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20.boy boy boys:女性による女性のための少年小説

 世の中には数多くの、少年同士の友愛を描いた小説があります。しかし、女性作家が描いたものほど、切なさと妄想をかきたてるものはありません(もちろん、例外はあります)。ということで、今回はBだがLではない、しかし、珠玉の少年小説の紹介です。


 まずは、『モーツァルトの伝言』。主人公の通っていた学校には、「モーツァルト」と呼ばれる天才少年がいて、彼をめぐる青春の物語なのですが(注意、男子校ではありません)、きっと男の人が読んだら、「ちげーよ」と叫びたくなるのでしょうが、女の人が夢見る少年同士の関係ってこんなものとよくわかる話です。

 背伸びしたくて、嫉妬して憧れて、でも素直になれなくて……という関係がとにかく、もどかしいです。主人公と彼に好意を寄せられる女の子も、出しゃばらないので、好感度が高いです。


 それから、「月神」シリーズ。東逸子のイラストがとにかく美麗です。古代日本を舞台にしたファンタジーで、主人公は、ポイシュマと呼ばれる少年なのですが、見どころは、白銀の巫者(ふしゃ)シクイルケ。この美青年がとにかく、少女マンガの王子さまのように、つくしてつくしてつくしまくります。映像化してもすてきだと思うのですが、このイラストがある限り、無理なのかもしれません。

 ちなみにこの作者、別名義でBL小説も書いているのですが、そちらには全然萌えませんでした。


 それから、宮部みゆき「今夜は眠れない」シリーズや、あさのあつこのいくつかの小説もこのカテゴリーに入るでしょう。

 『今夜は眠れない』では、主人公が親友に対して、「今度は僕が、彼の背負っていた重荷を背負う番だ」という独白をするところで、どうしようもなく、鼻血が出そうになります。

 あさのあつこは、野球小説の「バッテリー」シリーズが有名ですが、とにかくシリアスなので、読みやすいとは言いがたいです。彼女の話は、成熟した女性(母親など)が「よくないモノ」として描かれているので、それもあるのかもしれませんが。読むのなら、SF小説「No.6」シリーズの方がおすすめです。


 夢に向かってがんばる男の子たちの話というのなら、風野潮「ビート・キッズ」シリーズも捨てがたいです。おバカな主人公も、複雑な生い立ちの親友も萌えるのですが、イチオシは大阪弁です。「ドラムの響きは、俺の心の、花火やねん!」ということばどおり、青春てんこ盛り!

 天才少年たちの競演というのなら、男子フィギュアスケートのジュニアの世界を描いた「クリスタル エッジ」シリーズや、飛び込みに青春をかける少年たちの話である「DIVE!!」シリーズも読みながら、転げ回りたくなるおもしろさです。いや、彼らも回っていますけれど。


 けれど、青春は輝きばかりではありません。光があるところには影もある……ということで、やるせなさを感じるのが、『だれが君を殺したのか』。

 親友の自殺の謎を主人公が解いていくという話なのですが、天才であった彼と凡才である自分の差を感じながらも成長していくところが、尖ったナイフだった時代の終わりを感じさせます。


 若さは、ときには、残酷なものです。「悩め、そして、生きろ」と声をかけることは、汚れちまった大人になってしまった自分には、許されません。

 であるならば、せめて、妄想の中だけでも楽しみたいのです。少年は、ときには、幻想世界の住人なのです。

________________________

★現代が舞台のもの

・加藤純子『モーツァルトの伝言 少年から大人への階段』R15/難易度低。ピアノの天才少年と彼を巡る友情の話。天は二物も三物も与えています。

・宮部みゆき「今夜は眠れない」シリーズ。『今夜は眠れない』他。R15/難易度中。パラパラマンガを楽しめる版がおすすめ。

・風野潮『ビート・キッズ Beat Kids』。続編もあります(相方はいなくなりますが)。どちらもR15/難易度低。この人は作品の当たり外れが多いですが、これはまちがいなく、笑って泣けます。

・イリーナ コルシュノウ『だれが君を殺したのか』R15/難易度中。上田真而子/訳。この話についての河合隼雄の解説『子どもの宇宙』を合わせて読むと、より、(もだ)えられます。


★スポーツもの

・あさのあつこ「バッテリー」シリーズ。R15/難易度高←個人的にですが。野球の天才少年と彼を巡る友情の話。個人的には、少女が主人公の方が好き。

・風野潮「クリスタル エッジ」シリーズ。R15/難易度低。この小説で「ノービス」の世界を知りました。羽生結弦のジュニア時代をモデルにして描いた話だったらしいです。キャラクターのオリジナリティはないですが、そこそこ楽しめます。

・森絵都「DIVE!!」シリーズ。R15/難易度低。オリンピックを目指す少年たちもステキですが、シビれるのは、肉食コーチ(女性)。

・佐藤多佳子「一瞬の風になれ」シリーズ。U14/難易度中。陸上に青春をかける少年たちの話。圧倒的な強さとか盛り上がりはないですが、目線が楽しめるので。


★ファンタジー

・たつみや章「月神」シリーズ。『月神の統べる森で』他。ポイシュマの正体にも()うご期待。R15/難易度低。別名義は秋月こお。


★SF

・あさのあつこ「No.6」シリーズ。R15/難易度中。ネズミと呼ばれる少年が、カッコいいです。孤高の天才が、自分だけには心を許すという、少女マンガの基本を押さえております。

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