表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/10

プロローグ その5

 何度もくどいようだが、今一度、「異世界転移」という作品について考えてみよう。

 今回僕達はクラス全員(四十人)でこの世界に召喚という形で転移させられた訳だが、このような状況のネット小説はたくさんある。そして、その作品の傾向に多いのが、「外れ枠の主人公が成長し、最強になり、ハーレムを築き、世界を救う」だ。

 で、これを成立させるためにはもちろん、外れ枠が当てられる主人公と、その当て馬にされる主人公のような噛ませ犬が必要となる。

 そしてこの度、外れ枠-つまり本当の主人公ーに選ばれたのが僕の一つ隣のベットで横になっている少年、高宮君その人である。まあ、僕の推論だけどね。


 昨日、ステータスを確認した時のこと。他の生徒は皆が勇者としてそこそこ高い能力値に、強そうなスキルを備えていた(一部偏りがあったし、使い道の分からないものもあったが)。が、高宮君のそれはどれも二百前後であって、僕のように突出したパラメーターも無かった。頼みの綱のスキルは基礎的なものが数個。ユニークスキルにいたっては「補正+1」という「何が?」と突っ込みたくなるようなものだった。


 天道君もテンプレのような最強初期値だったけど、高宮君もなんというか、うん、テンプレだよね。僕達を呼び出した王女様も王様も、色んな人が苦笑いを浮かべてたよ。きっと僕からして予想内のことも、彼らにとっては予想外のことだったんだろう。取り合えず体と心を休ませるためにご飯を食べて、お風呂に入って、寝たよ。もう、全部が別次元!いや、確かに異世界に来てるんだけどね。これらについて語ろうとすると大分時間使っちゃうから今は止めておこう。で、高宮君を馬鹿にしようとしていた子達もあまりの料理の美味しさに、それからは特に何も言わなかった。お城の人達は表面上ではにこやかにしているけれど、どこか彼を避けている感じだった。


 と、まあそんな風に昨日は過ぎていったんだ。


 そして、今日から早速戦闘の訓練が始まった訳で、僕達はこうして医務室のベットで寝転がっているという、今に至る。

 ん?意味が分からない?そうか、そんな君のために今日、僕達の身に何が起こったのかをカリスマ塾講師も驚くほどスマートに教えてあげよう。

 ……僕の魔法が暴発したせいです。ごめんなさい。


 どうやら僕は今までに類を見ないくらい魔法の適性が高いらしい。その分他のステータスは低いけれど。

 だから僕は一度自分がどんな魔法を使えるか試すことになって、指導官の人から、「どんな魔法でもいいから、思いつくものを具現化してみてください。」って言われたんだ。こっちの世界に来たばっかりだからたとえ魔法の適性が高くても、使える魔法は大したことないと判断してのことだろうし、僕もいきなりで凄い魔法が使えるとは思っていない。


 僕は集中し、息を大きく吸って、ぱっと頭に浮かんだワードを叫んでみた。


 “エクスプロ--ジョンッ!!!”


 正直に言おう。僕はめぐみん押しです。あ、でも声優さんはやっぱり……、話がそれた。

 結論から言って、それは失敗した。もし成功していたら僕達は今この世にいないかもしれない。

 僕の叫びに呼応して全身から何かよく分からない何かが、どうにかなって右手に集まり、何かしらの作用で、大爆発した。僕の手元で。幸い、本物みたいな威力はなく範囲も狭い上に、爆風しか発生しなかったために被害は少なかった。だけど、僕と、僕の近くにたまたまいた高宮君は不運にもその爆風に巻き込まれて吹き飛ばされてしまった。

 僕と高宮君はHPが低い。多分クラス内ワーストツーは僕達だろう。爆風を浴びた僕達はそれだけでHPがかなり削られて、同時に気絶してしまった。そして今に至るという訳さ。高宮君、ごめん!


 今、この医務室には僕と高宮君しかいない。先生らしき人はついさっき出ていって戻ってきていないからだ。改めて部屋全体を見渡して見ると、やっぱり大きい。王城の医務室なんだから当然だけど。


 ……暇だ。恐ろしく暇だ。僕の隣には高宮君がいる。多分彼はこの「作品」の主人公なんだと思うんだけどなー。話してみたいんだけど、僕は彼と話したことが一度も無いんだ。何て話しかけよう。君が主人公だ!とでも言うのか?ただの頭が痛い奴だろ。


 というわけで僕は妄想、もとい彼の能力と「異世界転移」についての高尚な思考を展開していくことになるのだがーー。ん?もしかして、彼の「補正+1」ってスキルはあれのことを指してるんじゃないか?彼が主人公であることを前提とした考えなんだけど、でも、もしそうだとしたら、やっぱり彼こそが……。それを確かめるにはあるイベントが必要なんだけどね。


 あっ、先生が戻って…………きた?……何か様子が変だぞ。



「くそっ!まさか私が魔界軍の偵察として送りこまれて、この人物に化けていたことが、こうも早くにバレるとは。このままでは捕まってしまう。……そうだ。ここにいる子供を利用しよう。勇者らしいが弱っている今なら平気なはずだ。」



 高宮君のスキルは、「フラグ回収」なんじゃなかろうか…………。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ