12 看病
気分が悪く、体調を崩した守親銃而廊は、部屋のベットでよこたわっていた。胃腸の周りが不快で、体全体に倦怠感がある。
ちょうど今日は休校日、までどんどんひどくなり、なんとか我慢できる限界で今日となった。
そんな話をロニにメッセージしたところ、彼女が家に来るという話になってしまった。
あんまりメッセージをやりとりする元気もなかったので根負けした感じもあるのだが、その気になればロニなら強引に押しかけてしまえるだろう。
なにせ、部屋の場所は知っているし、そして扉のロックだって開けてもらったのだから。あれはいったいどんなカラクリなのだろうか。
本当にここは現実なのだろうか。
ゲームの中で体調不良というのも変な気もするし、きっと現実なのだろう。
そんな感じで朦朧としているとロックデバイスに通知が届いた。
『入るよー』
そして、なんのためらいも抵抗もなく鍵はひらく。え?ここの鍵ってそんなに簡単に開くものなの?
「ちょっとおなかさわるねー」
シャツを引っ剥がされ、ロボットのひんやりとしたおててがお腹に当たる、冷たい。
「うーー」
ロニって、一応は女の子型のロボットなのでは?と思わなくもないが、ロボットなのだからそんなことは気にしなくてもいいような気もして、ふわふわした頭では思考はもうぐでんぐでんだ。
「しばらくは体にあった消化の良いものを食べたほうがいいかなぁ。ちょっと、台所借りるね」
彼女は用意してきた食材をテキパキとつかって料理をしはじめた。
良くは見えないが、ミキサージュースを作るような小道具をもってきているのだろうか、そんな機材の音がする。
「守親ー、最近お友達にさそわれたりしてお酒飲んだりした?」
何故そんなことを、やはりここはゲームで俺の事はすべてアカシックレコードに保存されているのか。
「うーーー」
「それが致命傷だけど、もともとあってなかったんじゃないかなぁ」
酒もだめだがもともととはなんだろう?
「えっとねぇ、盛親は胃腸がそんなに強くないの。だからこうして、すごくミキサーした食べ物か、ゼリー系の食品以外を食べちゃうとー……お腹が吸収できなくてパニック、それを続けてたから全身が悲鳴をあげたのね」
わりと、勉強も、スポーツもそこそこできると思っていたが、どうやら食事という思いもつかぬところで弱点があったらしい。
というか、もっと大事なことが抜け落ちている気もするのだが、思考はまとまらず、今日はロニに介抱されて過ごした。
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私、傷撫 幸子は自室の薄茶色な天井をながめながらぼーっとしていた。くしゅんと、くしゃみをし、鼻からは鼻水が垂れる。
やってしまった。血白様の尾行に夢中になり、暑い日も雨の中も、というか最近会食多くないですか?と思いながら、頑張っていたらこうなった。
風邪を引いたメッセージを血白様にお伝えすると、しばらくゆっくり休んでと帰ってきた。いいようでいて、なんだか寂しい。
というより、幸福を享受できないのは、風邪の熱なみに辛いことだった。あぁ、私を誰か刺して。
いっそ、風邪の状態でも仮想空間には行けるのだから入ってみてはどうだろう?
もしかしたら可能なのではないか?
でも、そうするとまた怒られる気がする?
え?誰に怒られるのだろう?
そんな事はあっただろうか?
でも、やってはいけない気がする。ダメなきがして最近はもう手を出さないようにしているのだ。そう、仮想空間で殺戮鬼のゲームを被害者側でプレイするなどという遊びからは手を引いていた。
あれはあれで痛くて楽しいのだが、全然物足りないのである。
ラーメンが食べたいと食事に誘われてでてきたのがインスタントラーメンくらいにがっかりする程度のものなのだ。それくらい違う。
ロックデバイスで、空間に映像を投影して、お薬と栄養剤、冷たいシート、おかゆなどを注文した。
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いつぞや、どこかで9体集まっていたうちのロボット達、それをナインズと呼ぶこととしよう。その1体は工場まえで奇妙なことをしていた。
自分の体を分解しては作り直し、分解しては組み立て直しをしていた。
それを、つれのもう1体が不思議そうに口を出す。
「何をしている?」
「いやぁ、なんか数値がおかしくってな。正常値にならないんだよ」
「パーツが悪いのではないのか?」
「さっき全部とっかえてみてダメだった……パーツの組み合わせでたまたま正常値になっていたなんてありうるか?」
「あるんじゃないか?ロボットと言っても、部品はアナログだからな。デジタルな01で構成されているわけでもない」
「そうだとすると……直らないってこと?」
「代替手段を考えたほうがいいなぁ、なんの機能のパーツなんだ?」
「バッテリー充電のパーツ……」
「それはまた、随分致命的な欠陥だな。手伝おう」
2体のロボットは工場でなにか作りはじめた。




