プロローグ その9
何だ、この本のタイトルは?ここは異世界なんだろう?なんで元の世界のパクリ要素があるんだよ!?……っは、まさか、この世界は実は創作物で誰かが書いている小説で、その作者によって他作品ネタが加えられているというのかっ!……って、そんな訳無いか。混乱しすぎだぞ。少しは落ち着いたらどうだ。きっと偶然に決まっている。うん、偶然だよ、偶然。……そんなことより今は高宮君の蘇生についてだ。
「蘇生」っていうのは回復魔法の最上位に位置付けられることが多いけど、似たものに死霊魔法というのがある。この両者の違いは対象の魂までを蘇生出来るかによると思う。今回必要なのは前者の蘇生だ。残された左手一つから彼の肉体、魂、記憶、能力などなどを復活させなければいけない。
そんなほぼ最強の魔法が異世界に来て二日目の僕に出来るか?といえばどうやら不可能では無いらしい。この本によると、回復魔法にも色々種類があるらしくて、特定の属性魔法適性が無いと無理だけど、その属性の適性と十分な魔力さえあれば、案外誰でも出来るというのだ。
ただ、その適性を持っている人が圧倒的に少なく、十年に一人いれば良いい方だとか。その属性というのが……
「絶対に君を死なせない!死なせるものか!あの日僕は誓ったんだ。もう二度と大切な人を失わないって!たとえ君が骨になろうと、灰になろうと、左手だけになろうと、僕は絶対に君を生きかえらせてみせる!」属性。
長いよ!んで、そんなスキルを誰が持っているんだよ!十年に一人とか絶対に嘘だ!百年に一人とかだろ!
……はぁぁ。くそっ、早くも手詰まりか。僕の力じゃだを復活させることが出来ないのかーーーいや、待てよ。僕のスキルって確か……。
ええと、ステータスオープンっと。で、スキル確認。……やっぱりそうだ。よし、これならいける!
スキル 全属性魔法適性(大)
火属性魔法適性
水属性魔法適性
雷属性魔法適性
土属性魔法適性
光属性魔法適性
・
・
・
・
・
絶対に君を死なせない!死なせるものか
!あの日僕は誓ったんだ。もう二度と大
切な人を失わないって!たとえ君が骨に
なろうと、灰になろうと、左手だけにな
ろうと、僕は絶対に君を生きかえらせて
みせる!属性魔法適性
全属性って、こういうことかよ!
他にも「M属性魔法」とか「ロリ属性魔法」とか「ストーキング属性魔法」とか、色々あった。誰が考えたか分からないけど明らかにいらない。そしてそんな属性の適性が自分にあることがショックでならない。
ちなみに、「尾行属性」と「ストーキング属性」は別物らしい。多分変態度が違うんだろう。絶対に使わないけど。
さてと、まあ、これで僕でも高宮君を蘇生出来ることが分かった。上手くいくかは正直分からないけど。やるしかない。
魔力の込め方というのはさっきの訓練で聞いていたから大丈夫。INTが高いおかげか、僕は魔力を扱うのが相当上手いようだ。
高宮君の左手を握りしめ、全力で魔力を注ぎ込む。すると、僕の手と、彼の手が暖かい光に包まれた。
意識を集中させる。大丈夫。いける。信じろ、ご都合主義を!
頼む!生きかえってくれ!
“リヴァイブ”
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
結果だけ先に言うと成功した。木っ端微塵になり、左手だけとなった高宮君は現在元の姿を取り戻し、目を閉じてはいるものの、心臓は正常に動いている。
ふぁぁあっ。疲れたー!もうマジで疲れた。MPがほとんどスッカラカンだよ。もう何もしたくありませーん。僕はここで休みまーす。と、いきたいところなんだけど、どうもそうはいかないらしい。
確かに高宮君の蘇生には成功したんだけどね。彼が爆発した際、彼の着ていた服も全部吹き飛んだわけで。今、高宮君は何も着ていないんだ。うん。パンツとかも一切身に着けて無い状態。せっかく主人公の力があるのに、こんな状況を見られては大変だ。正直もう動きたくないんだけど、これぐらいは何とかしてあげないと……って、ヤバい、誰か入ってきた。どうしよう!
「すいませーん。医務室ってここであってますか…………!?」
入ってきた女の子、同じクラスだった上西さんと目が合ってしまう。
彼女は目の前の、つまり僕達を見てひどく驚いたようで、たっぷりと息を吸い込むと、
「きゃぁぁああ!あんた達、なにしてんのよ!ハレンチ!変態!」
はぁー、どうやらまだ休めないらしい……。