22 一休み
ナインズは、1体かけた状態で工場に集まっていた。
「5号がやられた」
「この中では火力面でかなりの高い装備をしていたはずだが」
「完全にロストしたと考えよう、これからは単独での襲撃はなしだ」
「相手が思いのほか戦闘力があるようだが……偶然配備されている警備でありうるのか」
「わからん、戦力を減らすと目的に支障がでうる、慎重さを求められる局面だろう」
「ダンリオンの連中の動きはどうだ?」
「まぁ、向かっちゃくれるでしょうけど……なにぶんいろいろ隠して伝えてるんで、動きが遅いです。」
「武器の収集と小型ロボットのハックはいかほど進んでいる?」
「そこは順調ですよ」
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守親銃而廊はアルバイトをしていた。
こうなると俺はここを現実だと認めようではないか。これほど豊富なトラブルに職業選択のあるゲームなどないだろう。
やっているのは、ロボットの整備だ。
記憶力と器用さが良いということもあって、手順はすぐに覚えられ、淡々とこなしていく。
今整備しているのは街のお掃除ロボットで定番の円筒形のロボットだ。
車輪が側面に内蔵されており、ハの字に側面の一部をスライドさせ車輪を出すという駆動をしている。ほかにも細かい特徴はあるのだが、お掃除が仕事であるため、いろんなところが汚れている。
パーツはなんでも取り替えたらいいというものでもなく、汚れの度合いに応じて、なるべく最低限の差し替えで済ますという方針らしい。
工場のうっそうとした作業音を聞いていると妙に心地が良かった。油やその他のにおいも好みである。不思議なもので、こういう仕事があっているのかもしれない。
アルバイトを迫られた理由は……とあるデジタルカツアゲなのだが、まぁ、経緯は置いておいて、俺はなんだかんだ面白い体験をしていると前向きだった。
よくよく観察していると、ロボットも働いている。
そして今更思うのだが、それらのロボットはそこそこ駆動系がうるさいのだ。そう、よく隣にいたロニとことなり、一般的なロボットは皆そうなのだろうか?
そうするとロニは特別なロボットのような気がしてならない。
ここで仕事をしているロボット達も、出稼ぎを指令されてきている。そう、お金を生んで来いと持ち主から派遣されているのだ。だが、ロニは違うらしかった。
飲食店や、街の掃除などのアルバイトもあったが、学生仲間と出会ってしまいそうで、そういうことを避けつつ、自分に見合ったものを探すとロボットの整備となった。
素人でも立体映像と音声がてきぱきと教えてくれ、ゲーム感覚なポイント制で、ログインボーナスやデイリーミッションなどは何とも娯楽定番だったものが、報酬系に導入されている。
なお、学生なので労働できる時間上限は1日3時間までと規定されている。
べつに、学校の勉強はとくにしなくても中間テストも問題なかったのだが、果たして、家で勉強している人なんているのだろうか。だいたいのことは、授業で覚えられるような気がしている。
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風恋ちはりは昨日の件でどっとつかれ、眠り呆けていた。
襲撃は1度あると、ある一定期間のマージンがあるそうで、少し休んでもいいだろうという判断らしい。
現実では無力だった。
パワードスーツをまとっても、体は思うように動かせず、力負けし、どんどんと体力は削られ動きは鈍くなっていき、本当に危ない状況だった。
あの助けてくれたロボット、あの動きは間違いなく自分のものだ。つまり、ロニである可能性が高い。
そういう点では、一歩、目的に近づいたような気もするが、ついていける気はしなかった。死を実感したのだ。
それは不思議な感覚だった。死ぬことは、デジタル脳としてコピーされたときは当然そうだという実感を得ていたのであるが、生身で感じたのは初めてだった。
「人間も、死ぬんだなぁ」
起き上がって冷蔵庫へ向かい、お水をカップに注ぎ、ゆっくりとそれを飲む。
ぼーっとしていた意識が、少しはっきりしていく感覚がある。
ロニは、あの装置を強奪していった。つまり、助けてはくれたのはたまたまで、襲撃者であったということになる。
だが、先に戦ったロボットも襲撃者だ。
それとも、ロニは私のことを助けに来てくれただけだったのだろうか?それも、違う気がする。
もし、あれがロニだったとするなら、いや、そうではなかったとしても、どちらにしろ助けてくれたロボットには現実では勝てる気がしなかった。
ああいう風に動けることに、あこがれを感じている。
現実で、ああも華麗に戦うことができるというのは非常に魅力的だ。私はいったい何に憧れているのだろう。
ふと、青年とショッピングしているロニがイメージによぎった。ずるいなぁ。




