プロローグ2
自分の席に座って、俺はぼーっとしていた。
これってあれですか。俺がこのクラスにふさわしいとかそういう判断がなされたわけですか。それは大変光栄なことではあるんですけれども、私には少々荷が重いといいますかなんといいますか。
だって、ねえ。他の人を見てくださいよ。
教室右後方。自分の席でパソコンをずっと打っている人がいるでしょう?
彼は米田正文。弱冠十四歳にして日本情報オリンピックで優勝し、国際情報オリンピックに今年出場する正真正銘の天才だ。
「ここは…いや、…のほうが…」
どうやら集中しているご様子。文章が成り立っていない。
お次は前方へ。黒板前で談笑している二人。
「昨日の野党の答弁なんだが…」
「わかる。聞いててわらったよ。あれはひどい」
「あのネタをいつまでもっていく気なんですか。総理のイメージを下げて支持を集めようにもあれはだめですよ。論戦の視点から見ても悪手だ。仮にも国会の一員であるというのなら、大きな論点である憲法改正の是非を論理的に議論してもらいたいものです。というか、世論調査などからもそれが最善であり最良の選択肢であることは明らかです。それもわからないものが野党として総理の邪魔をしているのは極めて腹立たしい」
「お、おう。そうだな」
野党にご立腹なのが三浦俊吾。ディベートのプロだ。日、英、中、露の四カ国語を自由に操り、ディベートの大会では負けなしなんだとか。
交渉も大の得意で、お目当てのものを必ず狙いどうりの値段で入手するという。
そんな彼に付き合っていたのが岡村秀志。重度のミリオタだ。戦車、戦闘機、空母。銃、ミサイルまでおおよそ彼は知り尽くしている、らしい。
うーん。キャラが濃い。
どうやらここには、成績が上位なだけでなく、何か一つ突出した知識を持っt
「おーい。蒼野殿」
どうやら違うらしい。
「おはよう。忍」
「おはようございます。蒼野殿も無事Aクラスに選ばれたのですな」
まあ、こちらとしてはかなり予想外だったんだがな。
「当然のことでありますな。何しろ貴殿は拙者の恩人であるのですから」
なにが当然、なのか皆目見当もつかないのだが。
こいつは望月忍。お察しの通り中二病だ。他に「拙者」という一人称を使うやつを俺は見たことがない。だが、こいつの場合は少し普通のそれとは違う。
忍は本物の忍者だ。諜報や暗殺の訓練を一通り受け、現在も修行中だとかなんとか。
それがちょっと某漫画にはまってしまっただけだ。うん。技をまねして結構再現できてたのが怖い。
身軽さでいえば間違いなく学年トップだろう。おそらくそれが理由でAになったのだろうが。
昔ひょんなことで助けて以来こうしてつるんでいるが、何をしたんだったか。
なんにせよ、忍がいるのなら俺も多少は気が楽ってもんだ。