第五話 魔法実習
理論を大体習った後は、魔法の実技の授業だ。 場所は王宮の魔法修練場。
誰でも使える初級魔法から使ってみて、魔力を扱う感覚に慣れていこうというものだ。
まあ、みんなすぐにコツをつかんで、いろいろな魔法を試し打ちしまくっていたのだが。
説明の通り、呪文は基本的に長くなるほど精度が上昇するらしい。
また、使う言葉を変えるだけでも魔法は微妙に変化するので、自分に合った言葉を撰んで呪文を作る必要がありそうだ。
魔法は呪文よりも使用者のイメージのほうが威力や性質に大きな影響を与えるので、こんなことも起きていた。
「焼き尽くせ。『炎』」
と俺が唱えると、赤々と燃える炎が的に現れたのだが、
「焼き尽くせ。『炎』」
と大久保が唱えると、青白くほぼ透明な炎が的に現れた。
大久保は実験室で使う、バーナーからの完全燃焼した炎のイメージが強かったらしい。
普通なら、この時大久保の炎のほうが熱いに決まっているのだが、この時は俺のほうが温度は高く、そして早く的が燃え尽きた。
どうやら俺のほうが焼き尽くすというイメージが強かったらしい。
研究者連中はイメージなんてふわふわした概念は苦手なのかもしれない。
おっと皇さんじゃないですか。何をなさるんでしょうか。的の前に立ったところからして攻撃魔法のようだが、皇さんも多分大久保たちと同じでイメージは少々苦手なのではないのだろうか。
「水よ。我が刃となり穿ち給え
どうやら水を刃の形に整えて打ち出す魔法のようだ。いや、形としては棒手裏剣といったほうが正確だが。
元が水ではあまり威力は出せないだろう。そう思っていたのだが、
『水刃』」
ザスッ
的を貫通しました。もう一度言おう。的を貫通しました。
確かに、水で金属を貫ける機械はある。あるとも。だがね、それは極めて高い圧力をかけた水を0.1㎜ほどの小さな穴から出して初めてそんな貫通力を得られるのであって、断じてあんなに大きな水の塊で出せるものではない。
その上、あの的は鋼鉄製でたいていの魔法を受けられるようにいくつもの保護魔法をかけられた代物だ。あれを貫くとはいったいどれだけの威力があったというのか。
魔法の力ってスゲー!
「あの、皇さん?今の、どうなさったんですか?」
「えっと、分子の間を裂いて貫通することを強く考えて撃ったらああなりましたよ」
怖い。この人超怖い。そんな簡単にあんな威力が出てたまるか。
「皇様」
「え、突然どうしたんですか。そんなにかしこまって」
「只今より私はあなたに絶対の忠誠を誓います。だから私に魔法撃たないで~」
この人を敵に回してはならない。それを痛感した瞬間だった。
「そんなことするわけないじゃないですか。私を何だと思ってるんですか」
ほんとかな?ぼくすっごく不安なんだけど。
そんなこんなで魔法を好き勝手に使って、今日の修練は終わった。
お久しぶりです。学校が始まり、なかなか時間が取れませんでした。難しいものです。もっと書くスピードを上げられるように精進します。