22 猿が取る
猿の姿で、私は腕を組み、街を眺めていた。
コミカルでアニメタッチの仮想世界、可愛い女の子や美少年、たまに筋肉質でマッチョな人とさまざまな人が屋上から見える。
人間はだいたいはNPCで、私のようなPCはお猿さんのアバターである。
街もアニメっぽく、小学校、中学校、工場、住宅街、商店街といろいろ詰め込んだ、歩いて楽しめる遊び場といったふうになっている。
このゲームは、人間から物を盗んだり、いたずらしたりするのが主目的のゲームである。
自転車を奪って迷惑な運転をしたっていい。
忍び込んで、女性の更衣室をのぞいたって構わない。男性の更衣室ものぞける。
まぁ、あるていどなんでもあり、それでいてコミカルで、やや現実感の薄いのがこのゲームの特徴である。
例えば、中学校に入り込んで、廊下の男子生徒を丸裸にしてはずかしめることもできる。
このゲームでは "盗む" と "走る" ことが極端に充実している。
そうしてうまれたゲーム内ゲームの1つが、いかに華麗に美しく、リズムよく女性のパンティを連続で盗むか、というゲームだ。
所定の位置から、カウント0で開始し、1分間でのパンティ盗みにはげむ。
勘違いしてはいけない。
女性が、今まさにはいているパンティを盗むのだ。
方法は、このゲームでの盗むの奥義の1つ "奇術師の手" を使う。それは、盗もうとした対象と接触したとき、対象の自身以外との物理演算をすべて無視させるというものだ。
具体的には、女性のパンティを奥義を使って触れたとする。
そのパンティは、女性と物理演算をしなくなる。
すると、女性とは当たり判定がなくなるため、すり抜けて盗めてしまうのだ。
正確にはもう少しややこしいルールがあるが割愛しよう。
そうしてパンティが盗まれた女性は、悲鳴をあげる。
しかも、急速に近づいた私が通り過ぎることで風がながれスカートがめくれる。
パンティのない女性はとっさにスカートをおさえる。
それをリズミカルに、連続させ、悲鳴のコンボが点数となる。
盗んだときの華麗さも重要だ。盗むときのポーズも良ければ得点となる。
いかにパンティを掲げるか、どんなパンティかも得点となる。
さらに、プレイは、リプレイとして映像配信され、そこでの評価も得点となる。
このゲームのキモは、いかにポーズを決めつつ、それでいて全体を見渡し、適格なターゲットを選ぶこと。
途中で、おばさんのパンティを盗んでしまうことはあってはならない。
たまに女装している男性もいるので要注意だ。
そして、最適なルートで、まるでサッカーで次々と敵をかわしていくように、マルチロックオンのミサイルのごとくの爆発連鎖でもって、リプレイの閲覧者を魅了するのだ。
いわゆるバカゲーというやつだ。
さぁ、今日も馬鹿騒ぎを楽しもう。
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このゲームは、盗む、移動が特徴的で、スキル次第では壁を垂直に登ったり、天井を逆さに走ったりもできる。
そういった忍者めいた楽しみ方ができる。
アイテムはすべて人間から奪う。
PvPで、他の猿から奪うこともできる。
アバターに装備させる衣装や、車などの移動手段もそうだ。銃器もあるがどれもポップになっている。
なお、18禁のゲームではないので流血もなければ、局部はうまいこと見えないようになっている。
アニメ作品のキャラクターとのタイアップされることも多い。
そういったキャラクターは珍しいアイテムを持っているので盗むのは競争率が高くて困難だ。
そして、当然だが、悪さをする猿を捕まえようとする警察ももちろんいる。
チームを組んで、警察からの逃走劇を楽しむこともできる。
人間の味方をする猿にもなれる。いろんなプレイスタイルがあって面白い。
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このゲームのイベント、お祭りはわりと面白い。
なにかしら、厳重に警備されているお宝を、誰が盗み出せるか、そんな挑戦もできる。
手にして終わりではなく、終着地点まで持っていく必要があったり、お宝以外にも、人間ドラマがあったりして面白い。
盗む対象が、人間や猿といった囚われのヒロインということもある。
チームでやってもいいし、ソロでやってもいい。
私はソロで "魂の牢獄" の獣人少女と同じように、俊足を活かしたスタイルが得意だが、手品師や奇術師のようなプレイも面白い。
昔は不思議だったが、スカートめくりがどうして楽しいのか、やっとわかった気がする。




