10 進展
廃病院の一角で、カンカンカン、カンカンカンと装置を作る音が鳴り響く。
白髪の男、黒崎 禅侍とロボットのロニは共同で、人の頭を包み込むような半球状のドームがアームで駆動するそれが組み立てられていく。
「だいぶハード面もできるようになったじゃねぇか」
「ロボットですからね、覚えるのであれば強引な記録手段もあります。技術は仮想世界で何度も挑戦できますし」
「どちらにしてもたいしたもんだし、よくもまぁ機材を集められたもんだ」
「修行と称して集めさせたのはどこのどなたでしょうね」
「しかし問題がある」
「どうしたんですか?」
「いきなり自分で実験する気にはなれんだろ?」
「人間をとって来いと?」
「さすがにそこまでの事をロニ、お前にさせるつもりはない」
「じゃあどうするんです?」
「安全なマージンを取りながら自分で実験するかな」
「バカですね。愚か者です」
「仕方ないだろ、だいたい人間をここに連れてこれるわけがないんだよ。俺がなんでここに住んでると思ってんだ」
「人間恐怖症ですからね」
「そう、つまるところ、自分でやるしかない」
「バックアップもブランチもなしでプログラムするようなもんじゃないですか」
「なに、人間はもともとそうやって生きてきたんだ、世知辛いねぇ」
「ところで、師匠。
私は師匠が悪人だということを上っ面だけ聞きましたし、技も教えてもらっています。
もうそろそろ、具体的に教えてもらってはダメですか?」
「あー、過去の成果を自慢する趣味はないからなぁ……」
「私の技術が、どういう悪事の道筋で生まれたのかくらい知っておきたいじゃないですか」
「センチメンタルな話だな」
「それに、私のオリジナルとの統合はもうしていないので、情報が拡散する心配はないですよ」
「今の時代、頭脳に入ってる情報でさえ筒抜けだからな……心配しても仕方ねぇよ。
まぁいいや、昔俺も徒党を組んでいたことがあったのよ……」
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自室の部屋にARでニュース映像を広げながら、風恋ちはりは一抹の不安を感じていた。
漏れ伝わってくる研究所の閉鎖、その陰に潜む事件のようななにか。
どうやら、研究所を襲っている連中がいるらしい。
目的は技術の強奪であろうか、それとも妨害だろうか、公表されている公式情報ではたいしたことはわからない。
最近はその手口も荒々しくなっているらしい。とうとう被害者が出た。
だが、不思議なことに、犯人についての情報がまるで出てこないのだ。警察自体が情報をつかんでいないのか、そもそも公表していないのか、どちらにしても、薄気味悪く感じていた。
なぜなら、自分が通っていた研究所も、つい先日、襲われたのである。
ロニは自分の体の事はどうとでもなると言っていたが、それは別として、不安があった。
これらの事件は何なんだろう?
もしこの目的が復習だったら……ある実験の犠牲者の……いや、犠牲によって生まれた何かの……
そんなことが脳裏によぎる。考えすぎかもしれない。
でも、ロニならできるのではないだろうか?ありうるのではないだろうか?
白髪の男、黒崎から伝授されていっている犯罪の極意とロニの性能から考えるとどうだろう。実現はできるきがする、できてしまうきがする。自惚れているのかもしれない。
そうだとすると、そこまで私はあの技術を憎んでいるだろうか?
あの技術全てを憎めているだろうか?
たぶん、そんなことはないのだ。そうでなければ、きっと実験の途中で、脳の統合はうまくいかなくなっていたと思う。
消えるとわかっていても、私は私のために、コピーであっても全力で活動することに戸惑いはなかったし、一生懸命だった。
最近は警備が厳重になっているらしい、それゆえに、たぶん警備の人がいるゆえに、ケガ人も出ているのだろう。
関わらずに、見過ごしていていいのだろうか。
義務はないはずだ。責任もない……だろうか。
ただ闇雲に動いたところで、個人の私にはどうしようもない気がする。どこか、大きなコネクションを持った誰かにたよってでも、警備に参加させてもらうようなそんなことでもしないと。
これが単なる妄想だったら、それでもかまわない。
ウワサではあるが、ロボットの暴走ではないかという説がささやかれている。ロニもロボットなのだ。




