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メモリーリーク ~記憶の封印と仮想世界~  作者: 物ノ草 八幻
第一章
6/71

06 オススメの組合せ

 僕は大型の人型ロボットが活躍する映画やアニメが大好きだ。

 今の時代はとても便利で、一度見た作品をまったく忘れて楽しむことができる。


 図書館とも資料室、倉庫のような棚に細いケースが並べられた仮想空間で、大の字に寝そべりながら残念な1枚のスクリーンをながめる。


 記憶を操作、削除、封印するその技術は、学業や試験にも利用されている。

 同じ試験も、記憶を封印して再試験できることから、昔のように試験問題を作り直す必要がなくなった。

 その結果、学習能力の計測が容易になった。

 過去の僕と、今の僕との比較もとても簡単だ。同じ問題なのだからね。


 そういうわけで、デジタルな平面として表示されている答案用紙、

 その点数の下がったテスト結果をほうりなげて、起き上がり、好きなアニメを陳列した棚へと向かう。

 向かうと言っても、四方八方が棚なのだが。


 僕のライフワークは、このアニメシリーズのどの作品をチョイスして見ていくと、最も楽めるかの探求である。

 そのための、作品、映像が周囲の棚に入っているわけだ。

 現実の空間を使うわけではないデジタル空間だからこそ、こうして贅沢に場所を使えるのである。


 このロボットアニメシリーズは、200作品を超える。

 作品によって同じ舞台であったり、パラレルであったり、まったく別の世界だったりと様々だが、象徴となるものはかわらない。

 ヒーローバトルものをロボットでやったこのシリーズは、妙に人間関係が複雑だったり政治思想が入り、子供むけだったり大人向けだったりと千変万化している。

 過去に作られたアニメを新しい技術とスタッフでリメイクされているものもある。

 そんな、ちょっと気軽に見てみようと思っても、どこから見たらいいのかわからないのが、このシリーズなのだ。


 だから、いくつかの作品をピックアップし、順番を決め、このシリーズの記憶を全て封印して、実際に見てみてその記録をとっていく。

 この成果により、知り合い10人ほどをロボットアニメオタクの道へと導くことができた。


 もちろん、失敗したこともある。

 まだまだ研究が足りないのだ。


#


 これまでの閲覧順と感想の記録をながめつつ、今回はどういう計画で見ていくかを考える。

 1作品でも20時間ほどの量があったりするので、見る作品数によっては計画は1ヶ月ほどかかったりする。


 なんとも無意味なことをしているように思う人もいるだろう。

 だが、なにより僕自身が、このシリーズでとっておきの感動をえたくて仕方がないのである。

 最適な組み合わせを見つけ、最高の感動と衝撃をえたい。

 記憶を封印できるからこそたどり着ける感動の極地をあじわいたいと、そう動かずにはいられないのだ。


 さて、そのピックアップの仕方には、定番のとっかかり方がある。

 最初に何作品見るか、どれを最後に見るか、最初から興味を引きつけられて最後まで見てしまう構成にするか、の3パターンだ。

 変化球としては、なるべく時間をかけずにシリーズの全容をつかむためのピックアップというのもある。


 そういったパズルを組み立て、自身で実証する。


 ただ、なかなかうまくは行かないことがある。

 記憶を封印したとしても、既知かどうか、という記憶が封印されるだけなのだ。

 だから、判断力や計算力といった部分は封印されない。

 そうすると、同じ作品を見ても、感じ方はどうしても変わってしまう。

 この試行錯誤をより完璧にするには、記憶のスナップショット、リセットや巻き戻す技術が必要だと感じている。


 ないものはしかたがない。


 そうして、今回の見る順番の組み立てを終えた。


 1時間ほど作品をみて今日は寝よう。

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