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廃人ゲーマーとラスボス後の世界  作者: tera
第一章 - 旧友との再会
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10 - お金の価値と使い方

■聖王国領/アルヴェイ村/無職:ユウ=フォーワード


 ここが異世界である、ということを留意したまま俺たちは村へとたどり着いた。

 RPGゲームみたいな、村の名前を記載した看板もなければ、ここはこんな村ですようこそ、みたいなことを入り口に立っていってくれるNPCも存在しない。

 まあ、前のタイトルでもそんなもんはなかったが、代わりにマップ機能があったので位置把握はしっかりできていた。


 今回はないから地図を手に入れなくてはならない。

 なんでもかんでもアナログにするべきじゃないよな、まったく。


 とりあえず状況を整理しよう。

 プレイヤー側に用意されたものは、なんだ?


 ステータス、職業、アビリティ。

 この三つを上げて行くことが、今後の課題にはなる。

 だが、今回は移動や食事をオルフェに面倒みてもらったのだが、これからはそうもいかないだろう。


 生きて行く上で絶対的に必要になってくるもの。

 それはお金である。

 考えたくもない、お金である。


「逆に考えろ、大学ニートももう終わりが近かったんだ、現実でのお金の心配は無用になったって思うべきだろう」


「まーた反応に困る言葉ですね」


「必死に前を向いて生きようとしているんだよ……」


「大丈夫ですマスター、私がついています」


「ありがとう」


 正直一人じゃ心細いし、いてくれるだけでも助かるわけだ。

 ここは素直にお礼を言っておくべきだろう。


「マスターが急に素直に……今夜は赤飯ですか」


「いや、空気台無しじゃん。まあいい、とりあえず情報収集が必要だから手分けしようか」


「そうですね」


 そんなわけで、物価は俺、村でつけそうな職業についてはマリアナが受け持って情報を集めることになった。




 アイテムボックスに最初から入っていたお金5,000Sを持って村を歩く。

 ぐるりと歩いて見た結果、村の規模が大方予想できた。

 人口自体は200人いればいい方だろうと思う。


 農耕を中心に運営しているのだろうか、村の各所に穀類を貯蔵するサイロのようなものがあった。

 頑丈な石で作られたものはそのサイロのみで、残りの村の建築物は全て木造。

 ものの価値がわかりそうな商店は一応あるにはあるのだが……。

 なんというかちゃっちいというか、村でまとめて必要な消耗品を買い入れて置いている、みたいな感じ。


 そんな中に一人の妙齢の奥様らしい人が、野菜の入ったカゴを持って入って行く。


「こんにちは、リビアちゃん。これ、欲しい人がいたら皆さんで分けちゃって」


「どうも奥さん。並べておきますね」


「あと、洗濯板が壊れちゃったんだけど、あるかしら?」


「ええと……予備があったと思います。持ってきますね」


 そんな朗らかなやりとりが目の前で行われていた。

 果物、穀物、野菜、そして日常で必要になりそうな手作りの雑貨類が置いてあるので、村にいる人たちはここを介して、円満に物資の共有や取引を行っているのだろう。


「ありがとう助かるわね〜。あ、そういえばリビアちゃんは聞いた?」


「なんでしょう?」


「最近国境沿いの農村を荒らしまわってる盗賊がいるらしいのよ……」


「それは怖いですね……あ、ありました洗濯板です。こっちで野菜の集金分から差し引きしておきますか?」


「お願いするわ〜! いつもありがとうね!」


「いえいえ」


 妙齢の女性が商店を後にしたタイミングで、俺もすっと入ってみる。

 そして、そのまま陳列されているリンゴのような赤い果物を手にとって値段を聞いてみた。


「この果物はいくらですか?」


「100エスです」


「二つください」


「はい、かしこまりました」


 りんごをもらう。

 受け渡しはどうすればいいかわからなかったので、銀貨を一つ手渡してみた。

 すると、「あー」と言いながら店番の娘さんは銀貨を返してくる。


「?」


「アイテムボックスのお金の部分をタッチしてみてください」


「え? ああ、はい」


 言われた通りにすると、アイテムボックスの通貨欄に何やら金額を入力する欄が開いた。

 な、なんだこれは……。

 とりあえず100エスを入力してみると、ポンッ、と俺の目の前に小切手のようなものが出現する。


「それをお渡しください」


「は、はい」


 ……銀貨とか金貨でやり取りするんじゃなくて、こういう風にやり取りするのか。

 ちょっと変わっているな、と思ったがシステム的にはこの世界はゲームの要素が強いので、こういったことが普通なんだよな。


「……〈異人〉さんですか?」


 お金を受け取った店番の人がそう聞いてくる。


「そうっすね」


 身分を偽るべきか一瞬悩んだのだが、この世界でプレイヤーは問答無用で〈異人〉だと思われているらしいので、正直に頷いておくことにした。


「こんな辺境の村に……珍しいですね。ようこそアルヴェイ村へ。何もないところですけど、ぜひ寛いでいってください」


「どうも」


 ……なんだか歓迎されている?

 店番の人の対応を見てそう思った。


 オルフェの聞いた話だと、プレイヤーは〈異人〉と呼ばれてしかも死なない特異な存在だから立場的には変な視線で見られているのかなと、若干恐る恐る村に入ったのだがどうやら杞憂だったみたいだな。


 前タイトルでNPCからプレイヤーはプレイヤーだってことにされていたように、この世界でもそんな感じなのだろう。




 それから店番の人にお金の価値を聞いて見た。

 すると彼女は快く教えてくれたのである。


 まず銀貨が一枚で1,000Sの価値を持つそうだ。

 銅貨は1S。

 そして金貨は一枚1,000,000Sとのこと。


 硬貨としての価値は桁数で決まっているようだ。

 なんともネトゲちっくな世界だな。

 それで表すと、銀貨1枚で1K。

 金貨1枚で1Mという括りになるのかな。


 それだったらなんとなくわかりやすいと思ってしまった。

 プレイヤーが多いならば実際にこういう風に考えている人たちもいるだろう。


 大元の価値がガッツリ世界標準で決められているから、アイテムボックスを使ったその額に対応する紙幣でのやり取りが主になっているらしい。

 いちいちお金を数えなくてもいいのはとても良い。

 っていうかこの世界のNPC──いわば住人──にもアイテムボックスとかステータスはあるんだな。


 まあいい、とりあえずそろそろ集合する時間だ。

 俺はアイテムボックスにリンゴを二つしまうと、集合場所である村の入り口に向かった。




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