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廃人ゲーマーとラスボス後の世界  作者: tera
序章 最果てへの旅路
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1 - 最終決戦

■エンドコンテンツ/最果ての地/【双極】:光


「マリアナ、状況報告」


『はい』


 透き通った青い髪を持つ支援型アンドロイド、──通称〈サポートロイド〉に戦火の状況報告を頼んだ。

 俺の旧装備を身に付けさせ超耐久型の盾として機能するマリアナは《マジックシールド》を展開し、落下物から俺を守りながら、サポートロイドの支援スキル《索敵》を使用する。


『召喚獣の討伐数は……1267、追加召喚される召喚獣は……毎秒10、残存する召喚獣は……』


「ええい、まどろっこしいから大まかに頼む」


『失礼しました。マスター、あと少しです』


 それは大まか過ぎる……が、とりあえずマリアナの言うことを信じておく。

 プレイヤー支援を行う上で、サポートロイドの正確さはピカイチだから。


『マジックシールド、あと持って二発です』


「込めた使用魔力は?」


『一割です』


 その言葉を聞いて、ため息が出た。

 さすがはエンドコンテンツの最終ボス。

 まさにえげつないの一言である。


 現時点でのマリアナの魔力、つまるところMPはカンストの五十万。

 それの一割が、たかが落下物の一撃で五発しか持たないなんてな。


 込めたMP分の攻撃をガードする《マジックシールド》は、膨大なMPを保有する──いわゆる魔力貯蔵型マナタンクとは相性が良く、マナタンクとこのスキルを所持してタンクを超えた超耐久型だと一時期流行ったのだが……、このボス相手には相性が悪かった。


 初手の軍勢は殲滅魔法スキルでなんとかなるとしても、上から無尽蔵に降り注ぐ落下物攻撃に対して、定点でしか使えない《マジックシールド》はただのでかいマトでしかない。


「これ以上魔力は使えないな……」


 マリアナには相性がいいと言うことで形として超耐久型をやらせているが、その本懐はカンストMPによる超貯蔵型ウルトラマナタンクにある。

 俺が究極魔力を連発するためだけに、MP特化オンリーに絞った旧装備を身に付けさせているのだ。


『では、どうしますか?』


「回避で」


『無理です』


「だよなあ……」


 俺にはスキルによる回避が可能でも、サポートロイドの固有スキルと特別職である【水魔導】のスキルしか持たないマリアナにとって、無数に飛来する落下物を躱しながら召喚獣の軍勢を相手取るなんて、有り体に言えば酷な話だ。


『マナタンクらしく、背負って見るのはどうでしょう?』


「……格好がつかないよね、それ」


『なりふり構って居られないですし、私の胸の感触も楽しめます』


「……」


 真顔で言われると、すごく返答に困るセリフだった。

 アンドロイドアバダーはいくらプレイヤーに似せた容姿カスタマイズを施しても根本はかっちりカチコチの鉄である。

 なんだろう背負っても胸の感触というか薄い生地のリュックに変なボコボコした荷物入れたような感触になるのではないかと想像した。

 例え、胸に近い柔らかい何かをつけるように改造をしていたとしても、なんかそういうのはちょっと……っていうか頭上で落下物の弾ける音がする、残り一発しか持たない状況で、このサポートロイドはなんてことを口走っているのだろうか。


『私としてはお姫様抱っこでも構いません』


 歯噛みする。マリアナは悪くない。悪くないのだ。

 全てはアンドロイドの中核を担う、心臓部分を作ったウィンストンが悪い。

 あの変態め……ッ。


「それは最終手段にする。とりあえず殲滅魔法で召喚獣だけ蹴散らすから、障害物は自力で頑張って避けろ」


 そう言うと、


『しかたありませんね』


 少しだけ頬を膨らましながらも、マリアナは納得してくれたようだ。

 タイミングは、次の落下物によって防壁が割れた瞬間だ。

 丁度いいことに、周りには召喚獣が魔力の盾を壊そうと犇いている。


『壊れます』


「了解──《シャイニングダスト》」


 彼女の声に合わせて【双極】の光属性究極魔法を使用した。

 身体から光りの煌めきを爆発させる超範囲攻撃魔法スキル。


 魔力がごっそり持っていかれ、俺の体から真っ白な光の刃が全方向へと射出された。

 光の煌めきがそれぞれ大きく反応していき一気に巨大な物へと膨れ上がる。


 ──ドパァッ!


 直後、巨大な爆発が巻き起こった。

 さすがだ、究極の名に相応しいほどの殲滅力である。


『殲滅確認、本体来ます』


 召喚獣をあらかた潰すと、何もない場所からボスである【最果て】が出現する。

 鈍色の巨大な球体のHPは、攻略情報にも載っていない。

 だが、挑んだ連中が究極魔法を百回くらい使っても削りきれなかったとブログで語って居たらしいので、それくらいの体力を保持していることがうかがえる。


「まったく……あの廃人連中は、どうやって倒したんだろうな」


 唯一職ユニークジョブである【双極】のレベルカンストで出遅れていた俺は、最果てクエストの初期討伐には参加していなかった。


 旧知の廃人連中は今から半年ほど前に、この最果てクエストのラスボスの討伐に成功。

 ランキングトップの【戦神】ジハードから『お先に』というメッセージの後、ワールド全体に最果てクエストの討伐達成アナウンスが流れてきて、俺はあいつらが映えある最速討伐を達成したと知った。


『マスター、魔力の収縮を確認、使用魔力は十万……“特大の”が来ます』


 ボスの動向をマリアナが教えてくれる。

 サポートロイドの魔力計測マナカウンターは便利だ、それだけでどれほどの威力かが把握できる。


「レイドボス以上に、やべぇボスだってのによ!!」


 本体の攻撃だけでも、マリアナの一割つっこんだ《マジックシールド》を軽く吹き飛ばす程度の威力。

 この最果てのボスに、人数制限が付け加えられて居なかったのが如実に察せれる。


『相手の砲撃開始まで、3、2、1──キャッ』


「しっかり掴まってろマリアナ、──《フラッシュポイント》」


 おそらく唯一職の防御スキルでも、ギリギリ耐え切れるか耐えきれないかの攻撃。

 防御に関しては《マジックシールド》頼みである俺は、マリアナを抱きかかえ回避行動を選択する。


 大器晩成型唯一職である【双極】の超有用スキル《フラッシュポイント》。

 まさに回避系スキルの頂点に君臨する、転移スキルである。


『マ、マスター……ッッ!?』


 だがそれでも、完全回避を取ることができなかった。

 マリアナを抱え込んだ僅かな隙で、左腕が消し飛んでいた。


「まあ防御は紙だからな……」


『い、今すぐ神薬を!』


「大丈夫だ」


 慌てて欠損回復効果を持つゴッドエリクサーを使おうとするマリアナを制止する。

 唯一職である【双極】は、体力の減少とともに光属性から闇属性へと切り替わる特殊な仕様を持つ。

 要は、ここからが本領発揮という訳だ。


「《アビスゲート》《ネクロ》《デモン》」


 暗黒門を開き、死霊と悪魔の軍勢を召喚する。





趣味とノリの産物です。



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