24 クリスマスイベントの告知
血白あかねは困惑していた。残虐と非道とまではいわないにしろ、仮想空間でありながら肩の肉をすっぽり切り落とした相手に、いまだに食事を誘ってくる男がいるのだ。
ここ最近は忙しいのか、少し間が空いているが、気持ちが揺れているのがわかる。
あんな姿を、私にとって、誰にも見せてはならない側面を、まざまざと見せていながら、それでいて関係が継続している。
それはとても嬉しいことだった。自分自身の存在を認められた、許された気がした。
話は変わって、殺戮鬼のゲームは大規模イベントの発表で大盛り上がりである。次回は、各都市の商店街を再現しきった特別イベントで、殺戮側限定の同時開始イベントとなっている。
その日は、ちょうどクリスマスの日であるため、一部のファンからはブーイングがとんでいる。
私はふと想像した。
もし、彼からクリスマスに食事に誘われたら、どうするだろう?
とても悩ましい。
なにせ、殺戮鬼はあまりイベントを開催しない。ほとんど個人個人であそんでね、というまぁ静かでマニアックなゲームだったのだ。
だが、一斉にみんなで殺戮鬼になる、そんなイベントに参加しないというのも非常に残念な気がする。
でも、そこまで私は皆と、誰かと殺戮をすることを望んでいるのだろうか。私はどちらかというと一人で無心に、誰にも縛られず楽しみたい。
そうであれば、もしクリスマスに呼んでもらえるのなら、私は彼の食事に呼ばれよう。
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傷撫幸子は絶望していた。血白様は、確実に恋の病にかかってしまった。
ここさいきん、ぼーっとされている。お相手も、どことなく上の空になってしまった。
あぁ、とうとう破滅の日が近づいているのかもしれない。
私はいつもの買い物をふらふらと歩いていた。なんらかのアミューズメント店の長打の列を迂回するのが非常に面倒くさいと思いながら、目的地へと歩く。
最近よくニュースなどで耳にしている『僕を食べてアイドル様』、あれはいったいどういうものなのだろう。
食べてもらって幸せを感じるかぁ、私もそんな感じで食べてもらって、ふわぁっと幸せに消え去りたいなぁ。
とはいえ、私には好きなアイドルとか、そういうのも特になかったので、どうも違う世界のように感じている。
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廃病院で汗水たらして工作している白髪の男、黒崎禅侍は疲労困憊になりながらも作業を続けていた。
破損したロニの修理に加えて、アクセルバンドの加工、ともするとロニが向かうかもしれない激戦区用の専用装備、どう考えても一人では対応しきれなかった。
機材、パーツはそろえられても、組み立てや加工、セッティングまでやりきるには時間がない。
どうやら奥の手を使うしかないかもしれない。
ロニは怒るだろうか。
昔の仲間に頼るには、人間恐怖症があって、頼りようがなかった。
想定されたタイミングでは、クリスマス、たかだか2週間ほどで準備を整えるのは、土台無理だと、何とも久しぶりに苦汁をなめさせられていた。




