11 魂の牢獄 2
2年ほど前だったか、私は仮想世界のゲームにはじめて触れ、バーミンという青年と出会った
彼との体験で、失敗してもよいんじゃないか、失敗を楽しもう、そういうことを覚えた私は、ゲームの世界で沢山の敗北を繰り返した
さいしょにはじめた等身の低い、デフォルメの強い可愛らしいゲームのスナップショットをためながら、私は1人でなんども死んだ。
当たって砕けろ、という言葉のとおり、私はなんども砕け、調べ、工夫し、そうして先へと進んだ。
不運なのか幸運なのか、そのゲームはゆるい難易度で、一人でも努力でなんとか攻略できてしまう余地があった。
何度かパーティーを組んだこともある。だが、おおくは成功するのがあたりまえで、勝つことが前提の予定調和で満足する人が多かった。
失敗を楽しむ人も、中にはいたが、いろいろと理由があって長続きはしなかった。
私は転々としながら、ソロ・1人での活動が中心となった。
そんな私に、もっと難易度の高いゲームをやってみてはどうか?と誘いがかかり、それを受けた。
そのとき、そのゲームにもバーミンという名前のプレーヤーがいたのも、気が向いた要因だと思う。
そのゲームは "魂の牢獄" という、硬派な中世ヨーロッパ風の雰囲気に剣と魔法でやや暗さのあるファンタジーゲームだった。
難易度も高めで、ソロでは厳しいだろうという話の通り、攻略に苦戦した。
たぶん、誘った人は、このゲームならパーティープレイをやる価値を見いだせるのではないか、という思惑があったのだと思う。
ところが、私はソロにこだわって、様々な人種で挑戦し、様々な職業、構成で挑戦し始めてしまった。
このゲームは死ぬことが本当に面白かった。
いったいどこを間違えたのか、どうすればよかったのか、どう状況が悪いのかが明確で、そしてどう対処すればいいかが無限に広がるのだ。
サポートAIをどう構成して、どこまで任せればよいのか。
私は悪戦苦闘しながら、けっきょくはプログラミングまでやりはじめてしまった。
人種は獣人におちついた。ソロでの立ち回りは、概ね2つある。
どんな攻撃をものともしない防御力と生命力、回復力で攻略するスタイルと、そもそも攻撃をくらわない回避スタイルの2つだ。
試行錯誤のすえに私は後者を選択した。
獣人は俊敏で機動力、回避力が高い。筋力もあるので重い武器も使いやすい。弱点としては魔法が不得意である。
そのため、回復は魔法ではなくアイテムに任せることになる。
獣人は子供でも、そこそこの筋力があり、当たり判定が小さくなるため、私は獣人の少女を好んで使っている。
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私は、イベントダンジョンで初のソロでのボス撃破を達成した。
とても嬉しかった。
そこで、知り合いが、せっかくだから人を集めて宴会でもしようと企画をしてくれた。
宴会はもちろん仮想空間である。
最近、お酒が酔えると評判のシミュレートエンジンが販売され、それも試してみたいのだという。
そうして私はかつがれるまま宴の主役として参加することになった。
そしてやっと、私は再開を果たすことができた。
「はじめまして、俺はバーミン、盗賊ビルドとしてあんたのプレイに憧れてたんだ」
「ありがとう、でも、このスクリーンショットわかります?」
スクリーンショットには、可愛らしい3等身ほどのカエルにまぬけに敗北している青年が写っている。
「えぇっ?俺?」
「あのときはお世話になりました」
そうして、他の人達とも盛り上がった。
私としては、彼と再開し、話ができたことが何より嬉しい。