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廃人ゲーマーとラスボス後の世界  作者: tera
第一章 - 旧友との再会
17/53

8 - 異世界的現実

■国境沿い/アルヴェイの森/無職:ユウ=フォーワード



 そこから思考回路が復帰するまでに少々の時間を要した。




 異世界、は?

 である。




 事実は小説より奇なり、とも言う。

 まさにそれ。




 確かに可能性はなんとなく考えていたこともあった。


 もしかして異世界とかだったら面白いなあくらいの矮小なものである。




 実際に異世界とかだったら、生きていけるわけがないのだ。


 現実世界でも生きているだけでやっとな人間なんだから。




「──だいたい最初はみんなそんな反応するよ、ハハハ」




 軽く笑っているが、こっちからすれば笑ってんじゃねえ。


 昨今のラノベや漫画、アニメでは異世界ものを取り扱ったりしているが……それは願望、幻想だ。


 そういうコンテンツとして楽しんでいるだけであって、実際に異世界に行ってしまう、なんてことがまかり通ってしまうはずがない、と人は誰しも思うはずだ。


 結果、もしかしてそれが本当だとしても、ちょっとやそっとじゃ信用できない。




 でも……オルフェにこう言われた。




「──だってそうなんだよね。普通禁止られてることがここだとまかり通るよ」




 紅茶を飲んで催して、ゲームの世界で木陰で用を足せてしまったり。

 

 マリアナに無理やり胸に手を当てられ、セクハラ警告でなかったり。


 森の中にいた番いのうさぎのアレを偶然に見かけてしまったり。


 オルフェが持っている女性特有のあのよく吸収するあれを見せつけられたり。


 っていうか普通に用を足す時、自分の息子がはっきりと見えてしまったり。




 オルフェから異世界だって聞いてから、なんか全てがリアルに感じてきた。


 フィルターが取っ払われたみたいにな。


 目が回る気分だ、現実、現実なのか?






「──やだ外でたくないいいいいいいいい!!」


 拒絶反応が起こるわけである。


「どうしたんだい?」


「マスター、もともと学生ニートおよび引きこもりでしたから、現実と知って色々とパニックになっているのでしょう」


「そうなんだ、ゲーマーあるあるだね。これだけ見てるとあんまり“良い男”には見えないけど、マリアナへの気持ちとか本気さを見てしまったら、ああやっぱり見かけとかそういうので人は判断できないなって気持ちになるよ」


「そこをまるっと受け止めるのが恋愛師匠たる私の器量なんですよ」


「そうか……く、私にはなかなか難しいね。すごいよマリアナ」


「なかなかのものでしょう?」


 なにがなかなかのものでしょう? ……だよ!!

 つーかなんでマリアナはこんなに冷静にオルフェと会話してるんだ。


「普通に考えてありえないだろ!!!」


「うーん、そもそも私はこういう世界が現実でしたし?」


 そうか、確かにマリアナはも元々ファンタジーゲーム世界の住人とも言えるAIである。

 だからこの状況をすぐ飲み込んだわけだ。


「なるほど納得……ってわけにはいかねー!」


 それとこれとは話が全く別だ。

 明らかに異常事態。


「まったく、変なところでは腹くくって決めるの早いくせに、こういうところで割とぐちぐち言いますよね」


「うるさい……」


「さっさと観念して、私の愛を素直に受け入れたらどうですか?」


「話変わってるんですけど!!」


「まあまあ落ち着いて。ほら、とりあえず茶菓子も用意してあるから」


「どうも……」


 オルフェに渡されたクッキーのようなものをザクザクと口に頬張って行く。

 タバコにハマる人の気持ちがわかったような気がした。


 どうやって飲み込んだらいいのかはわからない。

 だが、現時点でそうなってしまっている以上受け止めるしかないとは思った。


「ちなみに、元の世界に戻れる方法はあるのか?」


「うーん……今の所はない、かなあ? この世界に来たプレイヤーはマイナーなオンラインゲーム並みにはいると思うけど、今だにログアウトできた、現実世界に戻ってこれたなんて話は聞いてないからね」


 元々のゲームがビッグタイトルだっただけに、ラスボス倒した人がそんだけいるのはなんとなく納得できる。

 それでも20万を優に超えるプレイヤー総数の中で、倒してこの世界にやってこれたのはその約5%程度なんだから、前タイトルのラスボスへの敷居の高さがわかるな。


 それを超えて来た、言わば廃人、もしくはヘビープレイヤー勢でも今だに謎は解き明かせていないという状況。


「私はここに来て5年とちょっとくらい経つけど、もう慣れたよ。ここもここで現実だってことを飲み込めてるからね」


「そうなんだ。確かにそれだけいれば慣れはするか……」


 ん? 5年?

 俺がラスボスを倒したのは、初期討伐後から半年。

 6ヶ月後のことなのだけど、どういうことだ?


 計算してみようと思ったが、なんかややこしくなりそうだったのでやめた。

 今はとても計算なんかしちゃいられないしな。


「マスター大丈夫ですか? 落ち着きました?」


 俺の隣でマリアナがやや心配そうな顔をしている。

 変なタイミングではふざけるくせに、なんでこういう時に限ってガチで心配してくるんだろうか。

 そういう高低差激しいの、童貞には効果抜群だよおい。


「だいぶ落ち着いてるよ。っていうか……」


 カップに注がれた紅茶をグググっと喉に流し込んでから言う。


「こればっかりはオルフェの言うことを全て飲み込むしかないよなあ?」


 紅茶の味はよくわからないが、オルフェが淹れたものなのできっと美味しのだろう。

 もっとも、今味覚がうまく機能しているかわからないけどな。


「お、そういうところは“良い男”だね! そうだよ、ぐちぐち言っても始まらない時は腹をくくるしかないのさ」


 オルフェの言う通りだ。

 結局のところ、ログアウト方法がわからない今。

 俺たちはどうすることもできないのだ。


 ここはプラスに考えていけ。

 むしろここは現実だけど、待ち望んでいたファンタジーの世界なんだ。

 と言うことにしていけ。


 ここを逃れてどうする。

 現実に帰ってどうする。

 結局、ゲームを続ける、いつもの毎日が戻ってきそうな気がした。


 だったら。

 隣に現実の体を手に入れたマリアナとともに過ごしてみるのもまたいいのではないかと思う。


「おお、ついに腹を括ったのですね? さすがです、男前ですマスター」


「まあな……」


「ほうほう、花嫁師匠よりも先に花嫁になる可能性が浮上しました」


「してないしてない」


 そこは流石にまだ腹をくくれない。

 でもまあ、良かった。

 マリアナが隣にいてくれて。


 あの時マリアナと一緒に来ることを選んで良かったと心の底から思う。

 一人でここに来ていたら、多分打ちひしがれてすぐにのたれ死んでいた可能性があるしな。


 つーかそもそもだ。

 ラスボスソロ討伐なんてことをするプレイヤーなんて存在しない。

 みんなレイド、もしくはレギオン規模での戦いを挑むわけだ。


 そう考えると、ここに来た他のプレイヤーはどうだったんだろうな……?









ストロ●グゼロを一気に煽ってから最初のパニック文章を読むと。

なんとなくユウの気分がわかると思います。笑





いまだにタイトルしっくりこない。

とりあえず明日も更新するのです。






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