「でもレベル上げには危険が伴うから、取る前に死んじまうなんてことは多々あるんだぜ? あーでも、〈異人〉だったら特殊な加護で守られてるらしいから、まあ大丈夫だろうな」


 〈異人〉だったら、か。

 それでひとくくりにされているのは、なんだか現実感を損ねる感じがするな。

 この世界の住人は〈異人〉は〈異人〉だと普通に認識している。

 老化もしなければセーブポイントさえあれば生き返る。

 そんな不老不死な存在なわけだが、気持ち悪く思えないのだろうか。


「職業派生の条件は他にも色々とあるみたいだし、サブ職業でもメイン含めて合計三つまで上位職業を選択できるらしいぜ」


「あれ? ならもともと持ってた上位戦士職を捨てる必要はなかったんじゃ?」


「いやー、難儀なことにつけたり外したりすると下位職業に戻っちまうんだよ……」


「そうなんすね」


「そんでもって最上位職に行けるのはメインにおいた職しか無理だ。俺はもう嫁さんもいて、この辺境の農村でゆっくり余生を過ごすことにしてるから、できれば最上位の農業職【農史】まで行きたくて付け替えたんだよ」


 あと、とおっさんは付け足す。


「たまに色々と職業を変えすぎるやつがはまっちまう罠なんだ……下位限定で、一度捨てた職業はだいたい三十日経過するまでつけれないペナルティがあるから気をつけろよ」


「下位だけなんですか?」


「上位は付け替えると下位職業になるっていうペナルティがあるからな。」


 どうやら、容易に職業を変えるのは好ましくないらしい。


「他にも何か話は聞けないっすかね?」


「うーん、あとはそうだなあ、過度に職業を取りすぎると、レベルの上がりが悪くなるから、基本的に一つの職業を上位にしたり、してから他の職業を選択していくっていうのが効率が良いって聞いたかな? まあ、俺は昔は戦士しかやってこなかったし、たいしたアドバイスをしてやれない。すまんな」


「いえ、ありがたいっす」


 こちとらノーヒントでこの世界にやってきたもんだから、こうして情報を聞けるのはすごくありがたかった。

 元冒険者の農家のおっさん、本当にありがとう。

 いまだに名前知らないけど。


「じゃあ、俺はそろそろ休憩おしまいにして仕事に戻る。フォーワードさんは、村長のところで報酬を受け取ってくれ」


「はい」


 それだけ言って、農家のおっさんは再び農作業に戻っていった。

 さて、俺も言われた通りに村長のところで報酬を受け取って、間借りしている民宿に戻ろうかな。









うーむ、日々のエピソードの中にこうして説明回を混ぜると、なかなか展開が遅くなりますな。

頑張ってさっくりエピソードを進められるように、精進します。

ここまで読んでいただかれました皆さま、ありがとうございます。

更新頑張ります。



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